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男爵令嬢レジーナ  前編


――――どうして、こうなってしまったんだろう。

――――私は、何を間違えてしまったのだろう。


 ぐるぐるとぐるぐると、思考が巡り定まらない。

 レジーナ・メレナリス男爵令嬢は今、絶望の最中にいた。

 

 少女の薄暗い心中とは真逆の、ここは煌びやかなパーティー会場。

 学園の卒業式を祝うその場は、例年以上に人の数を増し、豪華豪勢な料理や装飾品がその盛況さに彩りを添えていた。

 それも当然だ。本日は、一国の王太子が卒園する記念すべき日。腹の内はどうあれ、誰も彼もが笑顔を浮かべて祝福の声を上げていた。


なのに、それなのに。


 レジーナは震える手を必死に伸ばす。

 愛する人に、共に人生を歩きたいと初めて思った掛け替えのない男性に向けて。 

 けれど、その指先は真紅のマントに触れる事さえ出来ず、空しく宙を切るばかり。


(駄目……駄目……!)


 動悸が激しく、思うように声が出ない。今、止めなきゃいけないのに。


「――セラスフィア・レーベンガルド侯爵令嬢に告げる」


 耐え切れずに膝を付き、喘ぐように見上げるレジーナに背を向けて、愛しき『彼』は凛とした声で言い放つ。


――――駄目、その先を言っては……駄目ッ!


「君との婚約を、今宵この場で破棄させてもらう」


 周囲からどよめく声。気でも違われたか、そんな悲鳴さえ聞こえてくる。


「あぁ……」


 ようやく、絞り出すような声が、レジーナの口から洩れた。

 その言葉が届いたか、『彼』――ラグナ・エルドナーク王太子がこちらに振り向き、視線を向けた。

 美しい碧眼が光に煌めき、レジーナの姿を移し込む。その瞳はどこまでも優しい輝きを放っていた。

 出会ったあの日と、まるで変わらない。少女が大好きなその眼差しのままに。



 ――――どうして、こうなってしまったのだろう?



「――言い直しは出来ませんよ、殿下。その御言葉、取り消すおつもりはございませんか?」

「勿論だとも、今の宣言を翻すつもりは無い。私はこの娘を――レジーナ・メレナリス男爵令嬢を伴侶に選ぶ。私は真実の愛に目覚めたのだ」


 王太子の言葉を受け、嘲笑するように唇を歪める侯爵令嬢。

 王の許可も無く、政治的にも多大な力を持つ侯爵家の娘を袖にして、たかが男爵令嬢を妻にと望む。

 それは、許されるはずもない失態。醜聞、等という生易しい言葉では現せられない愚かな選択。



 ――――なんで、こんな事になってしまったのだろう?



 愛する人が破滅してゆくその光景を、レジーナは呆然と眺めていた。

 


◇ ◇ ◇



 『――おかあさん、私ね。おひめさまになりたい。まっしろなおしろにすんで、おにわには まっかなバラがさいてるの!』


 『あらあら、貴方は今でも私の可愛いお姫様よ。だから、いつかきっと王子様が迎えに来てくださるわ。きっと、ね……』

 


 子供の頃の無邪気な夢。絵本の中の綺麗な姫君に憧れたのも、今は昔。

 そんな物になれる筈が無いと少女が悟ったのは、いつ頃であったか。


 レジーナは平民の、それも娼婦の娘である。母の死後、父親を名乗る貴族男性に引き取られ、お決まりのように我が子とされて、それまでとは一転した裕福な暮らしが出来るようになった。

 良くある話。さして珍しくも無い貴族の落胤、それが拾い上げられただけのこと。周囲からはそう受け取られ、物笑いの種として社交界で話題の提供となった。そう、傍から見ればそれだけの話だ。

 

 しかし、そこに大それた企みが有る事を知る者は居ない。



「レジーナ、君は王太子殿下を虜にするんだ。その器量と『祝福』があれば、なんだって出来るさ! 君は国母となり、何不自由なく一生幸せに暮らせるんだよ」



 人の良さだけが取り柄の、無能な男爵。レジーナの父を名乗るその男はそう言って微笑んだ。

 恐らく、本心からそう述べているのだろう。それがどれ程に罪深く、愚かな事かを考えもしない。



「真実の愛だよ、レジーナ。殿下との間には、きっとそれが芽生えるとも。君の母親と私がそうであったようにね」



 ――――笑わせる。ならば何故、お前は私の母を捨てたのか。

 


 貴族ではないものの、裕福な商家のお嬢さまであった母が娼婦にまで身を落とし、遂には破滅して死んだのは、誰のせいだと思っている。その言葉が喉元まで出かけたが、レジーナはあえて堪えて微笑んだ。


