男爵令嬢レジーナ 後編
翌朝。気怠い体を押して、レジーナは学園に登校した。
朝早くから待っていたのか、校門前で出迎えてくれたラグナに曖昧な笑みを返し、校舎に向かう。
いくつかの共同行事を除き、基本的に男女でクラスは分けられている。だから、彼の顔を見ずにいられたのは有難かった。
気もそぞろのままに授業を流し、昼を告げる鐘の音と共にレジーナは立ち上がる。
向かうのはいつものラグナとの待ち合わせ場所――では、ない。
白亜の廊下を渡り、その扉の前へと立つ。
深呼吸を繰り返したのち、意を決してノックをすると、すぐに返事が返って来た。
「失礼します。三学年のレジーナ・メレナリスです」
「ああ、君が噂の――」
中に入ると、含みのある言葉と共に不躾な視線がレジーナに集中する。
「皆さん、お控えを。ご用事があるのは私にかしら? メレナリスさん」
「……はい。昼食前に申し訳ありません。少し、お時間を頂けますか――」
豪奢な調度品に彩られた部屋の中でも、一際目立つ奥の椅子。その席に座る、銀髪の少女を見据えレジーナは頭を下げた。
「――レーベンガルド生徒会長」
◇ ◇ ◇
「ここでいいでしょう。内密な話をする時に使う部屋ですから、誰かに聞かれる心配もありませんよ」
案内された一室は、あまりにも簡素な白い部屋だった。壁に一枚の風景画が飾られているだけで、後はソファーとテーブル
ぐらいしか見当たらない。
「申し出を受け入れて頂き感謝します、生徒会長」
「ふふ。そんなに緊張なさらなくても大丈夫。肩書も身分もこの学園に居る限りにおいては関係ありませんよ。さ、冷めないうちにどうぞ」
微笑みながら紅茶を勧めてくるが、とても喉を潤す気にはなれない。
「ありがとうございます。私が今日突然お邪魔しましたのは、聞き入れて頂きたいお話があって――」
「殿下のことでしょう?」
セラスフィアは涼しい顔でカップを口に運びつつ、さらりと核心を付いてくる。
「私では殿下の婚約者に相応しくないから、別れろと。そう仰りに来たのかしら?」
「違います。むしろ、それは私の方です」
腹芸では勝てそうにない。一縷の望みを掛けて『祝福』を注ごうと目に力を込めるが、瞬間、その視線が扇で遮られた。
「ふふふ怖い怖い、貴女の瞳は恐ろしいのですもの。思わず虜になってしまいそうな深い色をしていますよ」
「……知って、いるんですね。私のことを」
「何をかしら。殿下を誘惑して王妃の座を狙っているということ? それともその『祝福』のこと?」
穏やかな笑みを浮かべる侯爵令嬢の瞳はしかし、笑っているようには見えない。
「あはは、敵いませんね! んじゃ、単刀直入に言いますねぇ。確かに全ては私の企みですよ。私一人が愚かな欲望を抱いただけのこと」
わざと甘ったるい舌足らずの声を作り、レジーナはくすくすと笑い出す。
「あの王子様、意外と頭が良いんですねぇ。もう、私の策は空回りしてばかりですよぉ。殿下に『祝福』を用いたものの、効果もいま一つ。心の底から私を愛するようには出来ませんでした。きっと、貴女が居たからなのでしょうね。いやぁ、失敗しましたよぉ」
肩を竦め、意識して媚びる目つきを作る。平民時代に培った賜物だ。
「ね、私は貴重な『祝福』持ち。それも『魅了』の力を持ってるんですぅ。えへへ、外交とか、そういうのに役立つと思いませんかぁ? 貴女の手下になりますので、ここは一旦、逃がしてくれません? ちょっとやり過ぎちゃって王子さまとか、他の方にも目を付けられてそうなんですよぉ。私ぃ、まだ死にたくないんですぅ。ねね、役に立ちますから、ほら!」
内心で冷や汗を掻きながら、レジーナは微笑んだ。
この話を聞き入れてくれるならよし。最悪、許諾したと見せかけて始末されても構わない。
真実を話して懇願しても無駄だろう。合理的な思考と容赦の無い手管で史上初の女性生徒会長に就いたという女傑。
今日までレジーナとラグナの逢瀬を見逃してきたのは他でもないこの侯爵令嬢だ。
この少女は敵側。そう考えて行動する他ない。
「それにぃ、私だって知っているんですよぉ。レーベンガルド家は宰相様と組んで、馬鹿王子様を陥れようとしたんでしょぉ? それってぇ、晒されちゃあ、まずいですよねぇ?」
セラスフィアの眉がぴくりと動く。
「私が死んだらぁ、全てが公に知られちゃうように細工してありましてぇ。だから、助けてくださいよぉ。ね、その方がお役に立ちますしぃ」
断れば道連れだ。全てを喚き散らしながら暴露してやる。
例え侯爵家の権力でそれが握り潰されても、人の口に戸は立てられない。
生まれた疑念はラグナへの同情と侯爵家や宰相家の不信を招くはず。
(上手く行くかはわからない。けど、バカな私に考え付くのはこれくらい。あの人の為に出来るのは、これくらい……!)
