2章 似たもの同士
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
セイルズ様と不本意ながら追いかけっこした後、私は魔法騎士団本部へ訪れていた。
案内してくれたのは、魔法騎士副団長のへキーナ・エピード様。
彼女は、お兄様が殺されかけた時に、諦めず最後まで回復魔法をかけてくれていた宮廷魔法士だった。テロの後の人事で、功績が認められ、宮廷魔法士から魔法騎士副団長になったらしい。
彼女はとても優しい人で、セイルズ様とは正反対の方だった。年はお兄様と同じくらいで、今も、私が怯えないようにと丁寧に説明してくださっている。
「申し訳ございません。公女様。うちのア……団長が迷惑をかけてしまって。あ、紅茶とお菓子もあるので、用意しますね。」
「いえ、お気になさらず。確かに驚きましたが、もう大丈夫です。あと、私にはどうか気軽に接してください。名前もミリアで構いません。」
「え、そう?なら、そうさせていただくわ。私もへキーナでいいわよ。ふふっ。騎士団て男所帯だからミリアが来てくれて嬉しいわ。ゆっくりしていってね。」
「はい。ありがとうございます。へキーナ。」
私はへキーナが用意してくれた紅茶とお菓子をいただく。
そして、私の隣には絶賛お仕置きをされているセイルズ様がいた。彼は、魔封じの効果がある手錠をつけて、椅子に大人しく座らされている。魔法騎士団では、副団長であるへキーナの方が発言力があるようだった。いや、もしくは、へキーナのような性格じゃないとセイルズ様を働かせることが出来ないのかもしれない。
セイルズ様は、子どものようにへキーナに言った。
「ねぇ、もう手錠外してよ。妹ちゃんはここにいるし、追いかけたりしないからさー。」
「駄目です。殿下に言われましたよね?『リアに絶対触るな!』って。ちょうどいいので、そのまま書類の決裁をしてきてください。それくらいできますよね?」
「えーーーー。」
「駄々こねている間に少しでも仕事を終わらせた方がいいと思いますけど?」
「はいはい。分かったよー。」
そう言って、セイルズ様は部屋を出ていった。
私は、気になったことをへキーナに尋ねる。
「え…っと。先ほど、殿下はセイルズ様に注意をしていたのではないのですか?」
(王宮を走るなとか、人を追いかけるなとか……)
「いーえ?ふふっ全然違うわ。殿下はミリアへの独占欲をあのアホ…じゃなくて団長にぶつけていたの。ま、テロの日から分かっていたことだけどね。」
(今、完全にアホって言ったわね……)
へキーナはテロの日から殿下とお兄様がどれだけ私を心配していたかを話してくれた。あと、私の身体が崩壊していく様を間近で見ていた彼女も、ポーションを3本飲んで私に回復魔法を施してくれていたらしい。へキーナは私に感謝していると言ったが、私の方が彼女に感謝してもしきれないほどだった。
まさに、私たち兄妹の命の恩人だった。
私たちの話に花が咲いた後、セイルズ様が決裁が終わったと戻ってきた。そして、へキーナは私に手錠の鍵を渡し、セイルズ様と入れ替わりで業務に戻っていく。
セイルズ様はへキーナに対し、ひらひらと手を振った後、部屋に私たち以外誰もいないことを確認した。
そして、私の隣にぴったりと座る。
これは、私に触れていると言えるのではないだろうか。彼は、殿下に言われたことを早速破った。
その状態で、彼は私の耳元で重く静かに言う。
「妹ちゃんは、人間じゃないよね?どうしてかな?」
「………!」
驚いた。
しかし、私のように魔力を操作できるのであれば、不思議じゃない。
ただ、昨日、やっとのことでお兄様に打ち明けたことをあっさりと告げられるのは、少々腹が立つ。そして、私の返事を子どものようにワクワクして待っているセイルズ様には、もっと腹が立つ。
「ね、誰にも言わないから教えてよ。あ、魔法契約したって僕は構わない。…といっても、魔法契約するしか方法はないんじゃないかなぁ?」
