5ー6
生田と駅前で別れた私は、これ以上にないくらい興奮していた。舞い上がっている自分を抑えるのに必死だった。
家の前の通り。前方から男性が歩いてきた。背が高く、黒い帽子を深くかぶっていた。この辺りでは、見たことない顔。
すれ違いざま、一瞬、彼と目が合う。
「…………」
「…………………」
ただ、それだけ。
彼から、強い殺意を感じた。体を突き刺すような激しい怒りと憎しみ。
一度も会ったことがないこの男に恨まれる覚えはない。
だからこそ、
余計に不安になった。身の危険を感じた。
私は、慌てて校長に電話をかけた。校長なら、何とかしてくれる。私達、覚醒者を束ねる長だから。
ザザザ…ザザ…ザ…ザ…。
聞いたことのない雑音が、スマホから聞こえた。
妨害電波……?
私は急いで家に入ると、鍵を閉めた。しばらくドアスコープから外の様子を伺った。
「………………………」
もう男の姿はなかった。
「お帰りなさい。模試は、どうだった?」
「ママ………。私、見られた。たぶん覚醒者を狩る組織のメンバーだと思う。どうしよう……。どうしよう……ママ……恐い……」
私は、泣きながらママに抱きついた。
ピンポーーン!
ピンポーーン!!
「とっ、とにかく、中に入りなさい!! 自分の部屋にいて。絶対に外に出てきちゃ、ダメよ」
私は急いで階段を上がり、自分の部屋に入った。鍵を閉め、ドアに耳をぴったりくっつけて外の音を聞いた。
「……………」
無音。
しばらくたっても何の音もしないから、私は鍵を開け、階段を音をたてないように降りた。リビングでは、ソファーにママが座っている。
「ママッ!」
足元が、ぬるぬる滑る。
「……………マ…マ?」
ママは、口と鼻から大量の血を流して死んでいた。ソファーは血の海で、ママの右足は綺麗に切断されていた。
「俺に会ったのが、お前の運の尽きだ。そこの母親と同じように死ね。楽に殺してやる」
赤目の男。変異はしていないが、覚醒者だろう。
私は、左手で思い切り右手を引っ掻いた。激しい痛み。この痛みで、覚醒できる。
「ママ…を……かえ…じ…て」
一秒、一秒、狂暴に変化していく私の体。
「バカな奴だ。お前……最悪の選択をしたぞ」
「ギ………ギ…キ………」
ねぇ、生田ーーー。
私ね、本当はナナが羨ましくて、羨ましくて仕方なかったんだ。あんな風にアナタと話したい、ふざけて笑いたいってずっと思ってた。
だから……。
だからさ。
短い間だったけど、一緒に勉強が出来て、話が出来て本当に嬉しかったよ。
さっきは、告白もできたし。
「覚醒者になった己の悲運を恨め」
生田………。
先に待ってるから。
地獄で、告白の答え聞かせてね。




