表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第3回活動報告:投資詐欺から高齢者を守れ
52/294

容疑者を絞り込め(その1)

(5)容疑者を絞り込め


ミゲルたちはターニャが指定したフルーツパーラーで落ち合った。ターニャの友人から追加で情報を入手するためだ。ターニャは友人3人を連れてきて、フルーツ&スウィーツコースを注文した。ターニャと友人3人は楽しそうにフルーツ&スウィーツコースを楽しんでいる。1人6,000JDするが、情報を入手するためには仕方のない出費だ。


JDジャービス・ドルはジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。


友人3人から聞けた情報は、既にターニャから得られた情報と同じで、特に新しいものはなかったようだ。ただ、友人3人から劣後社債の発行要項を100個近く入手できたので、交際費が多少高かったものの良しとしよう。


ミゲルがターニャの友人から集めてきた大量の発行要項を使って、ルイーズとスミスが今まで発行された社債の内容を確認した。その作業が終わったため、それぞれの調査結果について内部調査部のメンバーで情報交換することになった。


内部調査部での打ち合わせがスタートし、まず、スミスが今まで発行された社債の内容についてメンバーに説明する。


「まず、トルネアセットマネジメントは毎月ファンドを組成していて、住宅ローン債権の購入資金を普通社債70%、劣後社債20%、出資金10%を発行して調達しています。この比率は確認した約10年分の発行要項で全て同じでした」


「へー。劣後社債はフォーレンダム証券が個人投資家に販売していると思うけど、他の引受けしているのはどこなの?」と俺はスミスに聞いた。


「普通社債は、年金基金や銀行などの機関投資家が引き受けています。出資金はファンドに対する出資で、運用会社のトルネアセットマネジメントが拠出しています」とスミスは答えた。


「トルネアセットマネジメントは約10年ファンドを組成しているみたいだけど、取得する資産は住宅ローン債権のみなのかな?」と俺は確認した。


「それは同じです。10年の間に運用対象の資産を変更してもよさそうなのですが、住宅ローン債権以外は取得していません」とスミスが答える。


「じゃあ、ファンドの数は多いけど、全て同じスキーム(仕組み)で発行されているわけか」


「全部同じ。10年分の社債の発行要項を調べれば、何かイレギュラーなものが出てくるかと思っていたのに、期待外れだった・・・」とルイーズが言った。


「問題なかったから、よかったじゃない。とりあえず、お疲れ様」と俺は言った。


「本当に疲れた。でも、スミスが作業開始前にチェックシートを作ってくれたから、助かった。あれがなかったら、発行要項をそれぞれ50部ずつ読まないといけないところだった」とルイーズが言った。


「管理部に20年いましたから、こういう作業は慣れています。発行要項のフォーマットは全て同じだったので、確認項目だけ見れば、他は同じことが書いてありますから」とスミスは言った。


社債の発行要項は特に問題がなさそうだったので、次は、ポールが聞いてきた業界情報をメンバーに説明することになった。


「・・・というわけで、普通社債は機関投資家に売れていたようですし、劣後社債は利回りも高くて安全なので、個人投資家の人気も高かったようです」とポールは言った。


「へー。いい商品だったんだ」と俺は言った。


「そうみたいです。ファンドが保有している住宅ローン債権は、特に延滞率が高いわけではなく、普通社債と劣後社債の元利金の支払いに必要なキャッシュフローはあると言っていました。延滞率が3%を超えると劣後社債の元利金支払いがストップする可能性があるようですが、ここ5年くらいの住宅ローン債権の延滞率は0.5%らしいので、劣後社債の利払いが遅延するはずがないと言っていました」


「じゃあ、なんで利払いが停止したの?」


「利払い停止の可能性があるとすると、誰かが意図的に買取請求権を行使して利払いできないように妨害している、としか考えられないと言っていました」とポールは説明した。


「そうか。ポールの話を聞くと、商品自体が悪いわけではなさそうだね。ますます、詐欺行為や違法行為の可能性が低くなってきた・・・」と俺は言った。


「お役に立てずに、すいません」とポール。


「いや。業界情報は重要だよ、ありがとう」


「そうすると、誰かが意図的に買取請求権を行使して、劣後社債の利払いを止めていると考えるのが自然ですよね?」とポールは言った。


「そうだね。でも、景気が悪くない今の時期に、不特的多数の個人投資家が一斉に買取請求をするとは思えないんだけど」と俺は言った。


「劣後社債を買っているのが高齢者だから、孫にお年玉あげるのに換金しているとかでしょうか?」


「個人投資家が一斉にお年玉のために買取請求する?」


「しませんね・・・。僕だったら、少額のお年玉のために30~40%も損して劣後社債を解約しようと思いません」とポールは言った。


「俺の推理が正しいかどうか分からないけど、きっと、誰かが裏で糸を引いていると思うんだ」


「本当の犯人は別にいるってこと?」とルイーズが言った。


<続く>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