5ー5
「あぁ、うん。いいよ」
「模試、どうだった?」
「意外とできた。ありがとう、前園さん。テスト勉強手伝ってくれて。本当に助かったよ」
「えっ、あっ、うん。そう……。良かった。あの…さ……。ちょっと、寄り道しない?」
僕は、前園さんと二人で小さな喫茶店に入った。客は、僕達以外に一人しかいない。ゆっくりくつろげそうだ。
「生田……。あの…今、好きな人っているの?」
「好きな人……。好きかどうかは、まだはっきり分からないけど、気になる人ならいる」
「ナナのこと?」
「………うん」
「わ、私はっ! わたし…は……。好きだよ。生田のこと」
「へ?」
冗談じゃないことは、本人の顔を見たら分かる。前園さんが、こんな僕に好意を持っていたなんて。
「急にこんなこと言って、困らせてごめんね……。私、待ってるから。だから、いつか生田の気持ちも聞かせてね」
「……………」
「そんなに私じゃ嫌?」
「ち、ちがうよっ! そんなんじゃ……」
「ふふ…冷めちゃうよ。その紅茶」
「あっ、うん……。うまいな、コレ」
「そうだね。本当に美味しい。良い香り……癒される…」
駅前で僕は、前園さんと別れた。
【 今でも後悔している。あの時、前園さんの気持ちに真剣に向き合わなかったこと。そして、前園さんを家まで送り届けなかったことを 】
「じゃあね、生田。また、明日!」
「うん。また、明日」
前園さんを見たのは、この日が最後になった。