「わかりました、お父様。お言葉の通りにいたします」


 こんな大それた計画を誰に吹き込まれたかは知らない。けれど、その方が都合が良い。

 どうせ、あのままでは野垂れ死んでいただろう人生だ。意趣返しには丁度良かった。


 娼婦の娘が王太子を誘惑してその妻に――王妃にまでのし上がる。

 痛快だ、実に素晴らしい。レジーナは思わず手を叩きたくなった。

 確かに、それも可能だろうという自負もあった。若き日の母に似たという、愛らしい美貌。

 そして、自身が持つ異能の力……『祝福』があれば、難しい話ではない。


 この国の王太子の話は聞いている。稀代の馬鹿王子、弟に才を吸われた無能。そんな噂があちらこちらから集まって来る。多少の色眼鏡はあるだろうが、他者からの概ねの評価は一致していた。

 火の無い所に煙は立たず。程度の差はあれ、愚か者である事は間違いないのだろう。

 そうレジーナは判断した。



 そうして迎えた学園入学式。

 レジーナは同級生たちから一人離れると、園内で一番目立つレパシスの木に登り、その枝に腰掛けた。

 王太子の通りかかる時間は、さる筋から入手している。第一印象をなるべく深く、刻み込むこと。

 それにより少女の『力』は更なる効果を得るのだ。


 背に映る淡い緑の葉と花は、レジーナのストロベリーブロンドの髪に良く映えた。

 少女はにんまりと笑いながら、ただその時を待つ。


(さぁ、噂の馬鹿王子はどんな奴なのかしら。ひどく横暴で怒鳴り散らすから、王太子の癖に御付も傍に控えてないとか言うけど、そんなのあり得るの?)


 益体もないことを、つらつらと考える。知らず知らずの内に、手が震えるのを感じた。

 それに気付かないふりをして、レジーナは思考に没頭する。

 やがて一陣の風が吹き、花びらが散って空に舞う。

 それにつられるようにレジーナが視線を動かすと、花霞の向こう側から、こちらに歩み寄ってくる人影が見えた。


(――来た!)


 さぁ、ここからが勝負と、レジーナが笑みを深くした、その時だった。



「――やぁ、そんな所で何をしているんだい?」



 予想外の穏やかな問い掛けに、レジーナは思わず声の主をまじまじと眺めてしまう。

 

 陽の光に照らされて輝く金の髪と整った顔立ち。しかし、何より見惚れたのはその瞳だ。

 海原を思わせる美しい碧眼は、優しく細められ、真っ直ぐにレジーナを見つめていた。


「あれ、どうしたの? 気分でも悪いのかな」

「あ、え、と。その、木の上に登ったら、学園の中が良く見えるんじゃないかなぁ、と思いましてぇ」


 心配そうな声に慌てて、舌ったらずな甘えた声を言いつくろう。


「そう、それなら良かった――っと」

「え……えっ!?」


 見る間に、するすると木を登り、彼――ラグナ王太子はレジーナのすぐ傍に腰掛けてしまう。

 あまりに自然なその動作に、開いた口が塞がらない。


「うん、前から思っていたけど、これは太くて丈夫だね。二人が乗ってもほら、びくともしない」

「え、あ、はい? そ、そうですね……?」


 どんな横暴王子を籠絡するのか、と身構えていただけに、落差が酷い。

 こんな風にニコニコ微笑まれていたら、毒気が何処かに抜けてしまった。


(頭が足りない方にボンクラなのかしら? 粗暴って感じじゃないよね)


 勇猛果敢で知られた先代王、それに生き写しだとされる第二王子とは違い、王太子は武勇に秀でているという噂も聞かない。

 しかし、性格が穏やかだという話も耳にした覚えが無かった。

 そんなレジーナの内心の戸惑いを知ってか知らずか、王太子はうん、と気持ちよさそうに伸びをする。


「うんうん、君が言った通り、ここから見る景色は最高だよね。風も気持ちいいし、心が落ち着くよ」


(最高なんて言ってませんけど!? どんな自己解釈をしてるのよ、この王太子!)


