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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第8回活動報告:銀行の経営破綻を食い止めろ
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銀行の国有化(その5)

(6)銀行の国有化 <続き>


 俺はリーマン・ショックの時にも大規模な不良債権処理が行われたことを知っている。不良債権処理をすれば国王もリーマン・ショックの雰囲気を味わうことができるだろう。後は、不良債権処理を国王に『派手なこと』として見せればいいだけだ。

 俺は不良債権の処理について思い付いたことがあったので、チャールズに意見を聞いてみた。


「不良債権の買取ファンドもいいと思いますが、サービサー(債権管理回収業者)はどうですか? ジャービス王国には不良債権を買取るサービサーがありません。セレナ銀行だけでなく、他の銀行の不良債権もまとめて処理した方が効率的でしょうから、今回の件を処理する際に、政府系のサービサーを設立してもいいかもしれません」


「サービサーか。他の国ではどうしてるか知ってる?」


「そうですね・・・、債権の管理や回収の法律上の位置付けによって違います。例えば、ジャービス王国の法律と似ている日本では、債権の管理回収に関する行為は弁護士業務に該当します。原債権者(げんさいけんしゃ:元々の債権者)である銀行は当然債務者に対して督促することはできますが、債権を買取った譲受人は督促等の行為をすることができません」


※ここではジャービス王国の債権管理回収の法制度が日本と同じとしています。


「そうだな。弁護士法違反になるから督促できないな」


「でも、弁護士に委託しないと買取債権の回収ができないとすると、不良債権の管理回収業務が回りません。だから、弁護士法の特例として『債権管理回収業に関する特別措置法』を定めて、銀行などから債権を買取る場合に限って管理回収行為ができる債権管理回収業者を認めています」


「『銀行から買取る場合』ということは、サービサーが管理回収できる債権は全部じゃないんだな?」とチャールズは俺に質問した。


「そうです、全部じゃないです。サービサーが管理回収できる債権は特定金銭債権だけです。特定金銭債権以外の債権(一般事業会社の売掛債権など。非特定金銭債権(非特金:ひとっきん))の管理回収業は従来通り弁護士業務です」


※特定金銭債権とは銀行や貸金業者等が債権者であった債権です。


「そうか。不良債権処理をするときに一般事業会社から債権を買取る必要はない。ジャービス王国でサービサーを作る場合も、管理回収できる債権の範囲は特定金銭債権だけで良そうだな」


「非特金債権まで加えると弁護士法との調整が面倒になりそうです。特定金銭債権だけでいいと思います」


「不良債権比率が高い銀行が売却先を確保するのに困っていると聞いたことがある。確かに、この機会に国営サービサーを作るのも一つの手だな」


「サービサー法を作るかどうかは内務省で話し合って決めて下さい」


「分かったよ」


「いずれにしても、銀行が不良債権を売却すると売却損が計上されるので債務超過に陥ります。債務超過を回避するためには資本増強が必要です」


「セレナ銀行の場合は、いくら出資すればいい?」


「ジャービス国債と米国債の含み損はそのうち回復するから無視すると、不良債権の売却損だけ出資の対象に含めればいいでしょう。その前提だと約4,000億JDですね」


JDジャービス・ドルはジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。


「4,000億JDか。2兆JD出資するよりはマシだけど、大きいな・・・」チャールズはため息交じりに言った。


「ええ。2兆JDではないけど、それでも大きいですよ」


「銀行の救済のために4,000億JDも出したくないな・・・」


「セレナ銀行が潰れたら、もっと問題が大きくなりますよ」


「だよな・・・」チャールズは明らかに乗り気ではない。


「最終的にジャービス政府が出資するかどうかは家族会議で決定します。チャールズ兄さんの責任ではないですよ」俺は気休めを言った。


「救済のためにジャービス政府がセレナ銀行に出資するとしても、民間銀行の議決権を持つのはできれば避けたい。政府系金融機関にするつもりはないし、直ぐに返済してもらうつもりだから」


「じゃあ、議決権がない優先株式で出資したらいいですよ」と俺はチャールズに言った。


 俺は政府が出資したら普通株式でも優先株式でも変わらないと思っている。

 でも、関係者としては優先株式の方が出資しやすいような気がする。


―― 気分の問題だろうな・・・


 そう俺は思った。



<続く>

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