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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第9回活動報告:SDGs詐欺師を捕まえろ
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新たな被害者?(その3)

(4)新たな被害者? <続き>


 伝説の財務コンサルタントと呼ばれる男は、なかなかのヤリ手だ。

 ジョーダンは元手ゼロで30億JD近い収益を得ようとしている。


JDジャービス・ドルはジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。


 ジョーダンたちの提案はESGスコアをオフバランスで上げたい上場企業のニーズに刺さったようで、莫大な利益をもたらすリース契約の締結にこぎつけている。

 ちなみに、今回のリース契約は時価10億JDのリース資産から、10年間で40億JDのリース料が発生する。もし、ジョーダンたちがリース資産を自己資金で取得していた場合、投資利回りは38.5%(年率)。自己資金で投資したとしても、十分な利回りだと俺は思う。


 ちなみに、リース資産の購入代金10億JDとリース料総額40億JDを、元本相当額(購入代金)と利息相当額に割振ると図表9-9のようになる。支払リース料総額のうち元本相当額は合計10億JD、利息相当額は合計30億JDとなるのだが、これは利率38.5%(年率)で計算される。



【図表9-9:リース債務の元本・利息相当額】


挿絵(By みてみん)



 リース契約は会計上、金融取引に分類されるのだが、貸しレッサーは借りレッシーに対して金利相当を請求する。

 つまり、会計上は借りレッシーがリース資産の取得代金を貸しレッサーから借入れて購入しているのと同じと考える。銀行が貸付する時に借り手(債務者)に金利を要求するように、リース会社レッサーも借りレッシーに金利を要求する。


 金利とリース料の関係を数値例で示したのが図表9-10だ。

 これは、リース資産の購入代金100、リース期間10年のリース契約において、貸しレッサーが設定した金利に応じてリース料総額が幾らになるかを試算している。計算方法は返済額を固定(元利均等返済)した住宅ローンをイメージしてもらえばいいと思う。


【図表9-10:10年間のリース料総額と利率の関係】


挿絵(By みてみん)



 金利0%の場合は当然ながらリース資産の購入代金と支払リース料総額が一致する。金利10%の場合は購入代金の163%が支払リース料総額となる。

 リース契約に基づくリース料は元利均等返済(元本と利息を足した金額を同額返済する方法)だから、元本均等返済(元本を同額返済する方法)に比べると僅かだが利息相当額が大きくなる。


 話は長くなったが、普通のリース契約で貸し手が要求する金利相当は数パーセントだから、投資利回り38.5%(年率)のリース契約は異常と言える。


***


 俺がミゲルから事前に聞いていた話では、ジョーダンは小口の社債を不特定多数の高齢者に販売しているようだった。だから、俺はIFA3人娘に社債の販売状況を聞くことにした。


「この社債は1個当たりの額面が100万JD、発行総額10億JDだから社債は1,000個あるよね。社債の販売はどこがしているの?」


「社債はジョーダンと関係の深いダブリン証券が販売しています」とエマが言った。


「前の飛ばしスキームもダブリン証券だったけど、今回もダブリン証券か・・・。それにしても、ジョーダンが関わっていたらネガティブチェック(反社チェック)で引っかかるんじゃないの?」


※詳しくは『第8回活動報告:銀行の経営破綻を食い止めろ』をご覧下さい。


「引っかかってこないですね。ジョーダンも息子のマイケルも表面上は一連の契約に関わっていませんから」今度はミアが言った。


「どういうこと?」と俺は確認する。


「社債を発行している会社(MJ01~MJ03)は新設のSPC(特別目的会社)で、代表者はジョーダンやマイケルとは関係のない弁護士Aが就任しています。SPCに組合出資しているのはケイマン籍のファンドで、こっちの代表者もジョーダンやマイケルとは関係のない弁護士Bです」とミアが言う。


「じゃあ、ケイマン籍のファンドの出資者は?」


「それも別のファンドです。代表者は弁護士Cです」


「そうすると、こういうことかな?」


 俺は高級フルーツパーラーの紙ナプキンに図(図表9-11)を書いた。



【図表9-11:ジョーダンの投資スキーム】


挿絵(By みてみん)



「そうですね。ファンドが幾つ入っているか分かりませんけど、そんな感じだと思います」


「これだったら、ジョーダンたちは表に出てこないな・・・」


―― 伝説の財務コンサルタント、さすがだなー


 俺はジョーダンのスキームの全容を理解した。


<続く>

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