 この国の次期国王がこんなので大丈夫なのか。レジーナは内心の不安を隠しつつ、

 それでも笑顔を崩さぬように努める。


「ああ、申し遅れた。私はラグナ、ラグナ・エルドナーク。一応、この国の王太子であるかな」


 肩を竦めておどけるその様は、王族の威厳を感じさせない。ますます呆気に取られていると、

 困惑するレジーナに向けて王太子はあくまで優しげに語り掛けてくる。


「さて、君の名前を聞かせてくれるかい? その学園章から察するに、新入生だとは思うけれど」


 制服の襟元に付いている、淡い緑の紋章に目線が注がれる。


「レ、レジーナ・メレナリスと申します……」

「ああ、メレナリス男爵家のご令嬢か。今後ともよろしくね」


 特に高名でも無い、末端の貴族である男爵家の名にも精通しているのは、流石王太子という所だろうか。

 それとも、社交界での噂を聞いていたのか。案外と耳聡いものだ。

 妙な所に感心を覚えていると、王太子はレジーナの手を取り、その甲に口付けた。


「な……っ!?」

「お近づきの挨拶さ、メレナリス嬢。君に会えたこの幸運を逃したくなくてね」


 そう言ってぱちり、とラグナは片目をつぶる。

 予想外の気障な言葉と仕草、それがまた彼の貴公子ぶりに良く似合っていて、頬が熱くなるのを感じる。


「それじゃあ、また。明日も会えるかな、会えるよね?」

「え、あ、はい……!」

「良かった、じゃあ明日はお昼を一緒に取ろう。またこの場所で、待ってるからね」


 レジーナの返事も聞かず、ラグナは枝から離れ、器用に滑り下りる。


 もう、ただただ茫然とする他ない。そんなレジーナに向けて手を振ると、王太子は弾んだ足取りで校門の方へと歩き去っていく。


「な、なんなのあの王子!」


 しばらく、レジーナは硬直したように動けなかった。ようやく出た第一声がこれである。

 上手く話せるかどうか、緊張すらしていたのに、何一つ苦労する事無く彼と知り合えてしまった。

 それも、明日の約束まで取り付けられて。戦果からすれば大勝利も良い所なのだが、どうにも腑に落ちない。


(というか、婚約者が居るんじゃなかったっけ? なのに、初めて会った女性とお昼を一緒にって、

浮気性というか、手が早いというか。そういう意味での馬鹿王子なのかしら)


 まぁ、いい。『魅了』を行使せずとも、即座に親しむことが出来たとも言える。

 レジーナは、ほっと息を吐く。

 あれは体力を消耗する。やらずに済むなら、それに越した事は無かった。

 こちらに都合は良いけれど、女馴れしているなら要注意。深呼吸をして、気を引き締め直す。

 

(……あ、そういえば)

 

 事前に練習してきた籠絡用の台詞や媚びた仕草を一切使わなかった。使う必要が無かった。

 そんなどうでも良いことが、ふと頭を過ぎるほど、それは印象的な出会いであった。



◇ ◇ ◇



 ――ラグナの『今後ともよろしく』という言葉に嘘偽りは無かった。

 その次の日から、彼は何かに付けてレジーナの周りをウロチョロし始め、あれこれ世話を焼き始めたのだ。

 一国の王子、それも王太子ともなる人間がたかが男爵令嬢に張り付いているのだ。当然ながら、周囲の目は思わしいものではない。ない、のだが……その様子もおかしい。


 遠巻きにこそこそと見るばかりで、レジーナにちょっかいを出そうとする生徒は誰も居ない。

 王太子の婚約者は侯爵令嬢だというのだから、分を弁えろ、くらいの説教や厭味は当然にあるものだと思っていたのに。

 当の令嬢本人の取り巻きが、いくらか嘲笑の目線を向けてくるくらいで、不気味なほどに何も無い。


「何これ、なに……?」

「どうしたんだい、レジーナ?」

「い、いえ! 何でもありませんっ! ちょっと服に埃が付いていただけで……」

「どこだい、拭くよ? ここかな、よし……っと。うん、綺麗になった!」


 ハンカチを手に、嬉しそうに笑うラグナを見て、レジーナは吹き出しそうになるのを堪えた。


(何だか、犬みたい。尻尾があったらブンブン強烈に振ってるわね、きっと)


 もう、気にしても仕方がない。そう悟り、レジーナは辺りを見回した。

 いつもの待ち合わせ場所。陽光降り注ぐ中庭の、レパシスの木の根元に自分達は腰を下ろしている。

 隣り合うようにして肩を寄せ、昼餉を取るのがここ最近ではお決まりになっていた。


 ハンカチを懐に仕舞うと、ラグナは木籠からサンドイッチを手に取った。

 美味い美味いと幸せそうに頬張るその姿は、あまりにも無防備すぎて未だに面食らってしまう。

 この国では、貴族であっても簡単なお菓子や軽食を手習う令嬢は少なくない。これも、レジーナお手製の物だ。

 とはいえ、高貴な王子さまが毒見もせずに、そんなにひょいひょいと手づかみで平らげていくものなのか。

 元は平民であるレジーナにはその辺の感覚が今一つ判らない。

 色んな意味で型破りな王太子に、戸惑うことばかりの毎日だ。


(……私の『祝福』が効いている――というのも、少し違うのよね。そもそもまだ使ってすらいないし)


 ――――『祝福』。

 それは、この国の民がごく稀に得る、生まれながらの神からの賜り物。異能の力の総称である。

 とてつもない剛力を得たり、遠く離れた地へ瞬時に移動したり、自然現象や人の運命にさえ干渉出来る者も、歴史上には存在したとされる。

 

