未完結作、旧作、新作のお話
カクヨムでは、前回の投稿の後に「テンプレ小説談義」シリーズ(全6回)と「ラブコメ小説談義」という記事を投稿したのですが、それらを「小説家になろう」に投稿するにしても、このエッセイとは別の作品として投稿したいと考えています。
2021年6月13日
どうも、あじさいです。
このエッセイでは何度か、筆者作の長編ファンタジーのことを話題にしてきましたが、最近は他にも作品を掲載したり、一度非公開にした作品を再公開したりしているので、今回はその辺りの近況報告をさせていただきたいと思います。
ある意味では宣伝になるのですが、「こういう意図で書いてみたのに上手くいかなかった」とか、「こういう構想で書いてはいるが思うようにいかない」といった「書き手あるある」のお話でもあるので、創作活動をしている皆さんになら共感していただけるかもしれません。
では、まず、恥ずかしながら1年以上更新が滞っている長編ファンタジー『ダームガルス戦記』について。
このエッセイでも以前書きましたが、この作品は「筆者が自分で何度も読みたいと思えるファンタジー小説」を目指して書いています。
舞台は中世ヨーロッパ的な異世界 (ありがちですね)。
基本的には魔法など存在しないはずの世界で、不思議な力を持つ少女リジーと少年ニコラスの2人、そしてその仲間たちが隣国との戦争を生き抜いていく様子を、ジャコブという1人の歩兵の視点から書いています。
テーマや世界観は大人向けのつもりで書いていますが、残酷描写と性描写がヘヴィになりすぎないようにしているので、15歳以上の方々になら読みやすい作品だと自負しています(書き手としてこれくらいの大口を叩くことはお許しください)。
この作品の更新が滞っている最大の理由は、ジャコブの個人的な経験をどの程度の重さ(文字数)で書くかを決められずにいるからです。
ジャコブはこの「手記」を、自分自身ではなく、自分が関わった英雄たちを中心に記述しようとしているので、第8章辺りまで、ジャコブの個人的な経験や感情はさらりとしか書かれません。
しかし、未公開の第11章以降、ジャコブ自身の話が物語全体により深く食い込んでくるようになるんですね。
こういうものを執筆する場合、結果的に最も近道なのは細かい経緯を含めて一度全部書いてしまってから必要に応じて削ることだとは思いますが、それはそれで書きづらいところがあって……という感じです。
続いて、一度は非公開にしたものの、最近になって再公開した『山茶花』と『完璧女子と地味っ子』について。
非公開にしていた作品を引っ張り出して再公開することにしたのは、これらの作品のことも「自分の作品」として背負おうと、最近になって思うようになったからです。
以前は、仕上がりに満足できない作品を置いておくと、本当に読んでほしい作品の評価まで下がってしまうのではないかと危惧していました。
仮にこれがプロやプロ志望なら、自分で満足できない作品を掲載しておくのは読者に対して失礼という話にもなるのかもしれません。
ですが、アマチュアの筆者がそんなことばかり考えていると、過度の完璧主義に陥って『ダームガルス戦記』の続きさえ書けなくなりそうだと気付きました。
『山茶花』は、カクヨムに投稿した時期こそ2021年2月ですが、「小説家になろう」での初投稿は2019年11月です。
タイトルが硬派なせいかPVが伸びませんが、話としては、もうすぐ高校3年になる女子高生が、卒業間近の先輩と、東京上野で最初で最後のデートをするという短編です。
コメディ要素が渋めなので「ラブコメ」ではなく「恋愛」に入れました。
執筆当初の構想よりだいぶ男性向けな内容になった印象です。
とはいえ、別に男性の願望を反映した訳ではなく、女性の「好意もないのにデートに誘われても満足できない」とか、「恋愛最優先の青春を送る女の子ばかりではない」といった気持ちを描きたいという意識が根っこのところにあります。
これに対して、『完璧女子と地味っ子』は、当初は量産型のラブコメにするつもりで書き始めたものです。
このエッセイの「短編チャレンジ」でチャレンジした短編が、この作品です。
恥を忍んで言ってしまうと、筆者の魂胆としては、この作品で読者を一気に増やして、ランキング上位に入るような書き手に成り上がるつもりでした。
目的達成のために、筆者なりに考えました。
クラスカースト上位(高嶺の花)の女子から好かれているという設定と、エロい女子に迫られるというシチュエーションを組み合わせれば、男性読者の目を引くことができるのではないか……?