「ねぇ、セラスフィア様ぁ。聞いてるんですかぁ――」
「――貴女は、殿下を愛しているのね」
驚いたわ、とセラスフィアが楽しそうに笑う。先ほどまでの丁寧な物腰が消え失せ、その声色に冷たさが乗り始めた。
「あの人も大したものだわ。前例があったとはいえ、貴女みたいな子にそんな真似までさせるなんてね」
「な、何を言ってるんですかぁ? 王子様は、別に……」
「貴女、嘘が下手ね。そんなに殿下を助けたいの? 可愛らしい子、健気な子」
テーブルの上のカップを指でつついて揺らし、侯爵令嬢は嗤う。
「そんな浅知恵を、私達が想定していなかったと思っているのかしら? あら駄目よ、そんな顔をしては。ついつい意地悪したくなってしまうじゃない」
手にした扇で再び顔を覆い隠し、セラスフィアは何でも無さげにこう言った。
「殿下は王太子の座を失うわ。その身はそうね、気が触れた王子として生涯にわたって幽閉――」
「――っ!!」
「……あらまあ、流石は平民上がりね。こんな不作法を平気でして。まあ、彼に相応しいといえば相応しいのかしら」
策も何もかも、頭から吹き飛んだ。気が付けば身を乗り出し、レジーナのその手はセラスフィアの胸ぐらを掴みあげていた。
「ふざけるな……! あの人に何かしたら、お前ら全員許さない!!」
「自分のしたことを棚に上げて良く囀ること。……ふふ、本当に変わったのね、貴女」
目をぱちくりとさせながら、それでも余裕を保つ侯爵令嬢。得体の知れなさに慄きつつも、それでもレジーナが声を張り上げようと息を吸い込んだ、その時。
「レジーナ、レジーナ! おい、ここに居るんだろ!?」
ドアが激しく叩かれ、扉の向こうから切羽詰まったような声が響く。
「あら、貴女の王子様のお迎えね。残念だけど時間切れよ、メレナリスさん」
何処までも手のひらの上だとそう言うように。微笑みと共に扇で扉の方を指され、レジーナは自身が敗北したことを悟った。
◇ ◇ ◇
セラスフィアを後に残し、いつもの待ち合わせ場所に無言で向かう。
焦ったように進むラグナに手を引かれ、レジーナは俯きながら歩き続けた。
「レジーナ、すまない。君を不安にさせたことを心から謝罪する」
レパシスの木の下。そこに着くなり、ラグナはレジーナを抱き寄せ詫びた。
背に回された手が震えているのが分かる。
その感触に罪悪感が疼き出し、レジーナもまた喘ぐように口を開いた。
――――全てを話せば、そうすればきっと殿下も気付いてくださる。何をするのが最善か、きっと……
「……私は、貴方に想われるような女じゃないんです。聞いて下さい、ラグナ様。私は、貴方を――」
「――良い、何も言わないでくれ。分かってるから。全部、分かってるから……」
驚いて突き放そうとするも、ラグナの腕はレジーナを抱き取めたまま、離そうとしない。離しては、くれなかった。
心臓が早鐘を打つようにどくどくとうるさい。
今、彼は何と言った? 分かっているって、何処までを――
「……今は信じてくれとしか言えないけれど、君が恐れているようなことにはならないと約束する。だから、だから馬鹿な事は考えないでくれ……っ!」
壊れ物に触れるようにその指先がレジーナの体をなぞり、肩を掴む。
「君を幸せにしたいんだ……それだけが、私の望みなんだ……」
「ラグナ様……」
レジーナの大好きな碧の瞳、それが悲しみに揺れるのが見えた。
やはりこの人は、噂通りの馬鹿王子だ。そう確信する。平民上がりの男爵令嬢にここまで入れ込むなんて。
(ほんと、本当に……)
――――どうしようもなく、ばかな、ひと。
「――わかりました。私は、あなたを信じます」
泣き出しそうに顔を歪めたラグナを、それ以上見ていたくなくて。レジーナは微笑んだ。
「どこまでも、どこまでも着いていきます。貴方がそれを望むなら、私は何処へでも……」
そっと頬を両手で包み、ラグナと目を合わせる。
本当は、先ほど侯爵令嬢にそうしたように、演技をしてでも彼を突き放すのが最善だと分かっていた。そうしなければならないのに、どこまでも自己中心的な自分に吐き気すら覚える。
けれど、この選択が愚かだと思っても、この掌の中にある愛しさを捨てられない。どうしても、それだけは出来なかった。
(――――ごめんね、お母さん。私も同じ道を選んじゃうみたい)
心の何処かで母を蔑んでいた。愛に生き、愛に死んだ愚かな女。
けれど自分もまたその血を引いているのだと実感し、レジーナは何だか笑ってしまった。
子供を孕んでいないだけが救いか。そう思うとおかしくてたまらなかった。
セラスフィアの説得に失敗した場合は自刃すら考えていた。
けれど、それをすればこの人は自分の後を追うだろうという奇妙な確信があった。
「愛しています、ラグナ様」
「私もだ……レジーナ」