 血筋から生まれるのかどうかも全く不明で、法則性が見えない。

 王族に誕生する場合が多いとも言われるが、それも確証は無いのだという。

 

 レジーナもまた、他者を誘惑し好意を惹きつける『魅了』という祝福を得ていた。


(うーん……? 好感は持ってくれていると思うのだけれど、それは魅了のお蔭というより、もっと別のもののような……)


 この祝福は目と目を合わせることで効果を発揮し、レジーナ自身が意識をする事で指向性を持ち、望んだ他者に影響を与える。

 人は、初対面での第一印象をその後も引きずり易い。ゆえに、レジーナも自身を印象付けた後に会話へ繋げ、有効的に祝福を活用しようと考えたのだが……


(それすらする暇もなく、最初から好意全開なのよね。私の祝福が成長したとか、効果範囲が広がったとか、そんなわけじゃないだろうし……)


 もうわけもわからない。

 ふわふわのストロベリーブロンドの髪に、愛らしい顔立ち。磨きに磨いた自分の容姿は魅力的な方だとは思うが、それでも王子様をいきなり惹きつけるようなものなのだろうか。疑問は尽きない。

 

 ため息交じりに目線を逸らすと、何の気なしに風にたなびく草花を手に取る。

 アジアラの花。この国なら何処でも見れる植物だ。何処となく儚い見た目から万民に愛される花。

 子供の頃はよく、この葉を笛にして遊んでいたものだ。母から教わったそれは、幼少時代の数少ない良い思い出。

 懐かしさに胸を突かれながら、指でそれを弄んでいると、傍らから手が伸ばされた。

 剣ダコ塗れの、意外とがっしりとしたその指が葉を摘まみ、その手のひらに乗せる。


「これを吹くのも久しぶりだな。さて、上手く出来るかどうか」

「え――」


 レジーナの目の前で王太子は芯を取り出し、クルリと葉っぱを丸め、唇に当てる。


「ウソ……!」


 懐かしい旋律が、少女の耳に届いた。独特のリズムで吹かれる葉の音は甲高く響き、胸を掻き乱していく。

 

 


『おかあさん、もっと! もっときかせて!!』


『レジーナは本当にこの音が大好きなのねえ。それじゃあ、もう少し吹いてあげるわね』




 目の前に落日の朱が、遠き日の残影が広がっていく。薄紅色の唇に葉を当て、優しく微笑む母の姿。

 レジーナが密かに自慢にしていた、同じ色の髪を風になびかせ佇むその光景。その懐かしさに、息が苦しい。


「だ、大丈夫か!? おい、そんなに泣くほど下手だったのか!?」

「な、んで……?」


 王太子のハンカチが目元に当てられたことで、初めてレジーナは自分が涙を流していたことを知った。


 同じだ、全く同じ。母から教わった旋律、あの愛しい音と。それが、そっくりそのまま奏でられた。


 恐らく、レジーナは呆然と見つめていたのだろう。視線を感じたか、王太子が落ち着かなさげに目を逸らし始めた。

 その頬が少し赤く見えたのは、先ほどの幻影の残り香だろうか。

 奇妙な空気が流れる中、その日二人は昼食を取るのも忘れ、そのまま風に吹かれ続けた。



◇ ◇ ◇



 ラグナ王子は決して頭脳明晰というわけでもなければ、武勇に秀でているという事もない。

 成績は並より少し上程度。剣の腕前も、学年の中ですら上位に食い込めるとはお世辞にも言えないほどだ。

 それでも、努力家であることは間違いないと、レジーナは思う。



「弟に比べれば、私は何も出来ない馬鹿王子さ。あいつは本当に凄いよ。文武に長けた優秀な男だ。ブルム――――宰相が特に目を掛けて可愛がっていてね。英雄王と言われた先代王に生き写しらしい」



 いつだか、そう言ってラグナは笑っていた。

 でも、レジーナは知っている。自分と居る時はそんな様子は見せないが、剣を振り続けたであろう指先はひび割れささくれ立ち、日に日に厚みを増していたし、お付き役の生徒がぼやく言葉から、時間のある時は図書館に籠り、帰宅した後も夜遅くまで勉学に励んでいるらしい。


『急に人が変わったみたいだよ。いつもの気まぐれだと思うがね。どうせ、その内に飽きて元に戻るさ』


 ラグナの居ない場所で、愉しげに陰口を叩くその生徒に何故か、酷くむかっ腹が立ったのをレジーナは良く覚えている。

幾ら学園内は身分差が無いと謳っているとはいえ、彼は仮にも王太子だ。公然と悪口を言って、それが許される。この学園の気風はどうなっているのか。だからこれは、当たり前の義憤だ。王家に従う貴族の令嬢として当然の苛立ち。

