2章 魔法騎士団長セイルズ・ジキール
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
一応、名前だけ出ていましたが、新キャラです。
私は殿下の魔力調整のため、王宮へ足を運んでいた。
今日はお兄様が見張ってくれるので、安心だ。
昨日の夜、お兄様に私の身体が人間じゃないことはバレてしまったが、今まで通り接してくれている。ただ、ドラゴンのことは何も言ってないので、結局詳しいことは何も伝えられていない。これ以上のことは、私の口から話せないことを伝えれば、お兄様は理解してくれた。
殿下の執務室に到着する。
そこには、正式に新しく設置されたお兄様の仕事用スペースがあった。
新しい人事により、お兄様は宰相補佐官を辞めて、王太子補佐官に任命された。宰相には陛下の元補佐官の方が任命されている。ただし、宰相の業務の一部をアレクシル殿下が引き継いだので、お兄様的には、以前とほとんど業務内容が変わらないそうだ。ただ、決済が全て殿下になったため、業務の効率は向上したとのことだった。
殿下がお兄様に咎めるように話しかける。忙しいようで、顔は書類を向いたままだった。
「ライル…王太子補佐官の癖に重役出勤だな。」
「あぁ、ちょっと二日酔いでな。妹と飲み過ぎた。なぁ?ミリア。」
「…はい。殿下、申し訳ございません。」
「え!ミア!?」
殿下が、ガタッと立ち上がり驚く。
王宮に、しかも王太子の執務室に、こんな簡単に入ってもいいのかというところだが、近衛騎士は私を見ても何も言わなかった。
それにしても、殿下は私のことを未だ「ミア」と呼んでいたことに驚く。何か理由があるのだろうか。私は、殿下に会いにきた理由を伝えた。
「殿下、昨日はありがとうございました。それで、魔力調整がまだ途中でしたので、お兄様に相談し、連れてきてもらったのです。」
「そうか。昨日は楽しんでくれたようで嬉しいよ。気を遣わせてしまって申し訳ないが……今日も会えて嬉しいよ。」
「…ありがとうございます。」
殿下は言葉一つ一つに想いを乗せる。言われる側は恥ずかしくも思うが、こういう時は、戸惑うよりも素直に御礼を言った方が面倒臭くなくていいと前世でのコラムか何かで読んだことがあった。
早速、殿下は業務を中断して、私をソファに座るように促す。
私の隣にお兄様が座り、正面に殿下が座った。お兄様が私にもたれかかってくるのでかなり重い。まだお酒が抜けきっていないのだろう。
「殿下。では、手を貸していただけますか?」
「あ、ああ……」
「アレク。妙な真似はするなよ。」
「分かっている。」
殿下の手を両手で包み、直接魔力に触れていく。
これで3回目。それでも、■■■を思い出さずにはいられなかった。前世では魔力なんてなかったというのに不思議だ。■■■との思い出が走馬灯のように流れていく。思わず、手を止めて感傷に浸りたくなってしまうが、私は最後まで殿下の魔力を調整した。
「これで終わりになります。身体の方はどうでしょうか?」
「ああ。身体が嘘のように軽い。魔法も安定して使えそうだ。ありがとう。」
「それは良かったです。お兄様もありがとう。」
「おー……頭いてぇ……」
殿下は元気になったのに対し、お兄様は体調が悪そうだ。しかし、二日酔いは私にはどうすることも出来ない。お兄様の様子を見て、殿下は苦笑いをして言った。
「ミリアリアは二日酔いにはなっていないんだな。お酒は強いのか?」
「あー私は……その……そうですね!お酒には強いと思います。」
(1回吐いたから大丈夫なんて、貴族令嬢として言えない……)
「……?」
「それより!私のことはミリアでかまいません。ミリアリアなんて長いでしょう。」
私はかなり強引ではあるが、話題を変えた。私の様子に興味を持っているようだが、言及することなく、殿下は新しい話題に乗る。
「では、私のこともアレクと呼んでくれるか?」
「え…?殿下のことを愛称で呼ぶなんて恐れ多くて私には……」
「でも、グレイル王子のことをグレイと呼んでいるだろう?」
「それは……そういう取引だったんです。呼びたくて呼んでいるわけではありませんよ。」