第三者から見れば、自分達は愛という名の劣情に浮かされた、愚かな恋人たちに過ぎないのだろう。十代特有の感情に酔った哀れな道化師たち。
それでも、例え誰に笑われようとも構わない。そう、少女は決意する。
触れ合った唇の温かさに涙を流しつつ、レジーナは瞳を閉じた。
◇ ◇ ◇
残された日々を愛おしむように、レジーナとラグナは想いを育み続けた。
未来への不安を振り払うようにして手を繋ぎ、心を接いで一日一日を噛みしめながら過ごしていく。
学年末の剣技大会。ラグナは今まで以上に奮戦し、がむしゃらになりながら喰らい付くようにして準決勝まで駒を進めた。
優勝候補に惜しくも敗れはしたものの、その姿に生徒達からは惜しみない拍手が送られた。
それを見ていたレジーナの胸にひどく誇らしい気持ちが沸いて来る。
(そうよ、私の王子様は凄いんだから)
悔しげに肩を落とすラグナの頬にキスを贈り、レジーナはその背を撫でた。
破滅の日は一歩一歩と迫って来る。それでも、この人の傍に居たい。ずっと、ずっと支えていきたい。
それが叶わぬ夢だとしても、祈り願うことは止められなかった。
やがて迎えた卒業パーティー。
この日ばかりは王を初めとした国政を担う重鎮たちが一堂に介し、この国の未来を担う若者たちを祝福する。
特に今年は王太子の卒園とあっては力の入れようは例年の比ではなかった。豪華な料理に調度品。華やかな音楽がそれらに色を添える。
ラグナにエスコートされながら会場に入ったレジーナを、微かなどよめきが迎える。当然だろう、婚約者である侯爵令嬢を放ってどこの馬の骨とも知れぬ男爵家の娘をパートナーに選ぶなど、正気の沙汰では無かった。ラグナの素行を嘲るような声がそこかしこから聞こえてくる。
その大元であろう、生徒の両親たちの姿もあちらこちらに見えた。殆どが、現役の貴族当主たちだ。皆、戸惑ったように顔を顰めているものばかり。
それらの中に、父である男爵の姿を見つけ、レジーナは苦笑した。周りの声が耳に入らないのか、感極まり涙を流している。
(何処までも愚かなお父様。でも、そんな貴方をお母さんは最期まで愛したのね。結局、私は貴方を好きにはなれなかったけれど、殿下に会わせてくれたのは感謝するわ)
全てが露見すれば、彼もまた貴族人生が終わる。
破滅に付き合わせるのを自業自得だと思いつつも、せめて命だけは助けられないかとは思う。
そっと、セラスフィアの方を伺うと、彼女はエスコート相手に別の男性を選んだらしい。まだ幼い顔立ちの少年と仲睦まじげに寄り添い、杯を煽っている。
(あの方は確か、ラグナ様の弟君の第二王子、アルフレッド様……?)
兄とは違い、炎と煌めくような赤い髪の少年だ。体格は一回り小さくはあるものの、目を奪われるような美しさを横顔に湛えていた。
先王に生き写したる、優秀な第二王子。彼の立太子を望む声も多いと聞く。
その仕草は確かに洗練されていて、彼を見る令嬢たちの唇からため息が零れ落ちて行くのが見えた。
しかし、涼やかに微笑むその姿に、何故かレジーナの背筋が冷たくざわついた。
「――これより、国王陛下の御言葉を頂戴します」
ファンファーレと共に響いたその言葉にハッとする。
壇上の豪奢な紅いカーテンが開き、壮年の男性が姿を現した。
近年では貴族の隆盛により王権も弱まったと聞いていた通り、何処かその表情には陰りが見える。
いや、もしかしたら婚約者以外の女性をエスコートした息子の醜態に心を痛めているのかもしれない。
誰もが声を潜め、王の姿を注視しながら傾聴の姿勢を取る。
波が引くように皆が静まるのを見据え、国王が口を開こうとした、その時だった。
「――お待ちください、父上」
ぎょっとしたように視線が集中する。王の言葉を遮るなど、事と次第によっては重い罰が待っている。
しかし、声を上げた人物を見て誰もがその『例外』に気付き、どよめき始めた。
「ラグナ、さま……?」
戸惑ったのはレジーナも同じだ。傍らに居たラグナがレジーナの手を引き、そのまま歩き始めたのだ。
彼の視線のその先に居るのは、銀髪の少女。どくん、と。レジーナの心臓が脈打った。
「もう、黙っている事は出来ません。約束を果たさねば。私は、本当に愛する人が誰なのか、気付いてしまったのだから」
その言葉に、ラグナが何をするつもりなのか、レジーナは悟る。
破滅はあると覚悟していた。けれど、いざその瞬間が来ると動揺を抑えられない。
『婚約破棄』。かつて思い描いた可能性が、ここに現実のものとなろうとしていた。
――――どうして、こうなってしまったんだろう。私は何を間違えてしまったのだろう
レジーナは震える手を必死に伸ばす。愛する人に、共に人生を歩きたいと初めて思った掛け替えのない男性に向けて。
けれど、その指先は真紅のマントに触れる事さえ出来ず、空しく宙を切るばかり。
(駄目……駄目……!)