 

 ゆえに、その生徒の通りがかりに足を踏んずけてやったのは、それ以外の何物でもない。

 悲鳴を聞いて少しばかり胸がすく思いがしたのも、気のせいである。そうレジーナは思った。



 やがて夏が過ぎ、秋を通り越して冬が来た。その間、ずっと飽きる事もなくラグナはレジーナの傍に居続けた。

 そして迎えた学年末。一年の締めくくりとなる剣技大会で、ラグナは懸命に剣を振るい、二回戦まで勝ち上がるが、そこで敗退。笑いながらもひっそりと肩を落とす彼を慰めるのは、意外と骨が折れた。


「もう少し、もう少しで勝てたんだよ。あの時、柄を握る手が汗で滑らなければなぁ……」


 ぶつぶつと言い訳をする彼を見て、案外と負けず嫌いなのだな、と。レジーナは苦笑した。



 二回目の春が来て、進級する頃には、王太子の『変貌』とやらは学園内でも馴染みの光景になっていた。

 もちろん、侯爵家の令嬢を放って一介の男爵令嬢に夢中になる様を好意的には受け取られていない。

 それでも、王太子という身分から離れた個人の学友も出来たようで、ラグナの周りにも少しずつ人が増え始めていた。


 とはいえ――


「レジーナ、今日も良い天気だね。ご覧、君の笑顔のように晴れ渡った青空だ。輝くばかりに美しいと思わないかい?」


「レジーナ、遠乗りに行かないかい? 馬には乗れるんだろう。森の方まで少し汗を流そう」


「レジーナ――」



 口を開けばレジーナ、レジーナ、レジーナである。その回数は年月を経るごとに減るどころか、増していく気さえした。

 そして、そのことを決して悪く思わない自分が居る。それが何だか不思議で、胸に靄がかかるような気持ちを抱えたまま、レジーナは日々を過ごしていた。



◇ ◇ ◇



「今日は君の誕生日だろう、レジーナ。プ、プレゼントを持ってきたんだ」


 最終学年となる、三年目の春を迎えた年。

 恒例の待ち合わせ場所。その日、いつになく緊張した面持ちでラグナはそこへやってきた。

 その手には、綺麗な小包が乗せられている。

 

 あれ、とレジーナは首を傾げた。自分の誕生日を彼に告げたことがあったろうか。いや、どうだろう。

 自分達が何気ない会話を交わすのは日常茶飯事だ。彼からの質問だって数多い。その中に紛れたのかもしれなかった。

 

 まあいい。貰える物は何でも頂いておく主義だ。決してラグナからプレゼントを貰えるのが嬉しいのではない。

 頬が自然と緩むのを堪えつつ、レジーナはうきうきと包装紙を紐解いていく。


「え……」


 まただ。何度彼に驚かされれば気が済むのか。

 包みに入っていたのは、蝶を模した髪飾り。それは、レジーナが平民時代に憧れた代物であった。

 慈善事業だか何かでお貴族様のご令嬢が街の古びた教会に訪れた際、その艶やかな髪に輝いていた美しい銀細工。

 母にすら話したことも無い。しばらくの間、夢に見るくらいに焦がれたそれを、どうして彼は。


「買ったんだ、私が稼いだお金で」


 照れ臭そうなその言葉に、弾かれたように顔を上げる。


「学園の奉仕活動さ。コツコツと、二年貯めて何とか買えたよ。本当は、剣技大会の賞金があればもう少し格好も付くし、去年には渡せたんだけれど……遅れてごめん。初めての誕生日プレゼントはどうしてもコレを渡したくて、拘ってしまったんだ」


 上手く行かないものだね、と。ラグナは微笑んだ。

 この所、レジーナと会う回数が少し減ったと気付いてはいた。何かと忙しそうにしていたので、王族としての教育か何かが大変なのだとばかり思っていたのに。


 ようやく自分に飽きたのかと、火遊びが終わったのだと。そう心配したのは何だったのだろう。


(……馬鹿王子。一人の女生徒に貢ぐために奉仕活動に奔走するなんて、王族失格じゃないの。それも、たかが男爵家の娘によ。人の上に立つ者としてどうなの、それ)


 本当に、しょうがない人ね。

 そう思いながらも、レジーナの指先は震え、銀細工をそっと摘まんで髪に寄せる。


「……どうです、か?」


 その声に、期待の色が滲んではいなかったろうか。なにせ、あんなにも身に着けるのを焦がれた髪飾りなのだ。

 それが自分に似合っているか、分不相応じゃないか、彼に変だと思われないか。

 そのことが不安で仕方なかった。

 恐る恐る、上目遣いでラグナを見る。

 すると、どうだろう。彼の顔がみるみる内に紅潮していくではないか!


