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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第6回活動報告:ハゲタカファンドと戦え
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ネール・マテリアル(その3)

(5)ネール・マテリアル <続き>


アナンヤへのヒアリング中であるが、俺はミゲルの質問に答えることにした。アナンヤがネール・マテリアルの状況を正しく理解しているのか、俺は疑問に思っているからだ。

ミゲルに説明すれば、間接的にアナンヤが疑問に思っていることが分かるはずだ。


「仮に、ネール・マテリアルの株式100%を10億JD でTOB(株式公開買付け)して買収したとする。一方、ネール・マテリアルは現金預金30億JDを保有しているから、株式取得代金を上回る現金預金が手に入る。ネール・マテリアルを買収した後に配当金として30億JD回収すればいい(図表6-12)。つまり、30億JD の現金を10億JDで買うのと同じだよね」

そういうと俺は簡単な図を書いた。


JDジャービス・ドルはジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円に設定しています。


【図表6-12:EVマイナスの会社の買収】


挿絵(By みてみん)



「じゃあ、手元資金が10億JDあるファンドであれば、どこでもネール・マテリアルを買収したいですよね?」とミゲルが言った。


「そうだね。もっと言うと、手元資金10億JDがなくても買収できる。例えば、銀行から10億JD借りてきてネール・マテリアルを買収する。買収後にネール・マテリアルが保有している現金預金30億JDのうち、10億JDを使って銀行に返済すればいい。そうすれば手許資金ゼロで買収可能だ」と俺は説明した。


「手元資金がなくても買収できる。そうであれば、ダウラファンドでなくてもネール・マテリアルを買収したいですね。うちもi6を作って買収しますか?」とミゲルが冗談で言った。


「ちょっと待ってください。それじゃあ、株価が上がってダウラファンドが株式を売却しても、他のファンドがネール・マテリアルを狙ってくる可能性がありますよね?」とアナンヤは言った。


「もちろんです。EVがマイナスとはそういう状況です。誰でも御社を狙ってきます。もしかしたら、うちも予算達成に困ったら御社を買収するかもしれません。手っ取り早く利益を出せますから」


「部長、それは言い過ぎですよ」とホセが言った。


「まあ、うちが買収するのは冗談として・・・。要は、株価を少なくともEVがプラスになるまで上げないと、手元資金ゼロで買収できます。どのファンドも御社を狙ってくるでしょう。EVゼロは、株式時価総額でいうと30億JDです。今のネール・マテリアルの時価総額は10億JDですから、市場株価を3倍に上げるイメージですね」と俺は言った。


※EV=0とした場合、株式時価総額=EV+余剰資金+非事業性資産等-有利子負債=0+30億JD+0-0=30億JDと計算します。



「株価を3倍に・・・」とアナンヤは小さく言って考えている。


多分、『今まで株価が上がらなかったのに、急に3倍にしろと言われても・・・』と思っているのだろう。


「少しくらいならともかく、株価を3倍にする方法は思い付きません」とアナンヤは言った。


「そうでしょうね」


ホセはアナンヤと20年来の付き合いだから、何とかしてあげたいと思っているようだ。

ホセは助け船を出すことにした。


「部長だったら、どうします?株価を3倍に上げる方法はありますか?」とホセは俺に聞いてきた。


「俺?そうだなー。現金預金がかなりあるから、配当を増額するか、自社株買いをするかな」と俺は言った。


「それで株価が3倍になります?」とホセは俺に聞いてきた。


「うーん、どうだろう? 株価は上がると思うよ。だけど、株価が3倍になるかは分からない。市場がどう反応するかは読めないからね」と俺は答えた。


「キャッシュ・アウトが発生するのに、株価が3倍にならないかもしれない。この方法はちょっとリスキーですね」


「そうだね。ところで、最初から疑問だったんだけど・・・。アナンヤに確認しておきたいことがあるんだ。一つ質問していいですか?」と俺はアナンヤに言った。


「なんでしょう?」


「ネール・マテリアルは上場維持する必要がありますか?」と俺はアナンヤに質問した。


「え? どういうことですか?」


「ネール・マテリアルは上場しているから買収されるリスクにさらされている。逆に言えば、上場していなければ買収されるリスクはありませんよね?」


「それはそうですけど・・・」


アナンヤは納得いかない反応だ。


<続く>

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