2章 デート1
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
私は、デビュタント以降も誰からの誘いも受けず、公爵邸に引きこもっていた。
というより、引きこもっているふりをして、ずっと外出していた。
公爵邸で、メイド達とのお茶会も楽しいが、如何せん私には秘密が多すぎて、会話すること自体が難しい。話題を広げられないのが申し訳ない上に、彼女達が好む恋愛話も話せることがあまりなかった。
結果、私はエルに会いに行っていた。
エルにわざわざ会いに行かずとも、会話はできるのだが、側にいて話すのとはまた違う。エルに秘密にしていることも前世以外ないため、会話に気をつける必要もなかった。それに、修復魔法や魔力操作、新しい魔法の開発は1人より、エルがいた方が何かと捗った。
エルが顔を擦り寄せて私に問いかけてくる。
『ミリア…魔法の練習がしたいのは分かるが、ミリアの考えている魔法は王都を焼き尽くすことも出来る。』
「やっぱり…エルには私の考えが分かってしまうのね。」
『ああ。使う状況にならないといいな。』
「そうね。規模を小さくした魔法は余裕でできるようになったから…多分、やろうと思えば出来てしまうわ。大惨事にならないように、暴発させないように、魔力操作をもっと練習しないとね。」
エルの魔力のおかげで、私はポーション要らずになっていた。ただ、私自身の魔力がなくなれば、魔力切れで倒れてしまうことは変わらない。
普段の魔力操作は、全てエルの魔力で補填できるので心配ないが、私自身を修復する時は、私自身の魔力とエルとギラの魔力が必要になる。しかし、エルの魔力操作は問題ないが、ギラの魔力操作は出来なかった。
流石、古いドラゴンと言うべきか。ギラの魔力は引き出せるが、引き出せるだけで扱うことが出来ない。ただ、方法がないわけではなかった。殿下の魔力を操作した時みたいに、私の魔力を使って無理矢理操作すれば、なんとか扱える。
つまり、「私の魔力:エルの魔力:ギラの魔力=4:1:1」くらいの割合で扱えば、私自身を修復できるようになっていた。ただ、長時間はもちろん無理で、切り傷くらいなら治せると言ったところだ。そうなると、もう回復魔法を使った方がずっと楽なのだが、私に回復魔法は使えない。
しかし、ここまで出来るようになったのであれば、何回にも分けて修復魔法を使えば、眼球を治せるはずだ。眼球は無くなったわけではなく、損傷しているだけなので、手足を生やすよりはずっと簡単だろう。
少しずつではあるが、前進しているように思う。
『ミリア……そういえば、今日はお昼頃から殿下との予定があっただろう?』
「あー…そうね。そろそろ戻らないと怒られそうだわ。また来るね。」
私はエルにお別れを言って、公爵邸に帰った。
殿下とは変わらず手紙のやりとりを続けていた。
手紙によれば、連れていきたい場所があるという。ただ、服装はミアの時と同じような格好でと指定があったので、ドレスの準備は必要なかった。そのおかげで、エルに会いに来る時間が出来たとも言える。
私は、窓から自室に入り、メイドを呼んだ。そして、外出用のワンピースを選んでもらい、化粧と髪型を作ってもらう。殿下との外出となると、メイドは張り切り過ぎてしまうため、街で目立たないようにと念を押した。
目が見えないので、メイドには悪いが、身支度をした後は、サジアにも服装を確認してもらっている。男女の目で確認すれば、見た目に間違いはないだろう。
そして、ちょうどいいタイミングでアレクシル殿下が迎えにやってきた。
殿下の服装は、装飾品が少なかったので、下級貴族といったところだろうか。髪色は分からないが、おそらく変えているのだろう。なんだか懐かしい。
「ミリアリア。今日も綺麗だ。デートの誘いを受けてくれてありがとう。」
「で、デート…ですか。あ、いえ…お誘いいただきありがとうございます。」
確かに2人での外出は、デートと言えばデートだ。
しかし、はっきりとその単語を言われると「意識しろ」と言われているみたいで、むず痒い。
殿下は、私の手をとって、馬車までエスコートしてくれた。
