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遅れてきた反抗期(その2)

(2)神童のライバルは神童


 ダニエルは小学生から中学1年生の中間試験まで、ほとんど勉強しなくても学年1位をキープしていたようだ。ルイーズから聞いたのだが、「僕は頭がいいから、勉強しなくてもいいんだよねー」とダニエルが自慢していたそうだ。


―― こんな奴に負けるわけにはいかない!


 私は強く心に誓った。


 神童と言われたうちのルイーズを打ち負かした他所よその神童。

 ダニエルはジャービス王国の第4王子だから王族だ。

 実際に賢いのだから「アホ王子」ではないが、私からしたら「クソ王子」でしかない。


 確かに、王族だから身分は私の家よりも遥かに上だ。

 でも、うちの神童ルイーズは生意気なクソ王子ダニエルに負けるはずがないと私は信じていた。


 だから、私とサラは、ルイーズがダニエルに勝てるように全力でサポートした。


 そしたら、


―― クソ王子に勝った!


 うちのルイーズがダニエルを期末試験で倒したのだ。私は妻のサラと「ざまあみろ! ダニエル!」と抱き合って喜んだものだ。


 しかし、これで戦いは終わらなかった。

 ルイーズの努力と私たちの全力サポートが、ダニエルをやる気にさせてしまったのだ。


 ダニエルは今まで勉強しなくてもずっと1位だった。だから、ルイーズに負けたのが人生で初めての敗北だ。本当に悔しかったのだろう。

 期末試験が終わってから、ダニエルはルイーズが通っていた学習塾に来るようになった。

 不覚にも私たちは、うちの神童ルイーズのライバルである他所の神童ダニエルを勉強する気にさせてしまったわけだ。


 そして、2学期の中間試験の結果が出ると、今度はダニエルが学年1位に返り咲いた。

 ルイーズが泣いて悔しがったのを覚えている。正直、あの時はダニエルを後ろから殴ってやろうかと考えた。王族を殴ったら逮捕されるかもしれないから、さすがに私はダニエルを殴らなかったが、それくらい悔しかったという意味だ。


―― 次こそクソ王子に勝つ!


 次はダニエルに勝てるように、私とサラはルイーズを応援した。


 私は、可愛くて賢いルイーズが大好きだった。『目に入れても痛くない』ということわざがあるが、まさにその諺通りだ。


 それに、年の近い娘を持つ同僚から聞く『思春期特有の反抗期』もルイーズにはなかった。だから、私たちの親子関係は何の問題もなかった。

 今になって思い返せば、ルイーズはダニエルを倒すことに夢中になっていて、私や妻のサラに反抗しようと思わなかったのかもしれないのだが。


 その後もルイーズとダニエルのトップ争いは続いた。

 勝率から言うと、ルイーズが勝つのが3回に1回。ダニエルが3回に2回だ。


 ルイーズは「次は(も)勝つから、期待しておいて!」と試験が終わるたびに私たちに宣言していた。実際には勝ったり負けたりだったが、あの頃の我が家はダニエルを倒すことに一丸となっていた。


 ライバル2人の戦いは高校に入っても続いた。

 そんなルイーズとダニエルの関係性が微妙に変わってきたのが、高校生のときだったと思う。


 いや、二人の関係はそのままで、私が二人を見る目が変わったのかもしれない。

 その辺りは、次に話そう。


<続く>

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