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第4王子は中途半端だから探偵することにした  作者: kkkkk
第5回活動報告:仮想通貨の詐欺集団を捕まえろ
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暗号資産交換業者(その4)

(5) 暗号資産交換業者 <続き>


ホセは俺の質問に対して考えを述べた。


「他の暗号資産は、適正な取引数量以上に暗号資産を発行しているように思うのです」


「適正な取引数量ですか?」


「例えば、資金を集めたい詐欺グループは必要以上に暗号資産を発行します。詐欺師でなくてもシステムコストを賄うため、人件費に充てるためなどを理由に、適正量を超えて暗号資産の発行を繰り返す場合があります」


「資金繰りの関係ですか?」


「そうですね。暗号資産の発行数量が増えすぎると、市場で飽和状態になります。つまり、需給バランスが崩れて価格が下落するんです」


「需給バランスですね」


「当社のランニングコストは他社よりも低いので、ジャービット・コインの適正量を超えて発行する必要がありません。ジャービット・コインの発行数量が多くないため、需給バランスが崩れにくいのです」


供給量が少ないから、価格は高くなりやすい。

これは経済学の一般論だから、理屈としては間違っていない。

でも、ジャービット・コインの供給量は少ないから、価格操作し易いはずだ。


やはり価格操作しているのだろうか?

俺はもう少し突っ込んで聞いてみることにした。


「ジャービット・コインは発行数量が少なくて、取引数量も少ないのは分かりました。もし、顧客が売却したいと言った場合、ジャービット・コインの価格が急落しませんか?」


「もし、投資家が株式市場のような取引所で売買すれば、大暴落するかもしれません。ただ、暗号資産は株式市場のようなオークション方式を採用していません。ジャービット・コインの場合は、投資家の暗号資産の売買を、当社がマーケットメイクしています」


※オークション方式は投資家が売り注文と買い注文をそれぞれ出して、売り注文と買い注文がマッチした場合に取引が成立する売買方式です(図表5-3-2の上側)。

一方、マーケットメイク方式は会社が投資家の間に入って売買取引を行います。会社が『売り気配』と『買い気配』を投資家に提示して、投資家がその価格に合意すると取引が成立します(図表5-3-2の下側)。『売り気配』と『買い気配』の差額が当社の利益となる。


【図表5-3-2:オークション方式とマーケットメイク方式】



挿絵(By みてみん)


「暗号資産はマーケットメイク方式ですね」


「当社はその時点の『売り気配』と『買い気配』はホームページに表示しています。でも、顧客は見ていないでしょう。当社の顧客はオンライン取引をしていませんから。だから、顧客が当社に電話した段階で、当社が『売り気配』と『買い気配』を顧客に伝えます」


「電話注文ですね」


「顧客に当社の買い気配を伝えて、顧客がその価格で問題ない場合、当社がジャービット・コインを買取ります。その後、当社はジャービット・コインを買いたい投資家を探し、売却先が見つけて売却します」


「売却先が見つからない場合は、御社がジャービット・コインを保有するのですか?」と俺はホセに聞いた。


「もちろん、売却先が見つかるまでジャービット・コインを保有します。実際には少し価格を下げれば買い手は見つかるので1~2日あれば十分です」


「長期保有はしないんですね」


「ええ。ジャービット・コインに関して言うと、売りたい人よりも買いたい人の方が多いので、買い手を見つける作業は難しくありません。この売買方法は、前職のカルタゴ証券と同じ方法です」


「そうですか。ジャービット・コインの価格が下がりにくい理由は分かりました。ジャービット・コインの価格が上がる理由は何でしょうか?」と俺はさっき聞いた逆のことを質問した。

話好きだから、答えてくれるだろう。


「暗号資産は、買い手が売り手よりも多ければ価格が上がります。ジャービット・コインは、他の暗号資産よりも発行量が少ないため、売り手よりも買い手の方が多く、価格は自然に上がっていきます」


「自然に・・・」


「ええ。過度な営業ノルマやインセンティブを設定すると、カルタゴ証券と同じことになりかねません。だから、当社には営業ノルマがありません。ジャービット・コインの価格が上がっても役職員の給与や賞与に影響しないので、意図的に価格を操作して吊り上げるインセンティブがないのです」


俺は何となくホセの言いたいことを理解した。


ホセの言っていることは、本当かもしれないし、嘘かもしれない。

どっちだろう?


ホセの話を聞いて謎が深まっただけだった。


俺たちは情報を聞きたいという名目で訪問しているため、これ以上は突っ込んで聞けそうにない。今日のところはこれくらいにして、日を改めて訪問することにした。


こうして、俺たちはジャービット・エクスチェンジを後にした。


混乱しただけの俺たちは、内部調査部に戻る。


はあ、これからどうしよう・・・


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