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2章 ライルとレオ

誤字脱字報告ありがとうございます。


ライル目線です。

(ミリア)が王宮に閉じ込められ…もとい、暮らし始めてしばらく経った。

兄妹喧嘩もあったが、仲は良好。ついでに、アレクと(ミリア)の関係も進展しているように思えた。


ミリアはアレクのことをどう思っているのだろうか。最初の方は、ぶっちゃけミリアはアレクのことを嫌っていた。アレクの行動を思えば、仕方ないように思う。しかし、2人が手紙を書き始めた頃から関係は変わっていった。色々あった今、ミリアはアレクのことを嫌ってはいないと思う。


そんなことを考えながら、書類を整理していたら、近衛兵が駆け込んできた。



「公女様が……連れ去られました!!」


「はあ?顔は見たのか!?」


「赤毛の若い男でした!おそらくレオです!」



ミリアはまた懲りずに脱走したらしい。連れ去られたとはいうものの、ミリアはレオとかなり仲が良いように思えた。レオを調べるにあたって、街で聞き込み調査をしたが、レオの評判は悪くないし、ミリアもレオといる時は楽しそうにしているとのことだった。

おそらく、心配する必要はないだろうが、アレクの耳に入ると面倒臭そうだ。幸い、アレクは陛下に呼ばれて席を外している。戻ってくるまで数時間はかかるだろう。



「他に情報は?」


「確か…武器屋に行くと。そして、公女様が殿下に心配するなと。」


「分かった。場所は大体分かるから俺が迎えに行く。それで、面倒臭くなるからアレクにはまだ言うな。」



一応、アレクが戻ってきた時のために、近衛騎士に伝言を残し、俺は武器屋に向かった。

後から知った事実だが、アレクはこの後すぐに戻ってきて、騎士を総動員し、ミリアの捜索を命じた。保険として伝言を残した自分の判断は間違っていなかったようだ。おかげで騎士を総動員するだけで済んだのだから。



俺は、頑固親父として有名な武器屋に入る。

門前払いされるかもしれないと思ったが、すんなり奥に通してくれた。何でも、ミリアと瓜二つだったからのようだ。


頑固親父が言うには、ミリアは外に遊びにいってしまったらしい。ある程度の事情を察してくれているようで、憐れむような目で見られた。苦笑いしかできない。


しかし、ミリアの代わりにレオがいた。

かき上げた赤髪にスラリと高い背丈。顔も整っている。街で聞く印象は、可愛らしい感じだったが、実物は凛々しくて綺麗な顔立ちをしていた。アレクが嫉妬するのも分かる。こんな男が好きな女の近くにいたらたまったもんじゃない。

レオは俺を見てすぐに話しかけてきた。



「あ、ミリアの兄貴だろ?やっぱりそっくりだな!」


「ああ、そういうお前はレオか?ミリアはいつ戻る?」


「2時間くらいで戻るんじゃないか?連れてこようか?」


「いや、戻るならいい。それよりレオと話してみたかったんだよ。」



頑固親父の仕事を眺めている時のレオは凛々しいが、話してみると確かに可愛らしい印象だ。人懐こいというのだろう。それにしても、全然逃げようとしない。探しても見つからなかったから、逃げられるかもしれないと思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。

レオは快く、話し相手になってくれた。



「単刀直入に聞くが、レオは何者なんだ?ミリアとはどういう関係なんだ?」


「んー何者っていうのは答えられない。ミリアとはそうだな…友達…?」


「なんで疑問系なんだよ。」


「友達だけど、一緒にいないと駄目だから友達っていうより…………」



レオが言葉に悩む。その言葉の先は「恋人」だろうか。ずっと一緒にいなくてはならない相手なんて伴侶以外、俺には思い浮かばなかった。

頭を悩ました末にレオが「そうだ!」と言葉を見つける。表情がコロコロ変わって、愛嬌があって憎めない。



「ミリアと俺は『親友』だな!」


「………!………そうかぁぁ……………親友か………」



レオが、にぱっと笑って出てきた答えが『親友』。肩の力が抜けた。レオの見た目が俺より若く見えるからだろうか。弟がいたらこんな感じなのだろうかと思ってしまう。街で聞いた印象は正しい、可愛げがある男だ。今も、俺の反応を見て、首を傾げて不思議がっている。とても分かりやすい。

俺はレオの反応が楽しくなってきていた。



「そうか。ミリアは良い友人を持ったみたいだな。」


「おお、今の兄貴っぽいな。」


「兄貴だからな。レオには家族はいないのか?」


「いる。でも詳しくは答えられない。」



レオと話してみて気付いたことは、素直に返事が返ってくるということだった。答えられないことには答えられないと言うので会話がしやすい。貴族のように、言葉の裏を読む必要がまるでない。オズリオの剣が通らなかったことも聞いてみたが、気分を害するわけでもなく、「答えられない」と言った。


そして、話しているうちに、レオが公爵邸に住むことが決まった。アレクは怒るだろうが、俺はレオを気に入ってしまった。裏表がなく、気兼ねなく話せる友人が俺も欲しかった。



そうして、ミリアとも合流し、3人で公爵邸に帰った後、アレクに事情を話すために王宮に向かった。


アレクは、ことの顛末を俺から聞いて、崩れ落ちた。

ミリアが王宮から出ていったこと、レオと一緒に公爵邸で暮らすようになったこと、色々なダメージを食らったのだろう。話を逸らすためにも、前から疑問だったことをアレクに聞いてみた。



