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月ノ獣  作者: カラスヤマ
55/61

5ー3

覚醒者を一人残らず、この世から消す。俺は、黒い風の中で誓った。




1ヶ月後ーーーー



俺は組織に雇われ、今は奴等のために働いている。俺に薬を提供した、あの男が所属する狂った組織。法律さえ、片手でねじ曲げる圧倒的な権力。本気になれば、大国と戦争することも可能だろう。ホテルで自殺を図る前から、組織のメンバーがずっと俺の行動を監視していたらしい。



今の仕事は、とてもシンプルだ。



覚醒者を見つけ、上司に報告すると50万。自分の手で覚醒者を殺ると200万が、現金で即支払われる。

俺は今、サラリーマンをしていた頃の十倍以上稼いでいる。



深夜2時。


俺は、ある会員制パーティーに参加していた。参加者は、男女合わせて10人程度。会場に入る前、厳しいボディーチェックをされた。覚醒者かどうかのチェック。


覚醒者だけしかこの中には入れない。



薄暗い会場。マイクを握る司会の大男。壇上にある巨大モニター。

血と獣の臭いを誤魔化す為のお香が、室内に何個も設置されている。俺は、配られた甘すぎるシャンパンを飲み干した。



「時間になりましたぁ!! それでは、皆さん。奮って、ご参加くださいぃ。まず最初の商品は、これですッ!」



モニターに映し出されたのは、冷たい床に横たわる少女。死んではいないだろうが、足枷をはめられて、罪人のような格好をしている。ちゃんと食事を与えられていないのだろう。ガリガリに痩せ細っていた。



「では、50万からスタートです」




俺たち参加者は、事前に赤色と青色のカードを主催者から渡されていた。

赤は、10万ずつ金額が増え、青は、50万ずつ増えていく。


この場所では、不定期に非合法の人身売買を行っている。参加者は、全員覚醒者で。しかも、有名人や政治家など。さまざまなエリートが集まっている。



「No.4様が、110万で落札です。おめでとうございます!!」



怒りを通り越し、絶望した。人の命をコイツらは………。



殺してやる………害虫のように。



俺は、殺気を必死に抑え、チャンスを待った。



「では~、これが最後の品となります。今後の開催は未定ですので、ぜひ皆様。本日の目玉商品を競り落として下さいッ!!」



巨大モニターに映し出されたのはーーー



俺たちがいる会場。そして、一人一人のアップ画像。


「っ!?」


「チッ………」


「ハハハハ」


それまで無言だった覚醒者達が、足早に会場の外に出ていく。もちろん、外には組織の狩人が罠をはり、待ち伏せしている。逃げることは出来ない。俺たちは、覚醒者を捕らえることに特化したプロ。


問題なのは、自分達がはめられたと気付きながらも、まだ逃げずにこの会場にいる者たちだ。彼らには、絶対的な自信がある。俺達を足下でうろちょろしている蟻だとたかをくくっている。


俺は、自分の心臓を思い切り叩いた。意識が飛ぶほど強く。次第に溢れ出す、この力。仕事仲間に聞いたら、あの薬で覚醒者と同等の力を得ることが出来たのは、俺以外にいないらしい。他は、すべて副作用で死んだ。

これ以上にないハイリスク、ハイリターン。


眠っていた力を爆発させ、相手に突進した。

まず、隣のテーブルで葉巻を吸っている爺さんの頭を掴み、思い切りぶん投げた。首から下だけが壁にめり込み、死んだことに気付かない間抜けな頭は、まだ俺の手の中に残っていた。



まず、1人………。



俺に向かってくる若い女の覚醒者。



「おそい……」



俺の目には、まるで静止画。アクビを噛み殺しながら、竹を割るように真っ二つにソイツの胴体を裂いた。悲鳴だけが、いつまでも俺の耳を不快にさせた。



残るは、1人……。



初老の男。見た目は、気弱そうで。人を襲う覚醒者には、見えない。でも俺には、今までの雑魚とは違う。


……何か特別な力を奴から感じていた。



「強いですね~。若いって良いなぁ。惚れ惚れする」


「……………」


俺は、奴の正面に立ち、殺すタイミングをうかがう。


「どうしました? 私も殺すつもりなんでしょ?」


「…………あんた………何者だ?」


「ハハハ、私はただの老いぼれですよ。掘り出し物があったら、可愛い孫の土産に買おうと思いましてね~」


「クズが」



俺は、左手に意識を集中させた。奴との距離をつめ、ソイツの心臓に突きさ……。



す………………。



「ほ~。なかなかの手刀。銘刀、銘刀」



枯れ枝のような奴の細腕に掴まれた左手。ビクともしない。


「お若いの。アナタは、確かに強い。強いが、ただそれだけだ」



ビュッッ。



床にめり込む顔面。

速すぎて、何をされたか分からない。



気絶する前に見た、俺を見下ろす奴の顔。



久しく忘れていた『絶望』の二文字を思い出した。



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