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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第6回活動報告:ハゲタカファンドと戦え
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ネール・マテリアル(その5)

(5)ネール・マテリアル <続き>



俺の話を聞いたアナンヤは「幾つか教えてくれますか?」と言った。

MBOをするかどうかを判断するためには、整理が必要なのだろう。


「LBOは銀行から借入することが前提のようです。当社がMBOをする時にも借入をした方がいいのですか?」とアナンヤは言った。


「LBOで借入をする理由は、買収資金の調達、投資利回りを引き上げることの2つです」


「買収資金の調達、投資利回りを引き上げる・・・」

アナンヤはメモを取っている。社内で検討する時に必要なのだろう。


「まず、ネール・マテリアルの買収資金が手元にあって借入の必要がなければ、銀行から借入する必要はありません。ネール・マテリアルの時価総額は10億JD、アナンヤは20%保有しているから、80%の株式を取得する場合は8億JD必要です。実際にTOB(株式公開買付け)をする場合には、株価にプレミアム(上乗せ)を加えた金額を支払うことが多いので、8億JDよりも多くなるでしょうけど」


JDジャービス・ドルはジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円に設定しています。


「そうですね。プレミアムは30%くらいと考えておけばいいですか?」


「プレミアムはケースバイケースですね。30%の場合もあれば、100%の場合もあります。事例として多くはありませんが、マイナスの場合もありますよ」


「マイナス? それだとプレミアムとは言いませんよね?」とアナンヤは言った。


「ええ、プレミアムがマイナスの場合は、ディスカウントTOBと言います」


「ディスカウントTOB・・・」


そこはメモしなくていいと思ったのだが、俺は話を続けた。


「TOBプレミアムが30%の場合、ネール・マテリアルの80%の株式を取得するために10.4億JD(8億JD×1.3)の買収資金が必要です」


「私に10億JDの預金があれば銀行から借入する必要がない、ということですね?」


「そうですね」


「うーん。さすがに今すぐに10億JD出すのは難しいですね。やっぱり、借入は必要かなー」


「そうでしょうね。お金がある人は不動産などの資産として保有しているので、現金で10億JDを持っている人はあまりいません」


「それで、2点目の『投資利回りを引き上げる』とはどういうことですか?」とアナンヤは聞いてきた。


「数値例で説明した方が分かり易いと思うので、これを見て下さい」


俺はそう言って、ホワイトボードに図(図表6-14)を書いた。


【図表6-14:レバレッジによる投資利回り】


挿絵(By みてみん)



「まず、A社の買収資金を100%出資で賄った場合レバレッジなし、投資利回りが10%とします。次に、A社の買収資金の50%を利率5%の借入金で賄った場合レバレッジあり、A社の配当可能額(図表6-14のC)は7.5に減ります。これは借入金利息2.5(50×5%:図表6-14のB)が利益から控除されているためです」


アナンヤは理解しているように見えるから、俺は話を続けた。


「レバレッジがない場合の投資利回りは10%ですが、レバレッジがある場合の投資利回りは7.5÷50だから15%です。つまり、借入金を50%利用することで、投資利回りが10%から15%に上がるんです。これが、LBOで借入を利用する理由です」と俺は言った。


「へー」


「レバレッジは『お金がないから、銀行からお金を借りる』のとは別の話です。ファンドが会社を買収する時、100%買収できる資金があったとしても借入を利用します。投資利回りを高める必要があるからです」


「借金は少ない方が良いと思っていたけど、逆だったのね」


「まあ、状況によって借入はいい場合も悪い場合もあるでしょう。借入金を増やすと利回りは上がるけど、借入金があまりに多いと返済できなくなりますよね」


「そうですね。MBOの仕組みは理解できたと思います。確かに、ネール・マテリアルの場合は、株価を3倍にするよりもMBOで株式を買取った方が効果的ですね」


「そう思います。まあ、どう対応するかは御社で検討して下さい」


俺たちはアナンヤに状況を聞けたから、礼を言ってネール・マテリアルを後にした。


後は、アナンヤがMBOをするかどうかを決めるだけだ・・・

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