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正直者で素直な王様

作者: choujintarou



ある国に、正直者で素直な王様がおりました。




王様には三人の優秀な大臣が仕えていました。


内務大臣と、財務大臣に、外務大臣です。




国の政策を決める時。


三人の大臣から、これこれこういう事をしましょうと意見を言われた王様は「うむ。ではそうしよう」と素直に聞き入れるのです。




そんな簡単なことで上手くいくのかと、人は疑問に思うことでしょう。


ですが、これが実は上手くいってしまうのでした。


国を動かすのには、思慮深いことよりも、あえて単純なことで良いのかもしれません。


そうして王様は、大臣や他の臣下の話をよく聞いたり、国のお金の使い道をしっかりと公にしたりと。


とにかくどんなことも包み隠さず国民に明かしました。




一目惚れした隣国の王女様宛ての、そのラブレターの内容までも、王様は国民に対して公開していたほどです。




そんな王様をその国の人たちは「正直者で素直な王様だ」と、口々に言うのでした。






その国は長い間、とても穏やかに暮らせていました。




ですが、ある時その国全体で飢饉が起こってしまいました。




そのせいで国は混乱としました。


王様も慌てふためき混乱しました。




そこで王様は、三人の優秀な大臣に、どうしたら良いのか意見を求めました。




内務大臣はこう言いました。


「王よ、今この国に必要なのは仕事です。飢饉のせいで、仕事を失う国民たちが大勢います。ならばここは、公共事業を起こす政策をしましょう」




王様は「うむ。ではそうしよう」


と言いかけたところ……財務大臣がこう言いました。




「王よ、お待ちください。今この国の財政は、飢饉のせいでとても苦しいものです。とても公共事業を起こせるほど、金の余裕はありません。ならばここは、とにかく堪えて倹約をして、金を蓄えておくべきです」




王様は「うむ。ではそうしよう」


と頷きかけたところ……外務大臣がこう言いました。




「王よ、お待ちください。今この国の税収は、飢饉のせいでそれほど多くはありません。とても金を蓄えておけるほど、そこまでの税収は見込めません。ならばここは、外国からの輸入品にかける関税を上げるべきです」




王様は「うむ。ではそうしよう」


と首を縦に振ろうとしかけたところ……ある臣下がこう言いました。




「王よ、お待ちください。三人の大臣様の言うことは、どれももっともでございます。ですが、これらの政策を、一度に全て行うのは無理でごさいます。王はどの政策を為されますか?」




王様はそう言われ、ハッとさせられました。


言われてみればその通りだと。




「しかし、わしに出来ることと言えば、そなた達臣下の意見を聞くことだけじゃ。どれを選ぼうにも、全ての意見がわしには正しく思える。わしはどうしたら良いのじゃ……」




王様は頭を悩ませてしまいました。




そこである臣下がこう言いました。


「王よ、王とは時に臣下の話ばかりに耳を傾けるのではなく、時には自分の意見を持つべきです。王の命令は絶対。ならばどうしたら良いのか、一所懸命に考えるのです。さすれば皆はなお一層、あなた様に付き従うことでしょう」




王様はこう言われて「なるほど、その通りである」と素直に聞き入れました。






王様はその後、一人で考えました。


一晩も考えあぐねました。




そうして考えた末、自分に出来ることと言えば、やはり人の話を聞くことだけだと思いました。




次の日、王様は臣下たちにこう言いました。


「これよりわしは、この国の各地を巡礼し、民たちの困りごとを聞いて回ろうと思う。皆も、そのつもりで支度して欲しい。さあ、一致団結でこの国の飢饉を乗り越えようぞ!」


王様は大きな声でそう言いました。




「ははー!」


臣下たちも大きな声で返しました。






王様は馬に跨り、何人かの臣下たちを連れて王宮の門を出ました。






「何か困っていることはないかー? わしが力になるぞー」


王様は国民たちに向かってこう呼びかけました。




ある者がそれに「王よ、私は仕事がなくて困っております。どうかお力添えを」と言いました。




「うむ。ではお主に荷物持ちの仕事を任せよう」


と王様は言い、彼に水と食料を持たせ、いくらかのお金も持たせました。




「王よ、ありがとうございます! 謹んでお受けいたします」






王様はしばらく馬で走りながら「何か困っていることはないかー? わしが力になるぞー」とまた呼びかけました。




するとある者が「王よ、私はもう2日と水を飲めておりません。どうか私に水をお恵みください」と言いました。




「おお、それは大変だ。どれ、この水を飲むが良い」と言い、先ほどの荷物持ちの彼が持っていた水を渡してやりました。




それを受け取ると、彼はあっという間に飲み干して「王よ、ありがとうございます。この感謝の印にあなた様のお供をさせてください。王のお力になりとうございます」と言いました。




王様は「うむ。ではそうしてくれ」と言いました。


彼は王様に付き従うことになりました。






王様はまたしばらく馬で走りながら「何か困っていることはないかー? わしが力になるぞー」とまた呼びかけました。




するとまたある者が「王よ、私には子供がたくさんおります。一人ではとても面倒を見切れません。どうかあなた様のお力添えを」と言いました。




「うむ。子供は国の宝だ。喜んで引き受けよう」


と王様は言い、荷物持ちの彼とお供の彼、それと何人かの臣下と共に子供たちの面倒を見てやりました。






王様たちは子供たちをあやしたり、鬼ごっこをしたりとたくさん遊びました。


けれどもうすっかり疲れ切ってしまいました。




「うむ……。腹も空いてきたことだし、ここいらでひとつ飯としよう」と王様は言いました。




「王よ、子供たちの面倒を見てくれてとても助かりました。子供たちがあんなに楽しそうにしてくれて、私もとても嬉しいです。どうかこのお礼に、お食事を作るのを手伝わせてください。私はこう見えて料理が得意なのです」




「おお、それは助かる。ぜひよろしく頼む」




「はい! では腕によりをかけて作らせていただきます」と言い、荷物持ちの彼が持っていた水と食料を使い、張り切って作り始めました。




出来上がった料理は、とても美味しく作れたのでした。


あんまりおいしくて、何度もおかわりしたほどです。




おやおや。


いつの間にやら、料理の匂いに誘われてやってきた人々で長い列が出来ていました。




飢饉のせいで、皆んなご飯が食べられなかったのでしょう。


皆んな美味しそうに食べて、お腹がいっぱいになったのでした。






これも、正直者で素直な王様のおかげで助けられたのだと。


皆んなの目に希望が灯り始めました。




王様のように正直者で素直な人でいよう。


王様に感謝しながら、皆んなはそう思うようになりました。




そうして皆んなで助け合っていけば、きっと、この国の飢饉は乗り越えられるはずだと。


皆んなは、王様を習って正直者で素直な者になり、また、よく助け合ったのでした。






そうしていく日、いく年の月日が流れた後。


ついに飢饉は過ぎ去ったのです。






「ああ、この国の民たちは、本当に正直者で素直な良き人々だ」




王様はそう呟いた。


今日も、正直者で素直な王様であったのでした。

皆様からのリアクションお待ちしております。

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