動悸が激しく、思うように声が出ない。今、止めなきゃいけないのに。
「――セラスフィア・レーベンガルド侯爵令嬢に告げる」
耐え切れずに膝を付き、喘ぐように見上げるレジーナに背を向けて、愛しき『彼』は凛とした声で言い放つ。
(――――駄目、その先を言っては……駄目ッ!)
「君との婚約を、今宵この場で破棄させてもらう」
周囲からどよめく声。気でも違われたか、そんな悲鳴さえ聞こえてくる。
「あぁ……」
ようやく、絞り出すような声が、レジーナの口から洩れた。
その言葉が届いたか、ラグナがこちらに視線を向けた。
美しい碧眼が光に煌めき、レジーナの姿を移し込む。その瞳はどこまでも優しい輝きを放っていた。
出会ったあの日と、まるで変わらない。少女が大好きなその眼差しのままに。
「君との婚約を、この場で破棄させてもらう」
セラスフィアへと向き直り、ラグナはその言葉を告げた。
周囲からどよめく声。気でも違われたか、そんな悲鳴さえ聞こえてくる。
――――どうして、こうなってしまったのだろう?
「――言い直しは出来ませんよ、殿下。その御言葉、取り消すおつもりはございませんか?」
「勿論だとも、今の宣言を翻すつもりは無い。私はこの娘を――レジーナ・メレナリス男爵令嬢を伴侶に選ぶ。私は真実の愛に目覚めたのだ」
跪いたレジーナの手を取り、ラグナはその甲に口付ける。
王太子の言葉を受け、嘲笑するように唇を歪める侯爵令嬢。
王の許可も無く、政治的にも多大な力を持つ侯爵家の娘を袖にして、たかが男爵令嬢を妻にと望む。
それは、許されるはずもない失態。醜聞、等という生易しい言葉では現せられない愚かな選択。
けれど、レジーナは震えながらもラグナの手を握って立ち上がり、その傍に寄り添う。
彼を信じると、何処までも着いていくと約束をした。
例えその先に待っているのが何であれ、交わした言葉は裏切らない。そう、少女は決めたのだ。
「――正気か、ラグナ。よもやお前が、そのような事を言い出すとは」
震えるような声で、国王がよろめきながら壇上を降り、息子の方へと歩き出す。
「はい、父上。私はレジーナを妻に選びます。誰が何と言おうとも、必ず」
父王の言葉に答えるラグナの声は澄み渡るように静かで淀みなく、不思議な程に落ち着いていた。
「嘆かわしい! 陛下、これは問題ですぞ!」
「そうとも、我が娘の――セラスフィアの立場はどうなります。この華やかな席での恥辱を、どう償ってくれるのですかな?」
罵りながら進み出て来た二人の壮年男性。彼らが宰相とレーベンガルド侯爵であると、レジーナは悟った。
憤怒に彩られたその顔には、僅かな愉悦が浮かんでいる。この二人が謀の首謀であることはもう間違いは無かった。
他の誰もが口を挟めない。王太子とレジーナを中心に緊迫した空気が漂い、一触即発の雰囲気を醸し出す。
と、人波を掻き分けるようにしてレジーナの父――メレナリス男爵が文字通り転がり出てきた。
「こ、侯爵! なにを言われるか! 貴方は、相応しい女性が居れば婚約者の座を譲っても構わないと――」
「これは異な事を。私はセラスフィア以上に相応しい令嬢が居れば、と言ったのだ。平民出身の男爵令嬢如きが国母の座に相応しいと胸を張って言えるのかね? それに私は知っているのだぞ、男爵。卑劣な手を使って王子を魅了した娘など、論外だよ。唾棄すべき犯罪者ではないか」
侯爵の言葉に、男爵は顔を蒼くして震え出す。
「わ、私は……イセリナの分まで、レジーナに幸せな人生を、それだけを信じて……」
「娼婦の娘が青い血に混じる? それも王族に? どうやら気が触れたようだな、メレナリス男爵」
「貴様……ッ!」
激昂して侯爵へと飛びかかろうとした男爵を、鋭い声が制した。
「やめい! 我が前で醜い争いは許さぬ!」
「へ、陛下……!」
男爵は慌てて跪き、王に頭を垂れる。
「ど、どうかお許しを! これは何かの間違いなのです! 殿下と我が娘は純粋に想い合っているだけで! そう、宰相殿にも養女の話を頂いておるのです! だから――」
「――そんな話は聞いておりませんな。失礼ですが、卿は誰かの甘言に乗せられたのでは?」
「な……っ!?」
男爵の必死の弁解を、しかし涼しい顔で宰相が否定する。
その一瞬、傍らに居るレーベンガルド侯爵の表情に、苦々しい物が走ったように見えたのは、レジーナの気のせいだろうか?