レギイラ侯爵の情報の代わりに友好関係を築くのが取引の条件だった。結局、グレイとは社交パーティ以降会っていない。まだ、王宮に滞在しているはずだが、わざわざ会いに行こうとも思わない。
殿下は「取引」と聞いてホッとする表情を見せた。
「『取引』と聞いて安心したよ。でも、『ミリア』と呼ぶのは嫌なんだ。皆がそう呼んでいるだろう?できれば、私だけの呼び名がほしい。」
「殿下だけの呼び名……ですか……」
「そう。もし良かったら『リア』と呼ばせてもらえるかな?…そして、他の者には呼ばせないこと。」
呼び名で何が変わるのかは分からないが、殿下がそうしたいならそうすればいいと思う。私が殿下を愛称で呼ぶのは外聞が悪いが、殿下が私を愛称で呼ぶのは問題ない。特に、私は陛下のお気に入りだと公表されている。今更、王族に特別扱いされても些細な問題だった。
「では、私のことは『リア』とお呼びください。殿下。」
「ははっ。ま、1つ進展したとして納得するかな。リア。」
その後、殿下は私が執務室を退出することを渋ったが、業務の邪魔をするわけにもいかないので、会話もそこそこにお兄様をおいて退散した。
このまま公爵邸に帰ってもいいが、オズリオ様から護衛騎士の件について話したいことがあると手紙をもらっていたので、直接会いに行くことにした。ちなみに、私を1人に出来ないとのことで、顔見知りの近衛騎士が護衛について来てくれている。
オズリオ様がいそうな訓練場まで歩いていると、前方から見知らぬ男性が近付いてきた。
体格から騎士だろうか。私は、いつものように彼の魔力を探ろうとした。
バチンッ
「………え。」
「ん?」
伸ばした魔力が、途中で別の魔力と混ざり合い、弾かれる。
初めての感覚だった。それに、弾かれた瞬間に不思議そうな声も聞こえた。弾かれたことを向こうも知ったということだ。
私はいつでも戦えるように心構えをする。
男性は大きな歩幅で私に近付いて問うた。
「今……やったの君?」
「……一体何のことでしょうか?」
無駄だとは分かっているが、一応とぼけてみる。
男性は、私の顔を覗き込むようにまじまじと不躾に見てきた。鼻筋が通っていて、垂れ目。真っ直ぐ綺麗な長髪で簡単に1つにまとめている。私の後ろに控えている近衛騎士が戸惑っているが、彼を咎めていない。ということは、それなりの地位に就いていて、魔力の動きを感じられる人物ということだ。
そんなの1人しか心当たりがない。
「お初にお目にかかります。私、ミリアリア・レノヴァティオと申します。失礼ですが、貴方様は、魔法騎士団長のセイルズ・ジキール様でいらっしゃいますでしょうか?」
「へぇ?どうして分かったの?あと、目が見えてないのに『お目にかかります』って変だよね。」
馬鹿にされたわけではないのは知っている。しかし、普段、滅多なことでキレることがない私だが、カチンと頭にきたのが自分でも分かった。お兄様に聞いていた通りの方のようだ。
「セイルズ様の武勇伝は有名ですから。あと、確かに目が見えていないのに『お目にかかります』は変でしたね。次からは気をつけます。」
「えー?でも、目が見えなくても、ある程度は視えてるんでしょ?」
「さあ?どうでしょう。」
「気になるなぁ。教えてよー。」
殿下とはまた違うタイプでグイグイ来る。
お兄様曰く、セイルズ様は興味があることに一直線で、それ以外にはかなり疎いらしい。そして、お兄様が王宮で1番苦手としている人物だと言っていた。
私は、できれば関わりたくないと思い、早々に退散しようとした。
「申し訳ございません。予定がありますので、失礼いたします。」
「じゃあ…ついていくよ。勝手に観察するから気にしないで!」
「……遠慮します。」
断ったつもりだが、セイルズ様は本当に付いてきた。
会話が通じない。やばい人だ。それに、セイルズ様から魔力が伸びてきているのが分かる。
私が歩きながら、魔力で障壁を作って拒否すると、さらに興味を引いたようで、さらにグイグイ来るようになった。
そして、王宮を舞台とした追いかけっこが始まるのであった。
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