「そういえば、体調はどうなんだ?ミリアに随分と治してもらってないだろう?」


「体調が良いとは言えない。でも、ミリアの()()姿()を見てから、体調が悪いのは何でもないことのように思えてきた。」


「あの姿って……ポーションを飲んだ時だな。…確かに、あれを見れば、疲れたなんて言えないよな。」



アレクはミリアの身体が崩壊していく様を思い出しているのだろう。目を瞑って、顔を歪めている。確かに、目と手足を失ったミリアに、弱音を吐いたり、体調が悪いから治して欲しいなんて言えないよなと思った。


だが、アレクの体調は悪くなる一方のはずだ。ミリアは、見た目があんなでも、正直元気が有り余っているので、近々都合をつけて、アレクの体調を治してもらうようにしようと決めた。



そして、レギイラ侯爵の処刑3日前、今後について話し合うためにアレクがレノヴァティオ公爵邸に訪れた。


結果、予想通りで、ミリアは王太子妃になろうとは露ほどにも考えていなかった。現実を受け入れられない妹と、理想を追いかけているアレク。可哀想だと思う反面、面白いとも思った。ミリアを含め、今後について話すなんて少し前までは考えられなかった。妹とアレクの恋愛について真剣に悩むなんてそのまた夢だと思っていたが、今はこれが嬉しい現実だ。

俺は、からかいつくしてやろうと思いアレクを責める。



「ミリアがアレクのことを何とも思ってないことも原因だろ。お前が王太子だとしても、好きでもないやつの妻になるために、自分の秘密を話そうとは思わないだろ。」


「………ライル、お前は言葉で私を殺す気だな?」



ミリアが困っている。普段、振り回されているのはこちらなのだから、今くらい良いだろう。今までと比べると、平和な話し合いだ。

曖昧な関係をはっきりさせるために、俺はさらに2人を追い込んだ。



「貴族なら政略結婚はよくある話だ。でも、これは政略結婚じゃない。レノヴァティオ公爵家には俺がいるし、そんなことをしなくてもセレリィブルグ王国で確かな地位を得ている。つまり、俺が言いたいのは、ミリアには幸せな結婚をしてほしいということだ。」


「でも…さっきは王太子妃になってほしいって……」


「それは俺の勝手な希望。ミリアの希望は?言っとくが、(つがい)とか関係なく、好きな女がふらふらしているのに、待てができる男はそうはいねぇ。待てをさせたいなら、餌をやれ。」


「餌って……」



アレクが睨んでくる。動物のような例えが気に食わないらしいが、俺を否定できる言葉もないらしい。これだけ追い込めば2人の関係がはっきりするだろう。

ミリアはゆっくりと気持ちを話しだした。



「殿下のことは、1貴族としてお慕いしております。ただ、殿下が私に向けてくださっている気持ちに同等するものではありません。私には恋愛感情がよく分からないのです。」


「ミリア、もっとはっきり言え。男は都合良く考えるぞ。」



流石に堪えきれなくなったのか、アレクが口を挟む。



「ライル……いっそのこと剣で私を刺してくれた方がマシだ……」


「そんなことをしたら反逆罪だな。ミリア、言えるな?」



ミリアは深呼吸をして、「支離滅裂なことを言うかもしれないが、聞いてほしい」と前置きした上で、唇を震わせながら話しだした。



「……私は、人に近付けなかったので、人を好きになるなんて考えたこともありませんでした。………殿下のことをどう思っているのかは…自分でもよく分かりません。……この関係を進展させたいとも思っていません。自分の身体のことを言わないといけないとは思いますが、言いたいとは思っていません。」


「………うん。」


「ただ………殿下の他にそういう方がいる訳でもなく………1番最初に言えるようになる方はきっと……殿下なのかなと思っています。い、今まで……想いを伝えてくれた方はいますが……1番私を悩ませるのは……殿下……です。」



ミリアの言葉に驚く。関係を進展させたいとは思わないが、進展させるならアレクになるということだ。顔を真っ赤にしてゆっくりと話すミリア。これを分かってやっているのなら立派な悪女だが、素でやっているなら男タラシだ。俺は、妹の行く末に頭が痛くなった。

結局、これではアレクが待てをできるわけもない。暴走させるだけだ。思った通り、アレクは良い顔をして返答している。



「私のことを考えてくれてありがとう。王太子妃のことは私が急ぎ過ぎた。ミリアリアを困らせたい訳ではないんだ。」


(いや、困らせたいんだろ!)


「ただ、私の気持ちを知ってもらえたようで嬉しいよ。これからゆっくり考えてほしい。それまで私は待てるから。」


(待つ気、さらさらないだろ!)



アレクの返答に心の中でツッコミを入れた。そして疲れたように天井を仰いだ。頭の中にあるのは「もう、勝手にしろ」という気持ちのみ。



(なに、やってんだろ……)



自分が蒔いた種に、自分が疲弊させられた。

そして、積極的なアレクを横目に、俺は、ミリアをどのように公表するのかを考えた。


読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク&評価のおかげで、執筆ペースを保てています。本当にありがとうございます。

もし、まだブックマーク&評価していない方がいらっしゃったら是非、よろしくお願いします。


次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

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