お見合いパーティーにて
「来るんじゃなかった……」
私、エマ・スチュアートは深いため息をついた。
私が今いる場所は王家主催のお見合いパーティーの会場である。
独身の令嬢令息の出会いの場として定期的に開催されている。
私も何回か参加しているけど声をかけられた事は1回もない。
それもそのはずで何せ私の実家であるスチュアート家は貧乏男爵家だ。
どれくらい貧乏かと言うと、使用人を雇えない、家事洗濯掃除は自分でやる、自給自足は当たり前、というくらい金が無いのだ。
プラス茶髪のくせっ毛で美人でもないごく平凡的な顔、スタイルもいたって普通な私は他の綺羅びやかな方々の相手になるわけがない。
しかし、王家主催のパーティーなので断る訳にはいかず参加している訳で……。
私にとっては婚約者探しよりも滅多に食べれない豪華な料理を目当てに来ている。
料理さえ食べれれば後は会場の隅で終わるまで時間を過ごすだけだ。
(しかし、こんなにまだ独身が多いのかぁ……)
私はにこやかに話している令嬢令息達をボーッと見ながら観察しながら考えている。
にこやかにはしているけど中には獲物を探す鋭い目をしている者もいる、主に女性陣に。
(まぁ、高位貴族の令嬢で独身というといろいろ問題あり、と思われちゃうよね)
私も含めてだけど好きで独身でいる者なんていない。
こうしてお見合いパーティーに出会いを求める者もいればお見合いやら運命の出会いを追う者もいる。
努力はするんだけど相手が見つからない、そうなると本人の問題になる訳だ。
私は外の空気を吸いにベランダに出た。
「あぁ〜涼しい」
外の満月で夜風が肌にあたって気持ちいい。
「そろそろ覚悟を決めないといけないんだよね……」
もう学園を卒業してから1年が経つ。
貴族令嬢としては瀬戸際に追い込まれている。
はぁ〜、とため息を吐き再び呟いた。
「「来るんじゃなかった……」」
あれ?今誰かと声が被ったような……。
ふと横を振り向くと離れた所に男性がいた。
ん?あの人は何処かで見た事あるぞ。
あの綺羅びやかな服に金髪の爽やかイケメン……。
「し、失礼ながらだ、第一王子様でしょうか……?」
「あ、そうだけど……」
なんと、横にいたのはこの国の第一王子であるフレイ・クレイトア殿下だったのだ。
この出会いが私の人生を大きく変わる事になる。