王子が引っ越してきました
「ん? なんだろ、あの馬車」
ある日の事、我が領地に1台の馬車がやってきた。
行商かなんかかと思っていたけどどうも違うみたい。
(まさか、引っ越し? こんな何にもない所に?)
引っ越し自体ありえない話ではないけど、この数年引っ越してくる人はいない。
荒れた場所に進んで引っ越してくる人は当然いなくているとしたらどうしょうもなく行き着いた人だろう。
私は馬車を横目で見ながら畑仕事に精を出していると馬車が1軒の家の前で止まった。
そして、馬車から出てきた人物を見て私は驚きの声をあげた。
「フ、フレイ様っ!?」
「やぁ、エマ久しぶりだね」
フレイ様はニッコリ笑って挨拶した。
「いや、あの、どうしたんですか!?こんな何にもない所に?」
「そりゃもちろん、ここに住むんだよ」
「はいいいぃぃぃっっっ!?!?」
私の驚きの声が大空高く響き渡った。
「いきなり来て申し訳ない、昨日の今日で決まった事なんだ」
「いえいえいえいえっ!!私みたいな貧乏男爵が殿下にお会い出来るとはっ!!」
あの後、フレイ様は我が家を訪問、当然だが両親は驚いた。
いくら王族とは接点が無い、と言っても自分達の国の王族の顔はちゃんと覚えているもので両親はすぐにフレイ様が王子である事は理解した。
「エマ嬢と話した後、この地方について調べたんだ」
「調べた、と言いますと?」
「災害が起こってから数年が経過したにも関わらず中々復興が進まない、その理由を調べたんだよ」
「そ、それは私の実力不足でして……」
「いや、そうじゃない。男爵はちゃんとやっている、と僕は評価をしています。理由は我が上層部にあったんだよ」
「上層部と言いますと大臣とかですよね?」
「そう、その大臣の一人がわざと復興を遅らせている様に画策してるみたいだ」
「な、なんですとっ!?」
それは私達にとって寝耳に水の話だった。