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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第7回活動報告:通貨危機を回避しろ
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名探偵を採用しよう!(その2)

(1)名探偵を採用しよう! <続き>


 俺は話を続けた。


「そうだ。効率性だ。名探偵が推理していれば事件は瞬殺で解決したはず」


「そうかもね」とルイーズが言った。


「みんなはナンプレって知ってるかな?」


「ナンプレですか?」ミゲルが言った。


「ナンプレは、3×3のグループに区切られた 9×9の正方形の枠内に1〜9までの数字を入れるパズルゲームだ。このゲームはいろんなテクニックがあって、テクニックを駆使してどれだけ効率的にパズルを解くことができるかが重要なんだ」


※ナンプレ(数独)は、3×3のグループに区切られた 9×9の正方形の枠内に1〜9までの数字を入れるペンシルパズルの一つである。同様のパズルそのものは1980年代から世界各地のパズル愛好家には知られていた。

出所:Wikipedia


「それで?」とルイーズが言った。


「確かに、ナンプレは非効率的な方法でも解ける。1〜9までの数字を全ての枠に試していって、総当たりすれば解けなくはない。でも、時間がもの凄く掛かる。超難問を総当たりで解こうとすると、1~2時間掛かってしまう」


「へー」とルイーズが興味なさそうに言った。


「何を言いたいかというと、もっと効率的に解く方法があるにも関わらず、内部調査部は総当たりでナンプレを解こうとしているんだ!」


「だから名探偵を採用したいと?」


「そうだよ。名探偵がいれば、総当たりしなくても事件を解決することができる」


 俺はメンバーを見た。

 半分くらいは俺が言いたいことを理解しているようだ。

 半分は俺の意図をくみ取ってくれていない。


「名探偵の定義は?」ルイーズが言った。


「推理力が優れている人物かな」と俺は言った。


「じゃあ、その人物の推理力が優れているかどうかを、どうやって判断するの?」


「それは・・・、推理力を判断するテストをしてだな・・・」


「だーかーらー。そんなテストを作れるんだったら、問題作成者が名探偵でしょ?」


 ルイーズは痛いところを突いてきた。


 名探偵かどうかを判断できるレベルに達しているのであれば、そいつは名探偵と同等の能力を有している。名探偵を雇う必要がない。その通りだ。


 俺は完全に論破されたような気がした。でも、ここで負ける訳にはいかない。

 俺がルイーズに対する反論を考えていたら、ルイーズが追い打ちを掛けてきた。


「例えばさー、『名探偵募集!』って総務省のウェブサイトで募集するでしょ。総務省の標準給与体系だと安いから、名探偵は来ないよね?」


「来ないね」


「仮に高い報酬を提示できたとしよう。応募してくる中には高額報酬に惹かれたクズみたいな奴が混ざってる」


「そうだね」


「私たちは、応募者がクズかクズじゃないかを判断できないから、クズを採用する可能性がそれなりに高い」


「そうだね。クズは口が上手いからな」


「クズが全然使えなかったらどうする? クビにする?」


「そのクズは採用されたら公務員だ。公務員はクビにできないね」と俺は静かに答えた。


「どうしても名探偵を採用したかったら、名探偵を引き当てるまでクズを採用し続けないといけない。そして、クズを一度雇ったら解雇できない。つまり、総務省にクズが溜まっていく」


「クズ溜まりができるね」


「クズの面倒は誰が見るの?」


「俺? 嫌だな・・・」


「そう思うでしょ?ダニーが言った『名探偵を採用しよう』は『総務省でクズの面倒をみよう』と同じなの」


 俺はルイーズの理詰めに負けそうになっている。

 何とか反撃しなければならない。


「じゃあ、業務効率化はどうするの?」と俺は言った。


 俺の質問に対してルイーズは質問で返した。


「そもそも論だけど、名探偵はこの世に存在すると思う?」


「え?」


 いまそれを議論するのか?


「私の説を言うと、名探偵はこの世に存在しないと思う」

 ルイーズは名探偵不在説を唱えた。


 名探偵の存在を疑うルイーズ。

 名探偵の存在を疑わない俺。

 まさか、そこで争うとは俺は思っていなかった。


「なぜ名探偵はいないって思うの?」と俺はルイーズに聞いた。


「もしジャービス王国に名探偵がいたら、私たちも名前くらい聞いたことがあるでしょ。誰か聞いたことある?」ルイーズは内部調査部のメンバーを見た。


「聞いたことないなー」とロイ。


「ないですね」とミゲル。


 他のメンバーも頷いている。

 誰も名探偵の名前を聞いたことがないらしい・・・


 思い返せば、俺も聞いたことがない。

 でも、ルイーズの名探偵不在説に負ける訳にはいかない。


「確かに素人は名探偵の名前を知らないけど、玄人は知ってるんじゃないかな?」


 俺は適当なことを言った。ルイーズに論破されるのが屈辱的だったから。


「そう思うなら、玄人に聞いてみたらいいじゃない。チャールズ(第2王子、内務大臣)にベテラン警察官を紹介してもらえばいい」とルイーズが言った。


「そう来たか・・・。分かったよ。ベテラン警察官に『名探偵はいるのか?』を確認しよう」


 こうして俺たちのミッションは『名探偵を探せ』にすり替わった。


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