2章 (利害が一致した)友人との再会3
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
グレイはここからが本題だというように続きを話す。
「で、今日、当の本人に会ってみれば、王宮を抜け出してきたと言う。どうせ、蝶よ花よと大事に閉じ込められていたんだろう?公爵邸ではなく王宮から抜け出してきたと言っていたからな。」
「…………私はもう何も話さない方がいいのかもしれないわ…」
「ははっ!いや?ぜひ友人としてはそのままであってほしいな。」
「………お兄様にも同じようなことを言われたわ…はぁ。」
普通、私が生きているのなら公爵邸に住んでいると思うだろう。しかし、私は王宮から抜け出してきたと言った。私自身なぜ王宮にいるんだろうと思ったはずなのに、いつの間にか当たり前になっていた。元々、公爵邸に住んでいなかったことも原因かもしれないが…これでは情報を搾り取られただけだ。
私が王宮で暮らしている理由くらい誰でも分かる。殿下がそう望んだからだ。
自己嫌悪に陥っている私を無視し、グレイは続ける。
「しかも、聖女について何も話していないとなればな。過保護がすぎる。しかし、分からなくもない。好きな相手には、手足がなくて盲目だからな。ミリア本人はあまり気にしていないようだが、周りは絶望的だと思っても仕方がないだろう。」
「……そうよね。これは…他人から見れば大きなハンディキャップなのでしょう。………絶望を感じるには、私には不十分だけれど。」
「流石、化け物だな。それで?その身体は治るのか?腕を生やすことができるんだろう?」
「……もう話すわけないでしょう。」
「つれないなぁ。友人だろ?」
グレイは立ち上がって私に近付いてくる。既視感だ。殿下がアシルと名乗って私に近付いてきた時と同じ。あの時の殿下も、今のグレイも、私に触れようと手を伸ばしてきた。
「本当に友人だと思っているの?……私に、色仕掛けをしようとしているでしょう。グレイ?」
グレイは私に触れる直前で、手を止めた。しかし、手を降ろしてはいない。代わりに、呆れたように手のひらを返す。
「ミリア…本気でお前に男の友人が出来ると思っているのか?」
「失礼ね。友人になりたいと言ったのはグレイよ?」
「ああ、友好的な関係を望んだのは私だ。だが、友人からそれ以上の関係に進むことは別におかしなことではないだろう?」
「私が望むなら、ね。残念ながら、私は友人以上の関係を望まないわ。ほしい立場なんてものもないし、富も名声もいらない。グレイが私に色仕掛けしようと、何を用意しようと私の心は動かない。」
「……んーそれは困ったな。」
「困っていないのに、困ったような顔をしないで。…楽しんでいるでしょう。」
「困っているのは本当だ。楽しいという思いの方が強いがな。アレクシルも苦労しているだろう。好きな相手がこれではどう振り向かせればいいものか……本当に同情する。」
「……もう行くわ。ここにいたら、グレイを楽しませるだけだもの。」
私は部屋から出て行くために、立ち上がった。すかさず、グレイが私を引き止めるために、腕を掴もうとする。しかし、腕を掴んだのはレオだった。レオがグレイの腕を掴み、私と引き剥がす。
本当にレオは転移することに抵抗がない。グレイに見られてしまったが、レオが良いと言うなら良いのだろう。急に現れたレオに対し、グレイは眉をしかめた。
「……誰だ?ここにはどうやって……」
「んー?俺は迎えにきただけだ。ミリア、武器屋にライルが来てる。行くぞ。」
「ライルって……まぁいいわ。それじゃあね。グレイ。」
「お、おい!」
グレイの静止を聞かず、私たちは武器屋に転移した。
ちょうど逃げようと思っていたところだったし、タイミングがよかった。
そして、瞬時に武器屋に移動し、目の前に腕を組んだお兄様が現れる。
「本当にお兄様が来……」
ゴンッ!!