「いけませんな、そのような大それたことを公言しては。すぐに調べさせましょう。この誤解を解かねばなりませんからな」
宰相の言葉に、男爵の顔が見る間に青ざめていく。どうやら、ようやく自分が騙されたと悟ったらしい。
「陛下、陛下! 違う、違うのです! レジーナは何も関係が無い! 全て、責は私にあります! どうか、話をお聞きください! 場を騒がした処断は、私の命だけで――」
「――その必要はありませんよ、メレナリス男爵」
混沌とした場を制するように、ラグナが声をあげた。
レジーナの肩を抱きながら周囲に目を配らせつつ、やがてその瞳が、かつての婚約者の方へと定まった。
「セラスフィア、それにアルフレッド。約束を果たそう。私はこの場で王太子の座を弟へ、アルフレッド第二王子へ譲渡する!」
「――なっ!?」
悲鳴を挙げたのはレジーナだ。自分が王妃になれなくなったから、ではない。
この決断を下したラグナの処遇を想像したのだ。
同じ事を考えたのだろう、侯爵と宰相の口元にいやらしい笑みが浮かんだ。
――しかし。
「……確かに、見せて貰いましたよ。まぁ、愚かな兄上にしては上出来ですね。父上、前にお話した通りです。セラスフィアは僕の妃として政に携わってもらいます。異論はありますまい?」
「アルフレッド、お前も本気であったか……」
深いため息を押し出すように、国王が肩を落とす。
その様子に、レジーナは勿論、宰相たちさえも戸惑い目を白黒させている。
落ち着き払っているのは、ラグナとアルフレッド。そして――
「お父様、愚かな事をなさいましたね。まさか、ラグナ殿下を策に嵌め、王太子の座から引き摺り下ろそうなどと」
我が侯爵家の恥。そう言い切ったセラスフィアの瞳は実の父に向けるとは思えない程、氷のように冷え切っていた。
「セ、セラスフィア? 何を言っているのだ? 黙っていればお前が王妃になるというのに、私が何故そのような真似を――」
「証拠は全て揃えてありますよ。自信過剰なのが貴方の悪い癖ですね。宰相家の奥方――テンダリア夫人との蜜事は、そんなにも甘く魅力的でしたか?」
「――なっ!?」
狼狽える実父へ向ける令嬢の眼差しはあくまで冷たく、見る間に鋭さを増していく。
「母も私も弟達も、出世の道具としか見做さず、自分の欲望のままに貴族の特権を振るう。それもまあ、ある程度までなら許せますが、度が過ぎましたね。醜聞をちらつかされた程度でこのような謀に手を貸すとは、情けない」
侯爵は呆然としたまま、口をパクパクと開いている。レジーナとて同じ気持ちだ。何が起こっているというのだろう。
彼女は、ラグナの敵では無かったのか?
