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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第10回活動報告:借地権の争いを解決しろ!
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底地ファンドを調査しろ(その4)

(4)底地ファンドを調査しろ <続き>


 ガブリエルは借地権についての議論を続けた。


「今回のエドガーたちのケースは、被相続人(死んだ人)が土地所有者(地主)のままだったら(例えば、エドガーの父親が死んでいなかったら)特に問題なかったと思います」


「そうだね」


「元地主が死んで、相続人が第三者に売却したから、当初の地主とは譲渡承諾についてスタンスが180度変わりました。仮に、相続人が第三者に売却しなくても、相続人が譲渡承諾したくないと考えるケースがあります。さらに言うと、複数の相続人が共同相続する場合は底地を共有するので、もっと問題が複雑になります(図表10-12を参照)」



【図表10-12:相続による底地権者の異動】


挿絵(By みてみん)



「共同相続した場合か・・・確かに大変そうだね」


「例えば、10人が共同相続した場合、底地権は10人で共有します。もし建物所有者(借地権者)が建物を売却しようとして地主から譲渡承諾を取る場合、底地権は10人で共有されていますから、借地権者は底地権者10人全員の譲渡承諾が必要です」


「そうだね。10人に譲渡承諾してもらわないといけないな」


「さらに、10人の相続人が死亡した場合、底地権は次の相続人に移ります。10人の底地権共有者にそれぞれ5人の共同相続人がいたら、底地権は50人で共有します」


「50人は悲惨だなー。親戚付き合いもないかもしれないから、連絡が取れない底地権者が何人か出てくるだろうな・・・」


「それだけの相続人がいたら相続時の登記が全て行われないでしょうから、最終的には所有者不明土地が増えていきます。所有者不明土地が大問題になっている国があるらしいですよ」


※所有者不明土地とは土地の相続などの際に所有者についての登記が行われないなどの理由で、誰が所有者なのか分からない土地のことです。日本の場合、所有者不明土地の面積は国土の約22%(九州よりも広い)と言われています(内閣府広報より)。


「所有者不明土地か・・・。痛い所を突いてくるな。治安悪化や防災面でも問題になっているみたいだね」


「そうです。今のは地主の話ですが、借地権者(建物所有者)にも同じことが起こります。不動産売買を円滑に行えないと、老朽化されたコンドミニアムや戸建てが相続されて、登記されない借地権付区分所有建物や借地権付建物が大量発生するでしょう」


「老朽化したコンドミニアムの所有者が分からなかったら、取り壊しできない。崩壊寸前のコンドミニアムが放置されるのは問題だ。確かに、これは困る・・・」


「借地権者と底地権者の揉め事を放置してしまうと、最終的に所有者が分からない土地と建物が大量発生するのではないかと思うんです。ジャービス国内の不動産市場を阻害する要因になるのでは、というのが私の懸念です」とガブリエルは言った。


 ガブリエルの説明は的を射ている。今回の相談案件は借地権者と底地権者の揉め事だが、不動産相続の危険性を考える機会になったのかもしれない。


 実際に、世界では相続において所有者不明土地と空き家が大量に発生している。

 例えば、日本における空家率の推移を示したものが図表10-13だが、年々空き家が増加し2018年時点で住宅総数の13.6%が空き家だ。人口が減少していく日本においても新規の住宅供給は行われるため、全体の住宅数は年々増加していく。一方、人口は減少していくから住宅が飽和化して空き家が増える。特に、高齢者が住んでいた住宅を相続した相続人は売却せずに空き家のまま置いておくケースが多く、これも空き家率を増加する要因となっている。



【図表10-13:日本における空家率の推移】

 

挿絵(By みてみん)


※出所:総務省統計局



 ちなみに、国土交通省が実施したアンケート結果(令和元年空き家所有者実態調査)では、空き家のままにしておく理由として【物置として必要:60.3%】、【解体費用をかけたくない:46.9%】、【更地にしても使い道がない:36.7%】、【好きなときに利用や処分ができなくなる:33.8%】などが挙げられている。建物を取り壊すと固定資産税が高くなることも理由の一つだ。



―― たしかに面倒だな・・・


 ジャービス王国として早めに対策をしておいた方がいい、と俺は考えた。


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