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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第10回活動報告:借地権の争いを解決しろ!
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マイケルの行方

(7)マイケルの行方


 俺たちは底地の買取りを開始した。ジャービス国内の不動産会社から入手した情報をもとに、グロス利回り(年間地代収入÷底地価格)が10%以上のものを片っ端から買っていく手筈だ。買取り件数は多くなるはずだから、なかなか手間の掛かる業務だ。

 それでも、不動産会社が事前に地主にコンタクトして、底地を売る意向があることを確認してくれているから、自分たちで一から探すことに比べればかなりマシだ。


 底地の買取りをスタートして間がないが、地主から底地を買取って分かったことある。俺が想像していたよりも、底地を相続した相続人が手放したいと思っているケースが多い。理由は相続税の支払いだ。


 底地は買い手が少ないから換金性が低い。

 被相続人(死んだ人)の相続財産を相続すると相続税が発生するのだが、相続税は原則として現預金で納付する必要がある(物納も一部可能であるが、物納可能な物件は極めて限定されている)。相続税の支払いが必要であるにも関わらず、底地は処分(換金)できないから相続人は納税資金が不足する。物納ができない底地は相続人からすればお荷物でしかなく、相続税を支払うために底地を買取ってほしいというニーズは高い。


 中途半端な相続財産を残してしまったことによって相続人が苦労している。同様に、一部の高齢の地主は底地のままでは処分できないことを理解していて、終活の一環として底地を処分したいという声も聞かれた。


 俺たちが開始した底地の買取りは、ジャービス王国の相続を円滑に行うために役に立ちそうだ。内部調査部の業務はほとんど感謝されることがないのだが、今回の底地買取りはジャービス国民から感謝される取り組みになるのではないかと思う。


 そういう意味では、この取り組みはやって良かったような気がする。



***



 俺が総務省の執務室で仕事をしていると、ミゲルとジョルジュのおじさんコンビが、肩を組んで嬉しそうに入ってきた。無視するのも可哀想な気がするから「どうしたの?」と俺は二人に聞いてあげた。


 待ってました!とばかりに「部長、やりました!」とミゲルがガッツポーズする。ジョルジュも併せてガッツポーズだ。

 俺はミゲルが何を言いに来たのか想像が付いているのだが、手柄を立てたおじさんコンビの話を聞いてあげることにした。それに、今日はそんなに忙しいわけじゃないから、無碍に追い返す必要もない。


「何かうまくいったの?」


「聞いて下さい。見事、マイケルを逮捕しました!」


 俺は今朝ニュースを見てマイケル逮捕の件を知っていたのだが、ちょっと大袈裟にリアクションしてあげる。


「おー、良かったじゃない!」


「どうやって逮捕したか聞きたいですか?」


「いや。今回は俺の推理が当たってると思う。俺の推理を聞きたい?」


「いいですよ。当たりますかね?」


 俺は少し溜めてから言った。


「ジャクソンだろ?」


「な!? なんでそれを?」


 ミゲルは俺がジャクソンを知っていることに相当驚いている。俺が推理した理由をミゲルに説明する。


「底地を調査しているときに、MJの登記簿謄本を調べたんだ。マイケルたちはMJという会社名の法人をジャービス国内に100社以上設立していたのだけど、1社を除きダミー会社だった。でも、ジャービス王国のMJの1社だけ、ジョーダンやマイケルが取締役に就任している会社があった。その1社のもう一人の取締役がジャクソン」


「そうでしたか・・・」


 俺は推理を続ける。


「ジョーダンの息子はマイケル。MJのファンだからね。そして、マイケルの息子はジャクソン。こっちもMJのファンだ。マイケルはMJのグッズで誘き出したんだろ?」


「へー、珍しく部長の推理が当たりましたね。正解です!」


 俺の推理が当たることは珍しい。客観的に見て、決してミゲルは間違ったことを言っているわけではない。

 でも、


―― なんて失礼なやつだ・・・


 俺はそう思った。でも、正解は正解だ。


 ミゲルはマイケル逮捕劇を俺に説明する。


「今回の操作ではMJのステージ衣装をオークションにかけてアジトを特定しました。マイケルが落札したMJのステージ衣装にGPSの追跡装置を付けていたんです」


「GPS捜査って違法じゃないの?」と俺はミゲルに確認する。


「裁判所の令状を取ったから大丈夫です!」ミゲルは自信たっぷりに言う。


「じゃあ、今回もミゲルが大活躍だったんだ。良かった、良かった」


「まあ、そういう顛末です。一応、ご報告にきました。今回の捜査調書の提出が終わったら、内部調査部に戻ります」


「底地の件も順調に進んでいるから、ゆっくりでいいよ。そういえば、ミゲルは来週の慰労会に参加できるの?」


「もちろんです。それに、ジョルジュたち警察官やジャービス中央銀行のアドルフたちも呼ばれているみたいですよ」


 ミゲルはそう言うと、ジョルジュと一緒に俺の執務室から出ていった。


―― あいつら、仲いいな・・・


 俺は部屋から楽しそうに出ていくミゲルとジョルジュを見ながら思った。


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