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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第3回活動報告:投資詐欺から高齢者を守れ
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IFAに聞いてみよう(その3)

(8) IFAに聞いてみよう <続き>


エマたちIFAの3人は、急に逮捕すると言われて困惑しているようだ。

ただ、いくら身に覚えのないことだったとしても、説明しないと犯罪者にされてしまう危険性がある。この状況においては『沈黙は金』ではない。


エマはしばらく考えた後、劣後社債の買取請求について話し始めた。


「私に最初に相談があったのは、相続人からの劣後社債を換金したいという内容でした。フォーレンダム証券のIFAは、運用会社トルネアセットマネジメント経由で発行会社ファンドに買取請求すれば額面の70%で買い取ってもらえることを知っていました。だから、私が劣後社債を相続人から買取ることを提案しました。私が相続人から額面の60%で買取った後、発行会社に額面の70%で売却できれば、追加で5%を相続人に支払う。相続人は合計で劣後社債の額面の65%を換金できます。残り5%は私の手数料です。相続人も、『面倒な手続きをするのだから、手数料として5%払うのは当然だ』と言ってくれました」


「手数料は5%」と言ってルイーズはメモしている。


ルイーズの言い方に悪意を感じたのだろう。エマはルイーズの方をチラッと見たが、話を続けた。


「その相続人はそれで進めて欲しいと言ってきたから、買取請求の手続をした。これが、私の最初の買取請求だった」


「私も、最初は似たような相談だったわ」と隣に座っているミアは言った。


ルイーズが特に何も言わないので、エマは説明を続ける。


「その後も、理由は違うけど劣後社債を買取って欲しいという相談があった。同じように先に60%で買い取って、後で5%渡すということで、買取請求を何件か手続したの。そうしたら、その噂が広まって、次々と私のところに相談が来るようになった」


「それは、どれくらい前ですか?」とルイーズがエマに聞いた。


エマは、急にルイーズが質問したため面食らったようだ。


「多分・・・、2年前くらいだったかしら」とエマは答えた。


「そうそう、2年前。私にもたくさん相談が来たわ」と隣のソフィアも言った。


エマはルイーズが何も言わないので話を続ける。

それにしても、聞き手が何の反応もしないので、話しにくそうだ。


「最初は良かったんだけど、徐々に資金繰りが大変になってきたの。だって、発行会社に買取ってもらう前に、額面の60%を立て替えないといけなかったから。私はIFAとしてそれなりに稼いでいたから、1,000万JDまでは、みんなのためだと思って自己資金で劣後社債を買取った」とエマは言った。


JDジャービス・ドルはジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。


「私も、500万JDまでは自己資金で劣後社債を買ったわ」とミア。


「すぐに自己資金で劣後社債を買うのは限界になった。他のIFAにも聞いたけど、みんな同じような資金難に陥っていた。それで、IFA仲間で話し合ったのだけど、立替金は直ぐに返ってくるはずだから、銀行から借入しようという案が出たの。発行会社に買取ってもらった後で、銀行借入は返済できるから」とエマは言った。


「その話をしたのは私ね」とソフィアが言った。


「銀行借入・・」とルイーズが小さく言った。

メモをとっている間の独り言だ。


「それから、銀行から借りたお金で社債を買取って、発行会社に社債を売却して、借入金を返済するようになった。これを2年繰り返していたら、借入が10億JDに膨れ上がった」とエマは言った。


俺はエマの借金の金額を聞いてびっくりした。

普通のおばさんに10億JDも貸すのか?

突っ込んで質問した方がいいと考えた俺は、エマに質問した。


「銀行は個人に10億JDも貸すのですか?」


「そう思いますよね。不思議に思うのも当然です。私も10億JDも貸してくると思っていませんでした」


「じゃあ、なんで借りれたんですか?」と俺は質問を繰り返した。


「劣後社債を担保にして10億JDを借りました。銀行の担当者は、劣後社債の額面の70%までは、貸してくれると言っていました」


「銀行の劣後社債の担保掛目は7割ですか。そうすると、劣後社債は額面の60%で買取っているから、担保掛目(劣後社債の70%)の範囲内。銀行は劣後社債の買取資金を10億JDでも20億JDでも貸せますね」


「そうなんです。銀行の担当者には『劣後社債の買取資金はいくらでも貸せるから、劣後社債を買取れるだけ買って欲しい』と言われました」


銀行は都合のいい時は『借りてくれ』と言うが、都合が悪くなると『返してくれ』と言っている。よく聞く話だ。


「銀行も節操がないですね」と俺は言った。


<続く>

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