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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第3回活動報告:投資詐欺から高齢者を守れ
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証券会社に聞いてみよう(その3)

(6) 証券会社に聞いてみよう <続き>


「なるほど。てっきり、御社が劣後社債の買取り方法をマニュアル化しているのかと思っていました」


「IFAの買取りに関しては、当社は何も関与していません。ただ、当社は誰が誰に売ったかは把握しています。これは、社債管理簿に反映するために、劣後社債の売買があった時に譲渡人(売り手)から報告を受けているからです」とオウルは言った。


「それでは、IFAが発行会社に買取請求する時は、どういう流れになるのでしょうか?」


「基本的にはIFAが発行会社に直接売却します。当社から発行会社に売却するわけではないため、当社はIFAから売却の報告を受けるだけです」


【図表3-1-3:劣後社債の買取りの流れ】

挿絵(By みてみん)



「想像していたよりも、御社が関わることが少ないのですね」


オウルの話だと、IFAが社債保有者から劣後社債を直接買取って、IFAが発行会社に劣後社債を直接売却している。フォーレンダム証券は本当に何も絡んでいないのだろうか?

俺は疑問に思いながらも、イベントについてオウルに質問した。


「ところで、社債販売のイベントについて、御社はどのように関わっているのでしょうか?」


「社債販売イベントは、月1回会場を借りて開催しています。このイベントは、約10年前にスタートしましたが、初めの数年間はあまり社債を販売できませんでした。社債の販売が増えたのは、確か5~6年前だったと思います」


「理由は何だったのですか?」


「イベントをIFAに任せるようにしたのです。当社でイベントを担当していたスタッフが退職してしまって、後任を探している時にIFAの一人が提案してきたんです」


「IFAが代わりに運営したいと言ってきたのですか?」


「そうです。社債の売れ行きがイマイチだったので、当社でも誰も後任に着きたくなかったんです。IFAの提案には、満場一致で賛成した記憶があります」


「へー」


「当社が運営していた頃は、社債販売イベントは月1回の開催でしたが、IFAに代わってから毎週別のイベントも開催するようになったと記憶しています。その後は、社債の販売は順調に推移し、IFAの人数も数倍に増加しました」


「才能があったんですね」


「恥ずかしい話ですが、当社のスタッフの誰よりも販売が上手かったです」


「そうすると、今は御社がイベントを主催しているわけではないのですか?」と俺は聞いた。


「うーん。説明が難しいですね・・・。形式的には、当社はイベントを共催しています。イベント開催費用の50%を当社が負担していますが、イベントの運営はIFAが全て行っています」


「分かりました。最後に一つ。一部の劣後社債の利息の支払いが遅延していると聞いています。理由はご存じですか?」


「トルネアセットマネジメントから、想定を超える買取請求がきたため、全額の買取りができないと聞いています。社債の発行要項に『運用会社が承諾した場合に限り、発行会社ファンドが額面の70%で当該社債を買取ることができる。』という買取請求条項があり、これが劣後社債の買取請求の根拠となっています」


「なるほど」


「ファンドには、普通社債の元利金返済資金もプールしてありますから、全体としては充分な資金があります。劣後社債はファンドが買取るわけですが、劣後社債の買取資金は劣後社債の元利金返済資金に限定されています。一時的に劣後社債の買取請求が集中すると、劣後社債の元利金返済資金が不足します。これが、今回の利息支払い遅延の原因です」


「そうすると、普通社債の投資家には、利息は支払われているのですか?」


「もちろんです。普通社債は支払原資が違うので、何の問題もありません。既に100ファンド以上組成していますが、普通社債の元利金支払いができなかったのは一度もありません」


「そうすると、劣後社債の買取請求が想定よりも多すぎるわけですね。ちなみに、この状況は、御社にとって、何かメリットはありますか?」と俺はオウルに聞いた。


「メリットはないですね。正直に言うと、デメリットしかありません。トルネアセットマネジメントとの関係もありますし、もしファンドを早期償還するような事態になると、普通社債の投資家にも迷惑を掛けますから」


「よく分かりました。ありがとうございます」

俺たちはそう言って、フォーレンダム証券を後にした。


犯人はフォーレンダム証券ではないのか?

オウルの話を全て信じるのは危険だが、状況から判断するとフォーレンダム証券は買取請求には関わってなさそうだ。


その帰り道、「読みが外れたみたいだね」とルイーズが言うので、「いつものことさ」と俺は答えた。


大したことはない。

いつものように、今回も推理が当たらないだけだ・・・。



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