表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第2回活動報告:カルテルを潰せ
33/294

先物でヘッジしよう(その1)

(7) 先物でヘッジしよう


1週間後、俺は銅を輸入するi2の会社設立を頼んでいたミゲルから、準備が整ったと連絡を受けた。スミスに頼んでいた銅先物を取引するための口座開設も完了しているようだ。


後からロイに聞いた話だが、会社設立と口座開設はどちらもスミスが行ったようだ。最初はミゲルがやろうとしたが、書類のミスが多く、何度も法務局から書類を差戻されたため、見かねたスミスが代わりに書類作成と申請をしたようだ。


ミゲルを見ていて勉強になったことが一つある。

おじさんの実力は『できる奴を知っているか?』で判断するべきなのだ。

自分でできなくても、できる奴にお願いすればいい。


人には得意・不得意がある。

不得意なことを無理してやる必要はない。

不得意なことをやってもミスが増えるだけだ。生産性も上がらない。

得意分野を伸ばした方が、効率的だ。


準備が整ったので、俺たちは先物取引で損失を回避ヘッジすることにした。


まず、銅先物の価格は直近1週間で特に変動はなく、6カ月間であれば仕入単価よりも高い価格で売却ができそうだ(図表2-6-3)。


【図表2-6-3:銅先物の期間ごとの価格】

挿絵(By みてみん)


このため、月200tの銅の輸入量に合わせて、銅先物の売り注文を出すことにした。

i2がサンマーティン国から銅を輸入すると、国内の供給量が増加して銅の現物価格が下落することが予想される。銅先物を使って、売却金額を確定して損失を回避する必要があるからだ。


俺は、今後の取引内容を説明するために、会議室に内部調査部のメンバーを集めた。

『カルテル潰し作戦』を成功させるためには、少しのミスも許されない。

なんせ相手はカルテルのプロだ。メンバー全員が取引の内容を完全に理解しておく必要があるだろう。


集まったメンバーに対して、俺は説明を始めた。


「1週間後から、毎月200tの銅の仕入を6カ月間実施しようと思う。みんなに説明したと思うけど、外務省、軍本部、内務省に支払う手数料は銅取引から発生する利益の20%だ」


「それは聞きました。内部調査部が40%ですよね?」とポールが言った。


「そうだ。でも、i2が銅を輸入して国内供給量が増えると、銅の国内価格が下がるよね。銅の国内価格が下がってi2の利益がゼロや損失が発生すると、この方法だと手数料を支払えない」


「確かに。全員ただ働きですね」と今度はミゲルが言った。呑気そうだ。


「費用を賄えるだけの利益が出ないと外務省、国軍、内務省は動いてくれない。

ルイーズとスミス以外には説明していなかったけど、i2の利益がマイナスになる可能性があるから、手数料の最低保証額(単価)として50JD/kgを設定したんだ」


「i2に利益が出なくても、手数料を支払う必要があるのですか?」とポールが言った。


「そうだよ。具体的には、i2に発生する利益(単価)に応じて外務省、国軍、内務省に支払う手数料、内部調査部の損益はこんな感じだ」と言って俺は内部調査部のメンバーにグラフ(図表2-6-4)を示した。


【図表2-6-4:i2の利益による関係者への手数料配分】

挿絵(By みてみん)


「外務省、国軍、内務省に支払う手数料は、i2の利益(単価)の20%と最低保証額(単価)50JD/kgのどちらか大きい金額(単価)だ。

例えば、i2の利益(単価)が100JD/kgの場合、利益の20%は20JD/kgだから、最低保証額(単価)50JD/kgよりも少ない。この場合は、外務省、国軍、内務省に50JD/kgを手数料として支払うことになる。

i2の利益(単価)が100JD/kgなのに、外務省、国軍、内務省にそれぞれ50JD/kg支払っているから(合計で150JD/kg)、内部調査部には▲50JD/kgの損失が発生する(100JD/kg-150JD/kg)」


「つまり、内部調査部が利益を出すためにはi2の利益(単価)が150JD/kgを超えないといけない、ということですね」とスミスが言った。


「そうだよ。手数料の最低保証額(単価)50JD/kgを設定したから、内部調査部に損失が出やすくなった。だから、みんなには今から話す内容をよく理解してもらいたいんだ」と俺は言った。


メンバーを見渡すと、みんな頷いている。俺の意図が通じたようだ。


<続く>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