殿下との語り合い、いや愚痴り合い
ビックリした。
だって、このお見合いパーティーの主賓であるだろうフレイ様がベランダで疲れた顔して佇んでいたんだから。
「も、申し遅れました!私スチュアート男爵家が長女のエマと申します」
私は慌てて名乗った。
「スチュアート家、と言ったら確か辺境を収めている家だね」
「ご、ご存知なんですか?」
「勿論、一応この国の王子だからね」
流石は王子様、底辺貴族まで知っているとは……。
「エマ嬢はどうしてこんな所に?」
「あ、私は義務として参加していたので……、家みたいな貧乏男爵家に婿入りしてくる殿方なんていませんから……」
私は自嘲気味に言った。
「殿下こそ何故ここに?殿下は主賓ではないですか」
「……僕もね義務として参加してるだけだよ。結婚するつもりなんて更々無いよ」
フッと寂しく笑う殿下。
意外な本音に私は驚いた。
学生時代、私は遠くでしか殿下の事を見ていなかったけど常に殿下の周りには女性生徒が囲んでいた。
当然、私なんてその中には入れないけど殿下の周りは華やかだった。
それに確か殿下には婚約者がいたはずだ。
「あれ? 確か殿下には婚約者の方がいた筈では?」
「あぁ……、彼女は婚約者候補で正式な婚約者ではないよ。何事もなければ卒業後に婚約者になった筈なんだけど実家の公爵家の不正が発覚してね……」
そういえば卒業後に上位貴族のいくつかで横領とか癒着とか色々不正が発覚して色々大変だったらしい、と聞いた事ある。
「昔からこうでね、僕は女性に縁が無いんだよ。幼い頃には誘拐されかけた事もあったし近づく女性達はみんな僕の肩書や地位や名誉しか興味がないんだよ……」
そう言ってはぁ〜とため息を吐くフレイ様。
「大変なんですね、王族も」
「僕はね、正直地位や名誉なんていらないんだよ。この女難が終わるなら王族なんて喜んで捨ててやるよ」
私が想像する以上に殿下は疲れているみたいだ。