実は、今日の誘いを受けたのは、お兄様とレオに頼まれたからだった。2人とも、何か知っているようで、「誘いを受けた方が良いことがある」と言ったのだ。魔力を見ても嘘を言っているようには見えなかったので、素直に従うことにした。
ガタガタと馬車が走り出す。殿下は私の正面に座り、何も話さない。
(…殿下を魔力で観察するのは久しぶりね……)
ここ最近、殿下の魔力を観察することを避けていた。簡単な感情くらいは見るが、他の人よりは入り込まないようにしている。理由は、殿下の感情が激しいから。ただ、もう何度も告白されているし、殿下と向き合うと決めたなら避けるわけにはいかない。
魔力を操作して、間接的に殿下の魔力に触れる。
そして、私はやっと、殿下の状態を知った。
(以前と比べて顔にも感情にも出していないけれど…これは酷いわ……私は、なんてことを……)
殿下の体調が悪いことは知っていた。しかし、出会った頃の殿下が倒れた時に比べて、体調が悪そうには見えなかったので、忘れていた。魔力操作で表情は分かるとしても、顔色は分からないというのに勘違いをしていた。
私は馬鹿だ。自分のことばかりに必死で周りを見れていなかった。
殿下の膨大すぎる魔力は、今でも身体を蝕み続けているというのに。
もしかして、私を気遣って何も言わなかったのだろうか。なら、私から言えば問題ない。
私は、右手のグローブを外して、殿下に手を差し伸べて言った。
「殿下。手袋を外して、私の手を握っていただけませんか?」
「……なぜ?勿論、貴女の手を拒むことはしないが…。」
「後で説明させていただきます。どうか、お願いいたします。」
殿下は、手袋を外して右手を差し出してくれた。私は、殿下の大きな手を両手で包む。
触れる理由は敢えて説明しなかった。私を気遣っているなら、理由を言わないほうが素直に行動してくれると思ったからだ。
私は、ゆっくりと殿下の指から直接魔力に触れていく。本当は心臓に近い部分に触れながらの方が楽なのだが、馬車の中でシャツをはだけてもらうのは、なんだかイケナイことをしているような気がしてやめた。それに、魔力操作が上達した今なら、指からでもなんとかなるだろう。
「……っ。」
少しずつ、殿下の感情が流れ込んでくる。
もう十分知っているし、殿下も隠していないが、やっぱり大きすぎる想いに押しつぶされそうになってしまう。
それでもなんとか耐えて、私は殿下の魔力を整えていった。
(本当に……■■■と…よく似ているわ。)
私を慕ってくれた可愛い後輩。以前、殿下の魔力に触れた時も思い出した、彼のこと。
■■■も、私の呪いのせいで死んだ。
彼には、たくさん支えてもらったのに、結局私が殺してしまった。私がちゃんと拒んでいれば、死なずに済んだのかもしれないのに。私が、彼の優しさに甘えていたせいで。
私は、殿下の魔力に触れながら、■■■の最期を思い出していた。
彼が、交通事故で亡くなった日は…ちょうど私の誕生日だった。
2人で祝いたいという彼に、私は1日くらいならと、了承した。いくら一緒にいなくても関係が続けば殺してしまうと分かっていたはずなのに。
そしてお祝いの後、2人でコンビニに行こうと言って外へ出た瞬間、彼は暴走車に巻き込まれて死んだ。私の目の前で。
通行人の声や救急車の音を頭の上で滑らせながら、私は何回目だろうと思った。
目の前で大切な人が、形を失って、赤く染まるのは。
交通事故だけじゃなく、自殺、殺人、病気……私はたくさんの死を見た。
もう、私に大切な人はいない。残されていない。
「生きろ」と言われたけれど、もう無理だった。生きたいと思える理由が残っていなかった。
■■■を失って……生きる意味を失って……
…そして、私は自分の首を切った。
ガタッ
「………え?」
瞬間、私は腕を思い切り引っ張られて、無理矢理意識が現実に引き戻された。
そして…
「…………んぅ。」
訳がわからないまま、私は殿下にキスをされていた。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク&評価してくださるおかげで、なんとか執筆ペースを落とさず頑張れております。
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次話以降も読んでいただけると嬉しいです。