「へ、変……? やっぱり、私には似合わな――」

「――可愛い」

「……ッ!?」

 

 口に手を当て、ラグナは呆然とこちらを見つめている。


「おま――君は、こんなにも可愛らしかったのか……」


 聞きようによっては、激怒物の侮辱。

 しかし、目線をきょろきょろと彷徨わせ、頬を紅くしながらレジーナの姿を伺うその姿は、何故かひどく胸を打った。


「かわいい、です、か……?」


 ふらふらと、その瞳に吸い寄せられるように爪先を上げ、ラグナの眼前に頬を寄せる。

 視界がぼやけて、彼の目の中に映る少女の姿が良く見えない。

 今、自分はどんな顔をしているのだろう。それがどうしてか気恥ずかしくて、俯いてしまう。

 

 瞬間、肩がそっと抱かれた。

 

 たくましい腕がレジーナの背に被さり、心地良い温かさがそこから胸の内へと収束していく。

 心臓が早鐘を打つようにどくどくと音を立てる。

 

 ――止まって、と。レジーナは呟いた。

 この音を聞かれたら、どうしよう。焦りにも似た気持ちが逸るのに、彼の温もりから離れたくない。


「レジーナ」


 いやいやをするように、胸に頬を擦り付ける。


「レジーナ」


 あまりにも切ない二度目の呼び掛けに、息を吐きながらレジーナは顔を上げた。

 

 初めて会った時から心惹かれた、碧色の瞳が潤み、真っ直ぐに自分を捉えている。

 顔を真っ赤にした王太子のその姿に、レジーナは思わず可愛いと思ってしまった。

 男性をそう表現するのは失礼と思いながらも、叫びたくなるほどの衝動が胸を付いて激しく脈打ち始める。


「レジーナ」


 三度目の呼び声に、そっと目を閉じる。

 唇に触れた熱さと込み上げる愛しさに、レジーナは全身を歓喜で震わせた。


 薄々芽吹いていた想いが、完全に開花する。

 この三年間、ラグナ・エルドナークのその優しさと誠実さに、ずっと触れつづけていたのだ。

 

 ――レジーナはもう既に、彼への恋に落ちていたのだと、そう気付いた。



◇ ◇ ◇



 王太子と心が通じ、世界は薔薇色に染まった。比喩でなく、レジーナには確かにそう感じられたのだ。

 

 周りの目さえ気にならない。ラグナの一挙手一投足、全てが愛おしく目が離せない。

 彼を誑し込もうとした理由が薄れてゆくのは恐ろしくもあり、心の何処かでホッとしてもいた。

 『祝福』は出会ってからこれまで、一度も使っていない。だから、この想いが通じた事に何物も介入していないのだ。

 

 このまま王妃になれれば、彼の隣にずっと居る事が出来る。共に未来を歩める。それが何より嬉しかった。

 もはや、何の憂いも無い。今のレジーナは恋愛物語のヒロインになったが如き、無敵の全能感に浸っていた。


「レジーナ、この花を君に」


「わぁ、ありがとうございます、ラグナ様!」


 いつもの待ち合わせ場所、先に来ていたラグナが大輪の花束をレジーナに差し出した。

 満面の笑みを浮かべてそれを受け取り、かぐわしい花の匂いを胸いっぱいに吸い込む。

 幸せだ。こんなに幸せで良いんだろうか。レジーナは泣きそうになるのをグッと堪えた。

 いや、いいに決まってる。『祝福』なんて使っていない。これは偽物の感情ではない。

 

 自分達は真実の愛で結ばれた運命の恋人同士なのだ。

 だから、このまま彼の愛情を受け入れても許される――

 


 ――――本当に? 本当に、そう思ってるの?


「……レジーナ?」


 手元の束のように、花が乱れ咲く浮かれきった頭の中で、冷静に現実を告げる声が聞こえる。


 ――――侯爵令嬢との婚約はまだ続いている。『祝福』を使っていない真実の愛? そんなもの、何の保証があるのかしら?



「……う」



――――お父様……男爵と、お母さんの間にも真実の愛とやらがあったのではなくて? なのに、現実はどうだった? お母さんはどうなったっけ? 身分差とやらに引き裂かれて家を勘当され、体を売って私を育てることを余儀なくされたじゃない。



 日々の暮らしに苦労しながらも、いつもレジーナに笑ってくれた優しい母。

 最期は恋人に似た男に騙されて、売りつけられた麻薬に心と体を蝕まれながら死んだ。



『お父様がね、もうすぐ貴女を迎えに来てくれるのよ』


 

 それが口癖になり、娼婦仲間が見兼ねてくれた食べ物すら、薬を買う代金に代えて。

 レジーナが大好きだったストロベリーブロンドも色褪せ、骨と皮だけの姿になり、死に至るその間際まで恋人が迎えにきてくれると信じて逝った。

 

 彼女の言う『父』が、レジーナの父親か、それとも詐欺師のあの男だったのか、それは最後まで判らなかった。

 もしも、『祝福』を使って食料や生活に必要な物品を得ていなければ、レジーナは母の後を追っていただろうと今でも思う。



 ――――私だって同じよ。たかだか男爵令嬢が侯爵家の娘に敵うと思ってるの? 王妃? 馬鹿じゃないの、元平民の私がそんな御大層なものになれるわけないでしょう?