私は思い切り頭をゲンコツされた。お兄様がいると認識したすぐ、お兄様に殴られてしまった。でも、音の割には痛くない。もしかして痛くないように殴ったのだろうか。となると、怒っているが、実際はそこまで怒ってはおらず、これはパフォーマンスのために殴ったということだ。
「お兄様にこんな風に殴られたのは初めてだわ。でも、そんなに痛くな……」
「じゃあこれならどうだっ!!」
お兄様は私の頬を掴み、思い切り横に引っ張る。きっと頬が赤くなっているだろう。少し、痛いかもしれない。多分。いや、これは痛いと言った方が良いのだろう。
「い、いひゃい……」
「いや、嘘だろ。顔が笑ってる。はぁ……」
「はははっ!ミリアが不細工だ!!」
すぐに嘘だとバレ、お兄様はため息をつき、手を離す。レオは私の顔を見て笑った。不細工って言いながら笑うなんて失礼な友人だ。
「ミリア、何か言うことがあるだろう?アレクを宥めるの大変なんだぞ。」
「…あー………」
なるほどと理解した。お兄様は私が外出したことに怒っているのではなく、殿下を宥めさせたことに怒っているということだ。痛くないゲンコツの意味が分かった。とにかく、これは謝るべきだ。
「……苦労かけてごめん。」
「はー…ま、どうせまた逃げ出すんじゃないかって思ってたけどな。まず、お前を閉じ込めようなんて考えが間違ってるんだ。」
「ライルの言う通りだなー。今回連れてきたのは俺だけど。」
やはり聞き間違いじゃないらしい。レオはお兄様のことを呼び捨てでライルと呼んでいる。そして、お兄様も咎めていない。
「……2人は…仲良くなったの?」
「いや?少し話しただけだ。レオが勝手に懐いた。」
「懐いたって……」
「これからはライルが美味い飯を用意してくれるらしい!毎日だ!」
レオが目をキラキラさせた。仲良くなったというより、お兄様がレオを懐柔したということだ。レオが、食べることが好きというのは、事前に知っていたのだろう。確かに、街で聞き込みをすれば、すぐに分かる情報だ。それよりも気になることをレオは言った。
「毎日って……もしかしてレオを公爵邸に住まわせるつもりなの?」
「ああ、そうだ。その方が監視できていい。ついでにミリアも戻ってこい。アレクには俺から言ってやる。」
「え!?いいの!?」
「そんなに喜ぶなんて……やっぱりアレクに脈なしだな。面白いからいいけど。ただし、ミアになるのは禁止だ。分かったな。」
「分かったわ。でも、殿下を説得なんて出来るの?」
「言い方次第だが…ここまで脱走されれば、納得せざるを得ないだろう。ただし、次アレクに会う時は気を付けろよ。」
「…う、気を付けるわ。」
話を簡単にまとめた後、親父さんと一緒に私は義手と義足を装着した。淡い赤色に光る魔石は、エルと私の魔力を流すと、銀色に変わったらしい。まるで私の髪色に合わせたように。
「綺麗だな。」
「…早く、私も見てみたいわ。」
魔力は問題なく流れた。でも、動かすとなると別だ。私は手を握ったり開いたりしてみる。力加減がわからない。それに、動きがまだぎこちない。練習しなければ。
私の様子を見て、お兄様が心を見透かしたように言う。
「しばらくは退屈しなくて済みそうだな。」
「そうね。早く使いこなせるようになりたいわ。」
親父さんには、時々メンテナンスに来てくれと言われた。レオもそうだが、理想通りの義手・義足を制作してくれた親父さんには感謝しきれない。代金はお兄様が支払った。レオが調達した素材で十分だと親父さんは言ったが、お兄様が折れなかった。
私は、欲しいものは自分で稼いだお金で買うし、宝石や洋服等を好んで買ったことがなかったので、公爵家のお金を使うことに違和感があった。これからは、これが当たり前になっていくのだろうか。
レノヴァティオ公爵家に帰る。
全てが違和感。でも、ずっと欲しかったもの。慣れないことに戸惑いつつも、その変化を心地いいと思いながら、私は、お兄様とレオの3人で帰路についた。
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