「――どうしました、そんなに驚いて。当てが外れましたかな、侯爵?」
アルフレッド王子がくすりと笑いながらそう告げ、父王の方を向き、頷く。
国王陛下は重苦しい表情で天を仰ぎ、ねめつけたかと思うと、ゆっくりと片腕を振った。
それを合図に、まるで待ち構えていたかのように警備の兵が歩み出て、侯爵と宰相を拘束する。
「は、離せッ! 私を誰だと思っておる! 陛下、これは誤解です! 全て、宰相の謀事にありますれば……ええい、離せと言っておろうに! 雑兵如きが、レーベンガルドの、栄えある侯爵家の当主たる私に、このような無礼は許さぬぞ!」
「お父様、残念ながら貴方はその座に相応しくないと、アルフレッド殿下が判断されましたの。せめて最後くらい、大貴族の元当主として見苦しくない御姿を見せてくださいませ」
「セ、セラスフィア! そうか、そうだったのだな! あのような婚約破棄を許したのは、お前が、裏切――」
「……侯爵」
父と娘の会話に割り込むようにして、アルフレッドが口を挟む。
「僕は怒っているのですよ? 余計な工作を押し付けようとした挙句、あの時、あんな血生臭い真似をして、セラスフィアを悲しませた。そこの娘が何度死のうと構いませんが、我が女神の心を傷つけた罪は重い……」
アルフレッドの言葉に、セラスフィアがため息を吐きながら、頬を赤くする。
その表情は少しげんなりとして見えるのは、レジーナの気のせいだろうか。
「――その苛烈、やはり貴方こそが王に相応しい!」
項垂れて大人しくしている侯爵とは違い、宰相は兵たちの腕を振りほどき、第二王子の前に這いずり出た。
その目は興奮したように血走り、口端から泡が零れ出している。
「先代王、アーラス陛下に生き写しだ! ハハハハハ、私は間違っていなかった! 伴侶と定めた者への、一途なまでの狂愛! 武力と智慧! 何もかもがこの国の王の器! ハハハ、ハハハハハハハ!」
「ブルム、お前はやはり父上のことを忘れられぬか」
宰相――ブルム・テンダリア公爵へと国王は疲れたような目を向ける。
武王アーラス。レジーナも歴史の授業で習った人物だ。周辺国家との争いが絶えなかった時代に、その知恵と武勇を持って頭角を現し、乱世を勝ち抜いた。そう、伝説的な英雄王。
ブルム宰相はギラついた眼光を湛えたまま、アルフレッド王子に縋り付いた。
「陛下! どうか私めをもう一度お傍に! 今度こそ、残りの生涯の全てを捧げますぞ!」
狂えるほどの盲信。人は、これ程までに誰かに執着できるものなのか。その様にレジーナが慄いていると、その肩をラグナがそっと抱いた。
「――ブルム。お前の事を俺は嫌いじゃ無かったよ。お祖父さまの偉大さに目が眩んだことも、今なら何となく理解できる。圧倒的な光を前にして、恋い焦がれる想いを止めることは出来ないよな」
悲しげに呟くラグナとは対照的に、続くアルフレッドの声は冷え切っていた。
「愚かだな、宰相。謀が失敗した時の保険かな? 王太子暗殺用に、強硬派を暗殺者として潜り込ませようとしたことも分かっているよ。そっちは兄上が捕まえたようだけど、僕の『祝福』が全てを明らかにさせた。重罪も重罪、これはもう誰も庇いきれないね」
「へ、陛下――」
「僕はアルフレッドだ、ブルム。アーラス先王ではない。それを履き違えた者の忠心など要らないよ」
叫び声を上げる宰相を警備兵が押さえ込み、そのまま侯爵と共に連行されていく。
それを見送るアルフレッドが、少し『祝福』が効きすぎたか、等と呟くのが聞こえた。どうやら、第二王子もレジーナと同じ異能を保持していたようだ。
あまりにも上手く運んだ断罪劇。まさか、それには彼の力が関わっていた……?
一瞬の内に目まぐるしく変化した情勢に、周囲の者達は混乱し、ざわめきがさざ波の如く会場に満ちて行く。
「静まれい! こと、こうなっては仕方あるまい。侯爵家の娘よりも真実の愛とやらを選んだ者に、国を統べる資格は無し! よって、ラグナ第一王子から王太子の座を剥奪! 第二王子であるアルフレッドを新たな次代の王として擁立する!」
「へ、陛下! お、畏れながらそれは――」
このままでは、ラグナの結末は変わらない。
決死の覚悟で名乗り出ようとしたレジーナを、逞しい腕が押し止めた。
「大丈夫だよ、レジーナ。君を幸せにすると、そう約束したろう?」
優しい笑みを浮かべたラグナに応えるかのように、国王が宣言する。
「そしてブルム・テンダリアから、公爵の地位を剥奪。空白となったテンダリア公爵領の領主はラグナに一任する。今後はお前が妻だと選んだ女性と共に、臣下としてアルフレッド王太子の治世を支えよ。これは王命である!」
「はっ! しかと、承りましてございます!」
