表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第7回活動報告:通貨危機を回避しろ
195/294

世論調査(その4)

(5)世論調査 <続き>


「10年後の為替レートが幾らになるか分からなかったら、米ドルの国債に投資できないよね?」俺はミゲルに言った。


「確かに・・・。博打ばくちというか、得するか損するか分からないから、怖いですね」


「だから、10年後の為替レートを固定するために為替予約をするんだ。為替予約に利用する為替レートがフォワードレート」


「10年後の為替レートを今決めてしまう、という意味ですか?」


「そうだよ。じゃあ、問題。10年後の為替レート(フォワードレート)は幾らになると思う?」と俺はミゲルに聞いた。


「1米ドル=140JDよりも低くてもいいけど、1米ドル=100JDよりは高くないと損しますね。じゃあ、1米ドル=130JDですか?」ミゲルは当てずっぽうで答えた。


JDジャービス・ドルはジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円としています。


「ミゲルくん、おしい! 正解は・・・1米ドル=127JDでしたー」と俺は言った。


「1米ドル=130JDだったら、ほぼ正解じゃないですか!」ミゲルは不満そうだ。


「まあまあ。ちなみに、さっきの図(図表7-8)の数値を使って、こうやって計算すればいいんだ」


 俺はそう言ってホワイトボードに計算式(図表7-9)を書いた。


【図表7-9:フォワードレートの計算式】

挿絵(By みてみん)


「今の状態で10年後の為替予約を140JD/米ドルで依頼しても、どこも受けてくれない。だって、為替予約をすると相手が損してしまうから。だから、139 JD/米ドル、138JD/米ドル・・・とフォワードレートを下げていって、127JD/米ドル付近で取引が成立する」


「フォワードレートとは、要は、得も損もしない為替レートということですね」


「そうだね。ちなみに、フォワードレートは『為替予約レート』と言うときもある」


「へー。ところで、素朴な疑問なんですけど・・・」とミゲルが言った。


「どうかした?」


「10年後に取引するフォワードレートが127JD/米ドルですよね。これは、10年後に為替レートが127JD/米ドルになるってことですか?」とミゲルが俺に質問した。


「いや、全然関係ないよ。フォワードレートは『〇か月後(〇年後)にジャービス・ドルと米ドルを交換する予約取引の際に利用する為替レート』。スポットレートと対象通貨の金利差から計算されるだけで、実際に10年後に127JD/米ドルになっているかどうかは全く関係ない」


「なんか、難しいですね」


「慣れるまで難しいかもね。ところで、今のフォワードレートが127JD/米ドルだったけど、1年前のフォワードレートは計算できる?」と俺はミゲルに聞いた。


「1年前は、スポットレートが1米ドル=105JD、JD金利が3%、米ドル金利が1%だから・・・」


 そう言うと、ミゲルは計算し始めた。


【図表7-10:1年前のフォワードレート】

挿絵(By みてみん)




「127 JD/米ドルですか?」とミゲルが言った。


「ミゲルくん、正解!」


 ミゲルは正解して喜んでいる。しばらくすると、ミゲルは何かに気付いたようだ。


「部長、今のフォワードレートと1年前のフォワードレートが同じですけど?」


「小数点以下は違うけど、そうだね。為替レート(スポットレート)や金利は変化したけど、フォワードレートは同じなんだ」


「どういうことですか?」


「正確な理由は分からない。多分だけど、為替市場が考えている長期的な為替レートは変わっていない、ということだと思う。為替レートは、短期では金利差に影響されて大きく動くけど、長期的な水準は変わっていない。ということだと思う」と俺は答えた。


<続く>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