「――うるさい」

「レジーナ、どうしたんだ、レジーナ?」 



 ――――どうせ、引き離されておしまいよ。在学中だけのお遊び、恋愛ごっこのおままごと。ほら、今からでも『祝福』を使いなさい。そうすれば、ラグナ様の心は永遠に私のもの。望めばきっと、婚約破棄だってしてくださるわ。それしか私達が結ばれる方法は無い――



「うるさい、うるさい! 駄目よ、そんな事をしたら、どうなるか――!」

「レジーナ、落ち着け! どうしたんだ!?」


 肩が掴まれ、振り向かされる。不安げなラグナの顔が目に入った瞬間、レジーナはその手を払い、駆け出していた。


「はぁ、はぁ、はあっ!」


 そうだ、ずっと考えないようにしていた。

 父――メレナリス男爵の言うように、王太子の心を射止めたとして、それだけで果たして王妃の座になど就けるものか。


 待機していた男爵家の馬車に駆け込み、急いで屋敷に戻るように御者へ告げる。

 慌てて鞭が振り上げられ、馬のいななきと共に車輪が動き出した。


(そうよ、王族の教育など受けていない無知な女。後ろ盾も無い、少しばかり容姿がマシなだけの平民上がりの令嬢が、どうして国母になんてなれるのよ)


 これまでは、それでも良かった。

 ラグナを道連れに、母を死なせた男爵もろとも破滅しても良いとさえ思っていた。

 どうせ、相手は馬鹿王子。弟である第二王子の立太子さえ望まれているという。なら、いいじゃないか。

 苦労知らずのお坊ちゃん、身分に胡坐をかいて散財し、愚かな行為を繰り返す王子など、要らない。


 彼が使うお金のひとかけらでもあれば、母は死なずに済んだかもしれないのに。だから、罪悪感など無かった。

 そう、そんな自己満足的な八つ当たり行為に、暗い悦びさえ覚えていたのだ。そう、それなのに。



『レジーナ』



「……っ!!」


 彼の笑顔がちらつく度に、胸が苦しくなる。吐き気さえ覚えそうになった。

 ラグナの誠実さと優しさがもたらす光が逆に、レジーナの醜さを浮き彫りにしていた。


 ガチガチと歯が鳴り始める。彼を騙そうとしたおぞましい自分の欲望と、浅ましさ。

 そして何より感じる恐ろしさは、全てが明かされ彼に捨てられること――では、ない。


(もしも、もしも。全部がバレても、その上で彼が私を選んでしまったら? お優しいラグナ様のことだ、きっと不実な行為はしない。私を妾や愛人で無く、妃にするとそう宣言してしまったら?)


 婚約破棄。その言葉が脳裏を掠める。学園内限定のおままごとだと思っているだろう侯爵令嬢が、そうなれば自分達を……ラグナを許すはずが無い。


 古くは宰相さえも輩出した名家。王家に次ぐ権力を持つとも言われる、レーベンガルド侯爵家。

 当主の言葉は、王さえも無視できないという。なればこその、政略結婚だというのに。

 最悪の破滅。それは、レジーナが処刑されるだけならまだいい。

 ラグナは王太子の地位を引きずりおろされ、生涯、幽閉を余儀なくされてしまうかもしれないのだ。

 

 歴史の授業において習った、気が触れた王族の末路のように。


「早く、早く着いて! 早く!」


 男爵に問い質さねば、誰の思惑でこんな大それたことを考えたのか。

 レジーナが貧民街から見つけ出されたタイミングに、貴族学院への入学からラグナが護衛を外れて、あのレパシスの木へ通りがかる導線まで。全てがあまりにもスムーズに運びすぎる。

