表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第3回活動報告:投資詐欺から高齢者を守れ
57/294

運用会社に聞いてみよう(その1)

(7) 運用会社に聞いてみよう


フォーレンダム証券のオウルとの面談を終えた俺、ルイーズとポールの3人は、トルネアセットマネジメントに訪問した。

トルネアセットマネジメントも受付や応接室に金を掛けている。ここでも総務省との差を感じる。


フォーレンダム証券に訪問するまでは、俺たちはフォーレンダム証券とトルネアセットマネジメントのどちらか一方、または両方が今回の犯人だと思っていた。オウルの話を聞いて『両方とも犯人ではない?』と思うようになった俺は、オウルの話がどこまで本当なのかを確かめるために、トルネアセットマネジメントに来ている。


オウルから聞いた話と、これから聞く話に整合性があれば、犯人ではないのだろう。

ただ、これは2社が口裏を合わせていないことが前提だ。


容疑者は捜査の過程で変わっていく。

今の俺の心配事は、容疑者がゼロになることだけだ。


トルネアセットマネジメントの会議室に案内された俺は、社長のシモに挨拶を簡単に済ませ、さっそく質問することにした。


「劣後社債の利払いがされていないと、総務省に相談があったので、本日はこちらに伺いました。劣後社債の利払いの状況について、教えてもらえますか?」と俺はシモに聞いた。


「その件ですね。弊社でもどう対応するかを、検討している最中です。既にあらかたご存じだと思いますが、急に買取請求が増加したため、ファンドが保有している劣後社債の元利金支払資金が不足しました。劣後社債の買取りは、利息の支払いよりも優先されるため、劣後社債を保有している投資家への利払いが遅延しています」


「そうすると、契約上は、先に劣後社債を買取ってから、劣後社債の利息の支払いを行うという順番なのですね?」


「そうです。弊社としては、順番はどちらが先でも良かったのですが、フォーレンダム証券の希望で劣後社債の買取りを優先する契約になりました」


「そうですか。ところで、劣後社債の支払遅延は、普通社債の利払いには影響がないと聞きましたが、これは正しい情報でしょうか?」と俺はシモに確認する。


「はい。合っています。普通社債と劣後社債は、元利金の返済資金を分けて管理しています。劣後社債の支払資金が不足しても、普通社債の支払資金には影響しないためです。普通社債の利払いには何の問題ありません。ただ・・・・」


「ただ?」


「劣後社債の利払いが長期間行われないと、新規の劣後社債の発行に影響します。その点を懸念しています。劣後社債の利払遅延を回避するには、幾つか方法があります」


「例えば、どういう方法ですか?」


「一つの方法は、ファンドが保有している資産(住宅ローン債権)を売却して、全ての社債を償還する方法です。この方法は、当社としてはあまりやりたくありません」


「なぜですか?」と俺は聞いた。


「普通社債も同時に償還しないといけないからです。ファンドが保有資産を売却した場合、普通社債の早期償還条項に抵触して、普通社債を全額償還する必要が出てきます」


「普通社債に影響するからですか?」


「そういうことです。普通社債を購入している機関投資家は、期限前返済を嫌がります。機関投資家には、一定期間、安定して資金運用したいというニーズが強いのです。このため、投資対象の償還が早くても遅くても嫌煙されます」とシモは言った。


「償還が早くても遅くても、ですか?」


「そうです。両方嫌がります」


「投資家が満期に償還されないのを嫌がるのは分かります。でも、投資家が満期よりも早く償還されるのを嫌がる理由が分かりません。投資家は早く償還されて資金が戻ってきた方が良いのではないのですか?」と俺はシモに質問した。


俺が運用業界では常識的なことを聞いたからだろうか?

シモは俺の質問がよく分からないような素振りをした。


<続く>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