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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第10回活動報告:借地権の争いを解決しろ!
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相続と不動産(その2)

(2)相続と不動産 <続き>



※前話の説明の続きです。


 次に、土地の価格について説明する。土地価格は、その状態や権利関係によって異なる。

 先ほどの説明で、状態に応じて土地を更地、建付地、借地、底地の4つに分けていたが、その4つの土地の価格は全て異なる。

 その価格の大小関係を示せば、以下のようになる。


更地価格 > 建付地価格 > 借地権価格 > 底地価格


 この4つの価格の関係を図示したものが図表10-3だ。


【図表10-3:土地価格の比較】

 

挿絵(By みてみん)


※上記の借地権価格と底地価格は、同一人物が取得する価格(限定価格)を考慮していません。



 まず、更地価格を100とした場合、建付地価格は更地価格よりも同じか低くなる。理由は、既存の土地の利用方法が最有効使用(土地を最も有効活用できる状態)でない可能性があるからだ。つまり、既存の建物よりも収益性の高い建物を建てることができる場合、現在の土地利用は最有効使用になっていない。

 例えば、東京銀座の一等地に戸建て住宅が建っていたとしよう。銀座の一等地であれば、戸建て住宅ではなくオフィスビルや商業施設を建てた方が、不動産価値(収益価格)が高くなることは明らかだ。

 つまり、土地が有効活用できていない場合(最有効使用ではない場合)、更地のポテンシャルを殺していることになり、減価(建付地減価)が発生する。だから、更地価格と建付地価格を比べると、建付地価格の方が低くなる(土地の使用方法が最有効使用であれば同じ場合もある)。

 だから、図表10-3では更地価格100に対して、建付地価格を90としている。


 次に、建付地価格と借地権価格・底地価格を比較した場合、借地権価格と底地価格を合計した価格(借地権価格+底地価格という意味)は、建付地価格を下回る。

『自用の建物及びその敷地』の場合は処分したいときにいつでも売却できるのに、借地権付建物の所有者(借地権者)は地主の譲渡承諾がないと処分できない。今回の地主(MJ)と土地賃借人エドガーたちの争いを見ればイメージできるのではないかと思う。

 また、底地権者は土地を所有しているものの賃借人が土地を使用しているから、底地権者は土地を使用することができない。

 つまり、借地権も底地権も制限がある権利(借地権者は自由に処分できない。底地権者は土地を使用できない)であるから、完全所有権である建付地価格を下回る。

 以上から、一般的に以下の関係が成立する。


建付地価格 > 借地権価格 + 底地価格


 だから、図表10-3では建付地価格90、借地権価格50、底地価格20としている。


***


 また、借地権価格と底地価格では以下の関係が成立する(特に都心部)。


借地権価格 > 底地価格


 借地権者は土地を半永久的に利用できる(普通借地権の場合)のに対して、底地権者は土地を一度貸すとほぼ半永久的に返ってこない。つまり、底地を所有しても地代収入があるだけで、自分では何も利用できない。だから、自分で土地を使用できる借地権価格の方が底地価格よりも高くなる。


 例を示すと、図表10-4は路線価図(相続税路線価)の一部を掲載したものだ。路線価の金額(千円/㎡)の右にアルファベット(A~G)が掲載されるのだが、アルファベットは借地権割合(借地権価値の比率)を示していて、A:90%、B:80%、C:70%、D:60%・・・G:30%となる。この路線価図に表示されているアルファベットはBとCだから、借地権割合が70%~80%とされている。つまり、借地権価格の方が底地価格よりも高く表示されている。



【図表10-4:路線価図の一部】


挿絵(By みてみん)


※出所:国税庁『財産評価基準書路線価図・評価倍率表』より抜粋して掲載



***


 さて、図表10-3では建付地価格、借地権価値、底地価格が以下の関係にあった。


建付地価格90 > 借地権価格50 + 底地価格20


【問題】

この場合、借地権者エドガーたちが地主(MJ)から底地を買取る価格はいくらだろうか?


【答え】

借地権者の底地価格=建付地価格90-借地権価格50=40


【解説】

図表10-3の底地価格20は借地権者ではない第三者が売買する際の価格だ。第三者が底地を購入してもその土地は使えないから価値は低い。でも、借地権者エドガーたちが底地を購入したら土地の状態は建付地(完全所有権)になるから、現在の価値(借地権価格50)と建付地価格90の差額40を支払うことができる。

ちなみに、借地権者や底地権者が支払うことができる価格を『限定価格』という。



***


 借地を買い漁る不動産業者(本話のMJのような会社)は、20で購入した底地を借地権者に40で売却して利益を稼いでいるのだが、これまで説明した土地の状態による価格変化を利用するのが不動産ビジネスの基本といえる。


※説明が長くなりましたが、次話から本題に入ります。


<続く>

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