おぉぉぉ、と今まででひときわ大きなどよめきが走る。婚約破棄の醜聞騒ぎかと思えば、まさかの王太子の交代劇。
それも、本人等が納得した形での穏やかな譲渡。
王国の永い歴史上でもあり得ない光景に、興奮の声が上がった。レジーナの視界の端で、父――メレナリス男爵がヘナヘナと膝を付くのが見えた。
「え、つ、つまり……?」
「……貴方は殿下――『公爵』の妻として認められたということよ。まさかの逆転ね、おめでとう公爵夫人」
レジーナが振り向くと、穏やかな笑みを浮かべたセラスフィアが立っていた。
その傍らには、引っ付くようにしてアルフレッドが寄り添っている。
「黙っていてごめんなさいね。何処からお父様達に情報が漏れるかわからなかったし、何より事情を話せば未来が変わる。私の『祝福』でそれが分かったと、彼にはそう告げたの。怒らないであげてちょうだ――もう、離れてください暑苦しい!」
満面の笑みを浮かべて引っ付き虫になっている『王太子』を引っぺがし、セラスフィアはこちらに歩み寄って来た。
「あ、あなたも『祝福』を……?」
「『祝福』持ち同士はそれぞれの力が反発して、妙な作用を起こす事があるの。だから、私達3人は誰もこの事を貴女に話せなかった」
――自分は『予知』の『祝福』を持っている。そう、セラスフィアはレジーナの耳元で囁いた。
パズルのピースが嵌りこむような感覚が跳ねる。
瞬間、レジーナは理解した。誰がこの図を描いたのか。この逆転劇のシナリオを提供したのか、を。
「貴女は幸せになれるわ、きっとね。あれだけどうしようもなかったあの人が、こんなに頑張れたのだから、間違いない」
「それも、『祝福』で見えたの……?」
ううん、と首を振り。セラスフィアは年頃の少女らしい、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「――運命を変えた貴方達だから。そうだと、信じているだけよ」
◇ ◇ ◇
「そ、そろそろ機嫌を直してくれないかな……?」
公爵領に向かう馬車に揺られながら、レジーナは頬を膨らませていた。
あの卒業パーティーの騒動から1か月。王太子の譲渡式だ公爵領の引き継ぎだ、で混乱し、ラグナと会えたのは領地に向かう、まさにその日の朝であった。
「知らない、ラグナ様のバカ」
ぷいっとそっぽを向く。いくら仕方がないとはいえ、あれだけ気を揉み、悲劇的な結末さえ覚悟していたのだ。少しくらいむくれても許されるはず。
自分の所業を大いに棚に上げ、レジーナは腕を組んだ。
「レジーナぁ……」
困ったように眉根を寄せるラグナを横目で見て、堪え切れずプッと吹き出してしまう。
「あ、おい!」
「もう、可愛らしいんだから、ラグナ様は」
こいつ、と頭を撫でられ、レジーナはくすぐったくなり目を細めた。
「――夢みたいです。まさか、こんな風に貴方と結ばれるなんて」
あれから間もなく裁定は下り、侯爵と宰相はこれまでの功績を考慮され、辛うじて死罪は免れた。
二人とも足の腱を切られた上で罪人の塔へと永久に幽閉処置となり、そこで生涯を過ごす事になる。
侯爵家は娘の告発により正義が為されたと王太子が広報し、セラスフィアの妹が他領から婿を得る事で存続となった。無論、セラスフィアも王太子妃として、近々大々的な婚姻の儀を行う予定だ。
どうも、二人は前々から想い合っていたのだと、ラグナがこっそり教えてくれた。
通りで、レジーナとラグナの逢瀬を咎めなかったわけだと納得する。
メレナリス男爵は罪を償うと言ってきかなかったが、彼もまた被害者であると王命が下った。
彼は楽隠居の形で引退し、領地は親戚筋の青年が継ぐことになった。
レジーナに座して詫びたその姿は酷く小さく儚くて、頼りなさげに見えたが、娘を送り出す時のその顔は、どこか晴れ晴れとしていたのを思い出す。
彼が幼少の頃から従っているという執事にくれぐれも馬鹿な事を考えないように言い含めておいた。
公爵領が落ち着いたら、父もこちらに引き取ろうと考えている。
ラグナも賛成してくれた。その時には、母の墓も一緒に移してもらうつもりだ。
最期まで父の迎えを待ち望んでいた母。きっと、それが何よりの供養になるのではないかと、レジーナは何となくそう思っていた。
「夢、か。今でも私はそう思うよ。ベッドから起きるたびにこれが現実なのかと、頬をつねる毎日さ」
「まぁ、ラグナ様ったら。意外と怖がりなんですね」
「そうだね、私は臆病ものさ。今も昔も、ね」
流れる景色を見つめながら、ラグナが微笑む。何処か切なそうに見えた横顔に、レジーナは唇を寄せた。
「じゃあ、私が毎日起こしてあげますね。これは夢じゃないよって、貴方に教えて差し上げますから!」
不意を突かれたように目を瞬かせたあと、ラグナは嬉しそうにはにかんだ。
