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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第2回活動報告:カルテルを潰せ
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根回しをしよう(その1)

(6)根回しをしよう


今回の『カルテル潰し作戦』を実行するためには、外務省、国軍、内務省の協力が必要だ。外務省には銅の仕入先を紹介してもらわないといけないし、国軍には銅の輸送をお願いしないといけない。内務省の管轄しているジャービス鉱業には、銅の販売を依頼しないといけない。

円滑に『カルテル潰し作戦』を進めるためには、関係者に根回しをする必要があるのだ。


まず、俺、ルイーズ、スミスの3人は国王の了解を取り付けるために、王宮を訪問することにした。

王宮に向かう途中、スミスが深刻な顔をしている。


「どうしたの?深刻な顔をして」と俺がスミスに聞いた。


「それは、国王に会うんですから、緊張しますよね」とスミスはさも当然のように答えた。


一般的な感覚としては、そんなものだろうか?ただの偏屈なじじいなんだが。


「別に緊張しなくてもいいよ。例えるなら、『カールじいさん』かな。カールじいさんって、知ってる?」と俺はスミスに聞いた。


「家に風船を付けて飛ばそうとする、老人ですよね?」


「そう。妻に先立たれ、家に一人で暮らす偏屈な爺さんだ。まさにそんな感じだよ」と俺はスミスに言った。


※カールじいさんは、その後、少年ラッセルと出会い冒険を繰り広げます。


「はあ。ところで、急に呼ばれたので、正装に着替える時間がありませんでした。こんな格好で国王に会うのは、失礼に当たらないでしょうか?」実に真面目なスミスらしい質問だ。


「そんなの気にしなくていいよ。だって、俺、Tシャツだし。スミスはポロシャツだから襟あるじゃない。俺よりも正装に近いよ」


「はあ」スミスはまだ不安なようだ。


俺が横を見るとルイーズが履いていたのは、スリッパだった。サンダルでもミュールでもない。室内用のスリッパだ。スミスを勇気付けようと言った。


「ルイーズなんか、スリッパのままだ。靴さえ履いていない」


「私のことは、いいじゃない。私はシャツ着てるから、ダニエルよりも正装に近いと思うよ」とルイーズが言い返してきた。そもそも、女性は正装でもシャツを着る必要はないのだが。


「俺はTシャツだけど、靴は履いてる。高級レストランにも入れるよ。高級レストランは足元を見るからね。でも、ルイーズはスリッパだから、高級レストランに入れないよ」


「私も高級レストランに行くときは、靴履くわよ」とルイーズが言い返してきた。


「じゃあ、王宮は高級レストランよりも下ですか?」とスミスがルイーズに聞いた。


「TPO(時と場所、場合に応じた方法・態度・服装等の使い分け)という意味では、高級レストランの方が上でしょう。役所の敷地外にあるから。

今から行くのは、役所の隅っこにある『王宮』という名前が付いている建物。公務員にとっては、食堂に行くのと変わらない」とルイーズはスミスの質問に答えた。


「そういう認識なんですね」スミスは納得したようだ。


「まあ、服装は気にしなくていいんだよ。それに、スミスは襟付きで靴を履いてるから、もう正装と言っても差し障りないだろう」と俺はスミスに言った。


スミスが本当に納得したか分からないが、TPOを気にする必要が無いことは、実際に国王に会えば分かるだろう。

今日は暑いから、短パンにサンダルで出てくるはずだ。


俺たちが王宮に向かう途中に売店がある。役所の職員が買い物する場所だ。

売店からアイスをくわえた短パンにサンダルの初老の男性が出てきた。

俺に気付いた初老の男性は、俺に話しかけてきた。


「やあ、ダニー。今日も暑いね」


「今日も暑いですね。今日のアイスはガリガリ君ですか?」


国王はガリガリ君が大好きだ。夏場は毎日食べている。

だから本当は、『今日のアイスはガリガリ君ですか?』ではなく『今日もガリガリ君ですか?』と言った方が正確だろう。


「どなたですか?」とスミスが俺に小声で聞いてきた。


「さっきまで話してたじゃない。俺の父親。国王だよ」と俺はスミスに言った。


「わしの話か?どんな内容だ?」ガリガリ君を食べながらジャービス国王は聞いてきた。人一倍、自分の噂話に敏感だ。エゴサーチは毎日欠かさない。


「大した話じゃないんです。一緒に来たスミスが、国王に会うのにこの格好で大丈夫かと心配していまして。国王は気にしないから大丈夫、と話していたのです」と俺は国王に説明した。


「そうか。わしも短パン・サンダルだしな。気にしなくていい。ジャービス王国の夏は暑いから。クール・ビズ(Cool Biz)は勤務環境の改善のためにも重要だ」と国王はスミスに言った。


国王の恰好は、ビジネス・カジュアルというよりも完全にカジュアルだが、本人の認識ではスーツ以外はどれも同じに見えるようだ。


「恐れ入ります」とスミスは国王に言った。何に恐れ入ったのか分からないが、きっと国王を見て緊張しているのだろう。


<続く>

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