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月ノ獣  作者: カラスヤマ
58/61

5ー6

生田と駅前で別れた私は、これ以上にないくらい興奮していた。舞い上がっている自分を抑えるのに必死だった。


家の前の通り。前方から男性が歩いてきた。背が高く、黒い帽子を深くかぶっていた。この辺りでは、見たことない顔。


すれ違いざま、一瞬、彼と目が合う。


「…………」



「…………………」




ただ、それだけ。




彼から、強い殺意を感じた。体を突き刺すような激しい怒りと憎しみ。



一度も会ったことがないこの男に恨まれる覚えはない。



だからこそ、



余計に不安になった。身の危険を感じた。




私は、慌てて校長に電話をかけた。校長なら、何とかしてくれる。私達、覚醒者を束ねる長だから。



ザザザ…ザザ…ザ…ザ…。



聞いたことのない雑音が、スマホから聞こえた。


妨害電波……?



私は急いで家に入ると、鍵を閉めた。しばらくドアスコープから外の様子を伺った。



「………………………」


もう男の姿はなかった。




「お帰りなさい。模試は、どうだった?」



「ママ………。私、見られた。たぶん覚醒者を狩る組織のメンバーだと思う。どうしよう……。どうしよう……ママ……恐い……」



私は、泣きながらママに抱きついた。



ピンポーーン!


ピンポーーン!!



「とっ、とにかく、中に入りなさい!! 自分の部屋にいて。絶対に外に出てきちゃ、ダメよ」



私は急いで階段を上がり、自分の部屋に入った。鍵を閉め、ドアに耳をぴったりくっつけて外の音を聞いた。



「……………」



無音。


しばらくたっても何の音もしないから、私は鍵を開け、階段を音をたてないように降りた。リビングでは、ソファーにママが座っている。



「ママッ!」


足元が、ぬるぬる滑る。


「……………マ…マ?」


ママは、口と鼻から大量の血を流して死んでいた。ソファーは血の海で、ママの右足は綺麗に切断されていた。


「俺に会ったのが、お前の運の尽きだ。そこの母親と同じように死ね。楽に殺してやる」



赤目の男。変異はしていないが、覚醒者だろう。

私は、左手で思い切り右手を引っ掻いた。激しい痛み。この痛みで、覚醒できる。



「ママ…を……かえ…じ…て」



一秒、一秒、狂暴に変化していく私の体。



「バカな奴だ。お前……最悪の選択をしたぞ」



「ギ………ギ…キ………」




ねぇ、生田ーーー。



私ね、本当はナナが羨ましくて、羨ましくて仕方なかったんだ。あんな風にアナタと話したい、ふざけて笑いたいってずっと思ってた。



だから……。


だからさ。



短い間だったけど、一緒に勉強が出来て、話が出来て本当に嬉しかったよ。



さっきは、告白もできたし。



「覚醒者になった己の悲運を恨め」



生田………。



先に待ってるから。



地獄で、告白の答え聞かせてね。



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