「ああ、ありがとう。レジーナ」
勿論、不安はある。ほんの数年前までただの平民だった自分が、公爵家の夫人となるのだ。
補佐の人間は大勢いるし、気負わずゆっくり歩んでいこうとラグナは言ってくれた。
けれど、レジーナは自身を選んでくれた彼の為にも、立派にお務めを果たしていきたいと思う。
猫を被るのは得意だし、いざという時の『祝福』もある。
ラグナを支え、生涯を共にする。その覚悟を、レジーナは密やかな決意として胸に抱いた。
それから、実に十日を掛けて公爵家の屋敷に到着した時、ちょうど日差しが天に差し込み、穏やかな光がレジーナ達の行く先を照らしていた。
ラグナの手を借りて馬車から降りると、レジーナは呆然と目を見開いた。
公爵家の屋敷の立派さももちろんだが、驚いたのはその景色だった。
『――おかあさん、私ね。おひめさまになりたい。まっしろなおしろにすんで、おにわには まっかなバラがさいてるの!』
「お城じゃないけど、どうかな。ここが一番、君の夢に沿っていると思ったんだけど……」
照れたようなラグナの声に、レジーナはゆっくりと振り向く。
「な、んで? はなしたこと、ない、のに……」
目の前に広がっていたのは、かつて夢見た光景。白亜の大きなお屋敷に、門扉から入り口までの道を彩る薔薇の園。
何もかもが、幼い日に憧れたレジーナの願いそのものだった。
涙で歪んだ視界の中で、ラグナが胸を張るのが見えた。
「言ったろう? 私は――」
赤みが差した頬の上、碧の瞳が悪戯っぽく輝いた。
「――君を、幸せにしたいんだ。」
「あ……」
荒れ狂うような愛しさが込み上げ、嵐となってレジーナの胸を掻き乱した。
耐え切れないほどの衝動に堪え切れずに指を伸ばし――
「――っ!?」
その手で強く、ラグナの背中を叩いた。
「見直したわ、アンタもやれば出来るじゃないの! 頑張ったわね!」
ラグナの目が、これ以上ない程に見開かれた。
同時に、ハッとしてレジーナは手をひっこめる。
今、自身が行った事が信じられなくて、思わずまじまじと手のひらを見つめてしまう。
(な、なに、今の!? どどどうして、あんなことを言っちゃったのわたし!?)
それも、よりにもよってアンタ呼ばわりとは何だ、何なのだ。
感極まり過ぎて、自分はどうかしてしまったのだろうか。
不敬極まりない行為に怖気づき、レジーナの口からひぇ、という声が漏れる。
「ごごご、ごめんなさいっ! なんでか、言わなくちゃいけないって、そう思って……!」
「レ、ジーナ……」
ラグナの手が、レジーナの胸元に触れた。
何かを確かめるように二度、三度とそこをなぞったかと思うと、ぶつかるようにしてレジーナの体を掻き抱いた。
「う、うぁぁぁぁぁ……!」
彼はレジーナの胸へと縋り付き、子供のように泣きじゃくりはじめた。
戸惑いながらその姿を眺めていると、ぽつり、ぽつりと水滴が零れ落ち、その背を濡らし始めた。
雨か、と思い空を見上げるとそこは快晴そのもの。
「あ、れ……?」
そこで、頬を伝う暖かいものに気付いた。
流れ落ちた水の出所は、レジーナの瞳。どうしてか、涙がぽろぽろと零れて止まらなかった。
「ラグ、ナさま……ラグナさまぁ……」
「レジーナ、レジーナ……!」
きつく腕を回して抱きしめ合いながら、レジーナ達は涙を流す。
陽光の暖かな日差しが降り注ぎ、その体を優しく包む。
やがて、家人が気付いて様子を伺いにくるその時まで。
二人は互いの体温を確かめ合うように、ただひたすらに泣き続けたのだった。
テンダリア公爵領改め、ルスバーグ公爵領は、新しい領主の元、その後も大いに栄えた。
学生時代よりも幾分と砕けた話し方になった公爵とその妻は仲睦まじく、二男一女に恵まれた。
やがて長男が成人を迎え、業務の引継ぎを見届けるようにして、公爵は三十代の若さでこの世を去る。
公爵夫人は夫の夭折後も息子を支えて領地を守り、穏やかな老後を迎えたのち、家族に見守られながら天に召された。二人の遺体は夫人の生前の望み通りに同じ墓に葬られ、縁者たちはその手入れを常に欠かさなかった。
伝説的な恋愛成就を成した二人の仲の良さは他家でも評判であり、身分差を越えて『真の愛』に結ばれた夫婦として、それにあやかろうと墓所を詣でる人々は後を絶たなかったという。
その墓標の裏手に植えられたレパシスの木は、今日も静かに葉を揺らす。
麗らかな春の日差しの中、花びらが舞い擦れあうその音は、いつしか『ルスバーグの囁き』と呼ばれ、時代を超え語り継がれていった。
――――最期まで幸せに添い遂げた公爵夫妻が空で呟く、恋の語らいのようだと、そういうように。
お読みいただき、ありがとうございました!
明日、王太子ラグナ視点のお話を投稿いたしますので、良ければそちらもご覧くださいませ。