「……それはどうでしょうか?私は…皆さんが思っている以上に残虐性を持った人間ですよ?」
私は淑女の笑みを貼り付けて、殺気を込めて言い放った。
記憶を消しても、またすぐにバレてしまう。となると、セイルズ様の言う通り、魔法契約しか方法がないが、私は「死」という選択肢もあるということを告げる。
「…へえ?脅そうと思ったら、脅されちゃったよ。ますます興味が湧くなぁ。さっき、ライルに甘えていた妹ちゃんとは思えないよ。君、相当強いでしょ?」
「さぁ?死にかけたことなんて数え切れないくらいありますから。強いかなんて、私には判断ができかねます。」
「あはっ!謙遜もしすぎるとただの皮肉だよ?で?僕のことを殺す?それとも魔法契約する?」
この人は死ぬのが怖くないのだろうか。平気で「自分の死」を選択肢に入れてくる。それとも、殺すはずがないと確信しているのだろうか。私は彼の魔力に触れることができないので、感情も分からない。
ただ、セイルズ様の思い通りに事が運ぶのは気に食わないので、私は別の選択肢を選んだ。
「ふふっ。殺しませんし、魔法契約も致しませんよ。ご自身を過大評価しすぎではないでしょうか。」
「へー!謙遜するくせに僕のことは過大評価なんて言うのか。君、性格悪いなぁ。でも、本当に魔法契約もいいの?」
「ええ。…人間の身体の時に魔法契約に違反しましたが、大したことありませんでした。…おすすめはしませんが。」
「!…やるなぁ。君、公爵令嬢なのに随分と怖いもの知らずなんだ。普通の人間だったら多分死んでるよ?」
「……だったら尚更ですね。先ほど思いましたが、セイルズ様ってものすごく仕事ができますよね?これ以上、優秀な人材を減らして、お兄様に負担をかけたくないんですよ。」
ちらっと見えたが、セイルズ様の机の上にあった大量の決裁書類が、へキーナと話している間になくなっていた。へキーナの魔力を見た限り、仕事に関しては、セイルズ様のこと信頼しているようだったので、本当に書類を片付けたのだろう。
セイルズ様は私の返答が予想外だったようで、吹き出すように笑って言った。
「あはははっ!いいなぁ。僕もこんな妹が欲しかったよ。」
「…私は遠慮します。私の兄はライル・レノヴァティオだけですから。」
「本当にライルが好きなんだねー。まぁいいや、魔法契約しなくても黙っていてあげるよ。その代わり、色々と教えてくれるよね?」
「身体のことなら答えませんが、魔法についてなら答えましょう。」
セイルズ様は、身体のことも渋ったが、テロの日に人間の身体ではなくなったことと、私自身の魔力以外に使える魔力があることを伝えれば、簡単に引き下がってくれた。後は勝手に想像してくれるだろう。
ちなみに、人間じゃないと気付いた理由は、やはり魔力が原因だった。
私たちは魔法について談義する。
魔力操作については我流でしかないので、セイルズ様の意見を聞くのがとても楽しかった。やはり、彼は無意識的に魔力を放っているようで、操作をしているというわけではなかった。
しかし、感覚というのは恐ろしいもので、魔力を放たなくても、なんとなく遠くの魔力を感じることが出来るらしい。私には到底できないことだった。
たまにヘキーナが来ては、セイルズ様が入れ替わりで業務に戻るの繰り返し。
時間はあっという間で、すぐにお兄様が迎えに来る時間になった。
迎えの時は、お兄様と一緒に殿下もいらっしゃった。
ちょうど、セイルズ様と私が新しい魔法を開発しようとしているところで、紅茶を魔力の形に見立てて空中で転がしているところだった。
お兄様は私たちの様子を見て呆れていた。
殿下はすぐに私を引き寄せ、セイルズ様にまた何か色々言っていた。
この日から、私の王宮通いが始まった。
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