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月ノ獣  作者: カラスヤマ
57/61

5ー5

「あぁ、うん。いいよ」


「模試、どうだった?」


「意外とできた。ありがとう、前園さん。テスト勉強手伝ってくれて。本当に助かったよ」


「えっ、あっ、うん。そう……。良かった。あの…さ……。ちょっと、寄り道しない?」


僕は、前園さんと二人で小さな喫茶店に入った。客は、僕達以外に一人しかいない。ゆっくりくつろげそうだ。



「生田……。あの…今、好きな人っているの?」


「好きな人……。好きかどうかは、まだはっきり分からないけど、気になる人ならいる」


「ナナのこと?」


「………うん」



「わ、私はっ! わたし…は……。好きだよ。生田のこと」



「へ?」



冗談じゃないことは、本人の顔を見たら分かる。前園さんが、こんな僕に好意を持っていたなんて。



「急にこんなこと言って、困らせてごめんね……。私、待ってるから。だから、いつか生田の気持ちも聞かせてね」


「……………」


「そんなに私じゃ嫌?」


「ち、ちがうよっ! そんなんじゃ……」


「ふふ…冷めちゃうよ。その紅茶」


「あっ、うん……。うまいな、コレ」


「そうだね。本当に美味しい。良い香り……癒される…」



駅前で僕は、前園さんと別れた。




【 今でも後悔している。あの時、前園さんの気持ちに真剣に向き合わなかったこと。そして、前園さんを家まで送り届けなかったことを 】




「じゃあね、生田。また、明日!」


「うん。また、明日」



前園さんを見たのは、この日が最後になった。



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