第2章 放浪(2)二人の力
幾日か後、いつものようにレイとシュウは戦闘の練習に行った。暫く練習していると村の方から奇声と大きな火炎が突然襲った。レイとシュウは異変を感じ、練習を中断して村へと向かって走った。村では大嵐が去ったような惨事になっていた。
レイは村の惨事を見て目を覆いたくなった。
「ひどい!誰がこんな事を!」
「何だこりゃ!村中めちゃくちゃじゃないか!」
惨状の中をレイとシュウは、生存者がいることを願いながら探した。
諦めかけた頃、長老の家から本をくれたおばあちゃんが、息も絶え絶えに屋根に潰されているのを発見した。
「おばちゃん!しっかり!今、助けるからね」
「誰がこんな事をしたんだ?」
「わたしゃもうだめだよ。わしを除いて村人全員消されてしまった。あのゴールドシティの兵士に。あなた達もここにいたら捕まってしまうよ。スルー大陸に向かいなさい。そして仲間を捜しなさい。そうすれば自分の道が見えるじゃろ」
そこまで話すと力尽きて何も話さなくなった。
「おばあちゃん死なないで!!!」
「畜生!!!」
レイとシュウが嘆き悲しんでいる背後から影が忍び寄った。
「初めまして。お嬢ちゃんたち。しかし、なかなか綺麗だな。ここで殺すのはもたいない。そこでどうだ、もう一度素直に奴隷にならんか?」
シュウがその男に詰め寄る。
「てめーがみんなやったのか?」
「あなた達のことをみなさん隠す物ですからね、懲らしめたんですよ」
シュウが飛びかかろうとするのをレイが止めた。
「あんたはいったい何者?」
「失礼、私はゴールドシティの五将軍、TOOLと言います。おとなしく私についてきませんか?でないと殺さなくてはいけません」
「私たちがあなたの言いなりにもあなたの首領にも従う気はないわ。怪我しないうちに帰りなさい」
シュウは身震いした。
レイがこれほどまでに怒ったのを初めて見たのだ。
TOOLはレイ達を見下ろす。
「少々お仕置きが必要ですね。まあ少し痛い目をみれば気も変わるでしょう。かかってきなさい」
レイは気を練り始めた。今まで練習をしてきた技を使うのだ。シュウもそれを見て同様に気を練り始めた。レイはリボンを取り風を周りに集め剣にした。シュウも剣を取りその周りには電気が走っている。
「きぇーーーーー」
そう言うと二人同時に攻撃した。しかし、TOOLにはかすりもしない。
「なるほど。博士がおびえるわけだ。並の兵士じゃかなわないな。じゃ死んでもらいますか」
TOOLはそう言うと剣に青白い炎を纏った。
「レイ!相手は手強そうだぞ。どうする?」
「やるしかないわ、このまま捕まるわけにはいかない」
TOOLは剣に気合いを込めて切りかかってきた。それは大きな火炎となって二人を襲った。レイとシュウは間一髪避けたが服がちりちりになった。
「なかなかいいスタイルじゃないか」
TOOLは、舌をなめずり今度は火炎を剣に吸い込ませた。剣がまるで燃え滾るマグマのように真っ赤になった。
「死ねーーーーー」
「シュウ。まだ未完成だけどいくわよ」
そう言うとレイが纏っていた風をシュウへ送る。風が大気中の電気を集めシュウの剣の上に黒い雲が現れた。
「いけーーーーー」
黒い雲から雷が発生し、それがシュウの剣の電気と呼応してTOOLを襲った。TOOLは攻撃に出していた火炎を防御に回した。シュウとTOOLの間で火炎と電撃がぶつかり合いをしている。
「小娘が!これでも食らえ!」
気合いを込めてパワーを上げようとした時、横から声がした。
「私の存在を忘れていたわね。やぁーーーー」
かまいたちと化した風の猛攻がTOOLを襲った。
「し、しまったーーーーー」
TOOLはパワーを上げる前にレイからの攻撃を受け倒れた。レイとシュウは攻撃をやめTOOLを見た。
「見事です。なかなかいいコンビネーションでしたよ。しかし、私を倒した事であなた達のもとに次々と刺客が来るでしょう。いい気にならない事です」
それだけ言うと空気に溶けるように消えていった。
「来れるものなら来てみやがれ!次々とボロ雑巾にしてやるぜ!」
レイは暫らく考えた。考えがまとまるとシュウに話す。
「取り合えず仲間を見つけましょう。最初のうちはこれでもいいけど、この星を支配した人たちよ。二人だけじゃ息が上がってしまうわ」
シュウはレイの顔を覗き込む。
「臆病風にふかれたのか?」
レイはシュウの態度に怒った。
「違うわ!!!!」
「まあいいや。俺は再度ゴールドシティに潜入する。レイは仲間を見つけに行ってくれ」
「シュウだけでそんな危険な目に合わせられないわ!」
「心配するなって。レイといっしょに練習した技があるだろ。捕まりはしないし、表だって攻撃はしないさ」
「でも・・・・・」
「うるせーな。レイは仲間を見つけろよ。ぼやぼやしてると処理室が大賑わいになるぜ!」
レイはこれ以上シュウを引き止められない事を悟ったし、シュウの言う事ももっともだと思った。
「わかったわ。でも絶対に無茶しないでよ。あなたは私の大事な仲間なんだから」
「わかったよ」
そう言うと照れくさそうに顔を背けゴールドシティへ向かい歩いていった。レイもまた涙を見せまいとして後ろを向き、歩いていった。