しかし、「短編チャレンジ」の記事にも書いたことですが、美少女たちがラッキースケベなハプニングを起こしながら鈍感系主人公(という名の優柔不断で不誠実な女たらし)を延々《えんえん》と取り合うという話を書くのは、筆者のプライドと羞恥心的に無理でした。
ついでに言うと、キャラクターの人物像に下手にこだわって設定を作り込んでしまうと、たとえば一緒にプールに行くとか、浴衣で夏祭りに出かけるとかのテンプレ展開を作りづらくなるんですよね。
だって、貴重な夏休みに主人公と遊ぶような(他の友達から誘いが来ないような)女子高生がクラスカースト上位とは考えにくいですし、仮に友達がいないなら、そんなパリピのような遊び方は選ばないはずじゃないですか。
そんなこんなで、結局これも『山茶花』とは別の意味でアンチ・ラブコメ作品になりました。
現在は最初の4話を加筆修正したものしか公開していませんが、2020年に掲載した当時は全10話構成でした。
話としては、「地味っ子」と見せかけて実はサキュバスである早川美波が主人公・渡良瀬に興味を持ち、エロいことを迫るのですが、渡良瀬は仲良くなり始めた「完璧女子」桜井聡美が気になっている、というのが基本的な骨組みです。
第6話以降、クラスメイトの目を憚らない早川のアプローチを何度も受ける内に、渡良瀬は「このまま早川と関係を持ってしまっても良いかもしれない」という気になってきます。それを見透かした早川はある夜、渡良瀬に本気の誘惑を仕掛けるのですが、渡良瀬は葛藤の末、早川というサキュバスを明確に拒絶します。そして最終話、2人が友達として関係を再スタートさせて話が終わります。
よく分からないと思われたかもしれませんが、筆者の意図を言えば、
「甘い言葉を囁いてエロいことをさせてくれる都合の良い女(=サキュバス)が目の前に現れたからと言って、愛の伴わない爛れた関係に応じてしまうような男には、愛される資格も、愛を語る資格もないんじゃないか」
「人間的な関わり合いを抜きにして、どれくらい虚栄心や性的欲求を満たしてくれるかという基準だけで異性の価値や魅力を測るのは、人として問題があるんじゃないか」
というのが、この作品のテーマのつもりでした。
ですが、PVの割に、読者の皆さんからはあまり良い反応を貰えませんでした。
評価が低い最大の理由はおそらく、登場人物たちの欲望と倫理観がぶつかる物語を書くはずだったのに、登場人物たちの人間性や心情変化をきちんと描けないまま、駆け足で話を畳んでしまったことでしょう。
先日再公開した第1~第4話は、筆者としては我ながらきちんと読ませる文章だと思っている部分ですが、第4話が「これから何か始まりそう」という期待感を大切にしているせいで、物足りない感じになっていると思います。
比較的新しい短編『なろう(系)小説談義:対話篇』は、筆者としては割と異色作のつもりで、作品の紹介文にも書いているように下品な言葉を多用しています。
エッセイの「テンプレ小説談義」を書き始めるより前の時期に、内なる苛立ちと葛藤に任せて下書きを書いたのですが、「テンプレ小説談義」のPVが伸びないので、魔が差してアップしてしまいました。
長々と口汚いことを言っている方のキャラがどうしても印象に残ってしまうと思いますが、作中でも言及されている通り、実は議論の勝敗がつかないまま終わります。
「テンプレ小説談義」風に言うと、発言者2人は「そもそもテンプレ小説とは何か」についての考え方が異なっているので、基本的に議論が噛み合ってないんですよね。
ただ、読者や出版社がテンプレ小説に毒されてしまう可能性に対する危機感の差が、噛み合わない議論を展開させて続けているという構図です。
「テンプレ小説談義」のように長々と抽象的な話をするより、この対話篇のような書き方をした方が、ひょっとしてカクヨムユーザーには届きやすいのではないかと思ったのですが、1話完結のせいか、投稿初日と翌日で19PVを稼いだ以外は静かなものです。
まあ、一部の熱狂的な方々にボロクソ言われるより何倍も良いので、不満はありません。
最後に、現在執筆中の新作について、どうなるかまだ分かりませんが、決意表明として書かせてください。
新作を書きたいと思ったきっかけは、テンプレ系作品のレビュー動画を何本か見たことです。
筆者がよく見るレビュー動画の多くは作品のあらすじを追いながら問題点や矛盾にツッコミを入れているのですが、レビュワーの皆さんのツッコミが秀逸なので、結構笑えるんですよね。
それで、テンプレ的な筋書きがあってそこにツッコミが入る面白さを、ひとつの小説として表現できないかと考えて、構想を練り始めました。
今のところ、異世界ファンタンジーでコメディとシリアスの2つを考えていますが、まずはシリアスの方から書いて10万字以上の小説に仕上げたいと思っています。
ただ、実際に書き始めてみると予想以上に文体が硬くなり、文字数が膨らんでくるので、テンプレのパロディ作品という感じにはならないかもしれません。
当初の狙いから外れそうですが、何事も経験だと思いますので、ともかく一度最後まで書いてみるつもりです。
『ダームガルス戦記』にせよ、新作にせよ、筆者が一度「小説を書くモード」に入ると、このエッセイを更新したり、皆さんに応援コメントを送ったりすることが疎かになる可能性があります。
しばらく音沙汰がなくなっても「まぁ、何か書いているか、調子を崩すかしてるんだろうなぁ」くらいに思っておいていただけると幸いです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。




