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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第5回活動報告:仮想通貨の詐欺集団を捕まえろ
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会社に提案しにいこう(その5)

(12)会社に提案しにいこう <続き>


「じゃあ、暗号資産はジャービットが発行しなくても、いいのではないでしょうか?」とホセが聞いてきた。


「それは違います。政府が保有する会社が暗号資産を発行する必要があります。例えば、ジャービス国内のコンビニやスーパーマーケットで個人が買い物する時に現金を使うことはありますが、金額が大きくなると預金で決済します。多額の現金取引は不便ですから。すなわち、取引金額が大きい企業間取引や納税、社会保険料の支払いは預金で決済します」


「はあ」


「企業間取引において預金でジャービス・ドルを決済する場合、そのジャービス・ドルはどこにありますか?」


「銀行でしょうか?」


「そうです。普通は民間銀行の口座にジャービス・ドルがあります。ジャービス・ドルを発行しているのはジャービス中央銀行ですが、通貨を発行した後は、国内企業や国民の資金ジャービス・ドルは民間銀行に滞留します。一般企業や個人はジャービス中央銀行の口座は利用できないからです」


「今まで考えたことはありませんでしたが、そう言われれば、そうですね。ジャービス中央銀行の預金口座を保有している会社なんて、聞いたことがありません。もちろん、ジャービットやジャービット・エクスチェンジの資金も、民間銀行を利用しています」とホセは言った。


ダニエルの話は長いのと要点が分かりにくい。

ホセは少し飽きてきたように見えるのは気のせいだろうか?


ホセたちは眠気を抑えながら、ダニエルの話を必死に聞こうとしている。

ダニエルは話を続けた。


「つまり、ジャービス中央銀行がジャービス・ドルを発行しても、流通するジャービス・ドルのほとんどが政府系金融機関以外にあるので、政府はジャービス・ドルを使えません」


「ジャービス中央銀行の銀行口座にジャービス・ドルがないからですね」


「一方、民間金融機関は、企業や国民から預金としてジャービス・ドルを集めています。民間金融機関は、預金者から集めたジャービス・ドルを使って企業や個人に融資したり、債券投資したりして利益を稼いでいます。こんな感じです」


そう言ってダニエルは図(図表5-9)を描いた。


【図表5-9:銀行の預金による資金調達】


挿絵(By みてみん)


ホセたちは分かったような、分からないような反応だ。

ダニエルの説明がまどろっこしいからだ。


「つまり、政府も民間銀行のように預金で資金調達したいのです。政府が使えるジャービス・ドルはジャービス中央銀行にあるものだけなので、マネーストックのうち政府が使用できる金額が非常に少ない。そして、マネーストックを増やすのは避けたい」


「はあ・・・」


「現状で政府が資金調達する際には、企業や国民に対してジャービス国債を発行しないといけません。でも、国債金利は普通預金金利よりも高いですよね?」


「ジャービス中央銀行を民間企業や国民が利用できるように法改正する、という話ですか?」

なかなか話が見えてこないので、ホセが思わず言った。


「そういうことではありません。我々がジャービットを取得した後、ジャービットはジャービス中央銀行に預金口座を開設します。その後、ジャービットが暗号資産を発行する時の払込口座をジャービス中央銀行に指定します。そうすれば、暗号資産の発行によって払い込まれた資金は政府が使える資金となります。つまり、ジャービットで暗号資産を発行すれば、民間銀行にある民間の資金を、ジャービス中央銀行の預金口座へ資金異動することができるのです(図表5-10)」


【図表5-10:ジャービット・コインの発行による貨幣の異動】


挿絵(By みてみん)



「へー。そういうことですか」


ホセたちは、やっとダニエルの言っていることが分かったようだ。


「そうすると、ジャービットが発行しているジャービット・コインのように市場に連動するタイプではなく、ジャービス・ドルに連動するステーブルコイン(その価格が法定通貨などと連動するよう設計されている暗号資産)を発行することになりますね」とホセは言った。


「そこは決定していませんが、多分、そうなるでしょう。ジャービス・ドルに連動しないと、決済手段として使いにくいでしょうから」


「事業計画は何となく分かったと思います。当社が確認したい事項は以上です。他に不明点はありません。」とホセは言った。


ダニエルが私の方をチラッと見てきた。今日の説明はこれで十分だ。


私はホセたちに「結論が出たら連絡して欲しい」と伝えて、総務省に戻った。


さて、私たちの提案に対して、ホセたちはどういう回答をしてくるだろうか?



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