 後ろ盾が居る。必ず居る。人の良さだけが取り柄の愚かな父を炊きつけた黒幕が。


 乱雑な運転に耐え、椅子にしがみつくようにして前を見据えていると、やがて男爵家のタウンハウスが見えて来た。

 その瞬間、門を潜り抜けて馬車が一台、何処かへ去っていくのが見えた。

 幌に刻まれた紋章に覚えは無い。けれど、だからこそ嫌な予感が膨らんでいく。


 淑女の基本もどこへやら、馬車から飛び降りるようにして着地すると、門の前に控える番人に声を掛け、屋敷への短い道のりをひた走った。


 扉を蹴破るようにして中に入り、驚くメイドや使用人たちを掻き分けて、書斎へ向かう。

 この時間なら、男爵は必ずそこに居る筈だった。


「はぁ、はぁ――お父様……っ!」

「おお、レジーナ。どうしたんだい? そんなに慌てて息を切らせて。それに……ああ! 汗だくじゃないか! 誰か、誰か居ないか! すぐに娘を休ませて――」

「そんなのはどうでも良いの! お父様、一体誰に唆されてこんな恐ろしいことを思い付いたの!?」

「唆され? 何を言ってるんだい、レジーナ。王子とは上手くいっているんだろう? なら、お前が妃になるのもそう遠くない将来――」

「馬鹿言わないで! 無理に決まってるでしょう、そんなこと! 男爵家の娘が、王妃にだなんて!」

「無理じゃないさ、可愛いレジーナ。ああ、そうか。後見人のことを心配しているんだね? 安心なさい、もうすぐ尊い方がお前を養女にしてくださる、そうすれば、身分差など解決さ」


「――は?」


 ぽかんと口を開け、レジーナは絶句した。養女、尊い方? 何だそれ、そんなこと今まで聞いたことも……

 その時、ふっと脳裏に閃くものがあった。


「さっきの馬車……そう、あれは何処の家のものなの!? まさか、養女って――」

「ああ、あれはね。なんと、宰相家のものだよ。一般には知られていない、秘密のものらしい。お前を陥れようとする者が何処で目を光らせているかわからないからね。用心のためのものらしいよ。流石は宰相殿だ。お考えが深いねえ」


 宰相。何故かその言葉に、ゾッとするものを感じる。

 普通ならそんな嘘くさい言葉は、詐欺を疑うだろう。だが、何故かレジーナはそれが真実だろうと確信していた。


「私を養女にするというのは、この国の宰相なの!? 答えて、お父様!」

「そうだよ、その通りだ。何処からかお前の器量の良さを聞きつけて、後ろ盾になってくださると快諾して貰えたのだよ」


 男爵は相好を崩し、その眼をハンカチで拭った。


「これで、何も不安はない。いやぁ、侯爵の言う通りにして本当に良かったよ。神さまは見て下さっているんだねえ」

「……侯爵? 何、なんのこと。侯爵って、どの――」


 ああ、と。男爵は相好を崩す。


「レーベンガルド侯爵家さ。あそこの当主とは懇意にさせて貰っていてね。私はその愛娘と王太子の不仲について、前から相談に乗っていたんだ。しかし、彼は偉大な男だよ。娘の不器用さを責め、このままではラグナ殿下が将来王となった際に、その治世を盛り立てることが難しいと判断したのだ。だから、彼の横に立つに相応しい娘を定めた」


 男爵の瞳が、潤みを増す。


「それがお前だよ、レジーナ。彼の知り合いだという商人から、イセリナが死に、遺されたお前が貧民街で苦しんでいることを伝えられてね。一も二も無く救い出したのさ。妻も病死し、跡取りも無い私だ。今度こそ何の憂いもなくお前を引き取れた」


 背筋に冷たいものが走る。侯爵家の知人? それが、自分のことを男爵に伝えた?

 だとすれば、レジーナに『祝福』があることをレーベンガルド侯爵家は、ラグナの婚約者であるセラスフィアは知っていた事になる。


「侯爵はね、約束してくれたんだ。もしも、王太子に相応しい女性があれば、喜んでその座を譲ると。だから、私はね……」


 膝から力が抜け、レジーナはへなへなと、床に座り込んでしまう。


「ど、どうしたんだい、レジーナ? 安心して気が緩んだのか。ああ、大丈夫。大丈夫さ! もう、何にも心配は要らないよ。お前が王妃に就いたって、父親面をするつもりだってない。当たり前だ、私にそんな資格は無いに決まっているだろう」


 レジーナの肩を優しく抱き、男爵は穏やかに語り掛けてくる。


「全てが終わったら、私は君のお母様――イセリナの元へ行くよ。いや、駄目かな。彼女は神に召された。私が同じところに行ける筈もないか。それでも、お前に迷惑だけはかけない。愛しいレジーナ、お前は誰よりも幸せになれるんだよ……」



(――――愚かなお父様。貴方は、どれだけ私を苦しめれば気が済むの?)



 それでも、レジーナは『父』を責めるつもりになれなかった。

 何も聞かず、何も問わず、ただ破滅を求めたのは他でも無い自分自身だ。

 涙を流しながら娘を宥めようとする彼が、酷く悲しい存在に見えた。何もかもが、後悔しても遅い。


 全てが終わる断罪の階段を、既にレジーナは昇り始めていたのだから。

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