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2章 (利害が一致した)友人との再会2

誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。

グレイル王子は平凡な青年に変装していた。


魔力で顔の輪郭をなぞることはできても色は分からない。もし、髪色や瞳色を変えただけの変装であれば、私には、変装しているのか、そうでないのか判断ができない。今後、気をつけなければと反省した。

ただ、今回は間違いなく変装しているし、それを分かっていたのに声に出した私は、目が見えない以前のミスだ。



「グレイ…貴方がここにいるということは、オズリオ様が戻ってきたということね。」


「そうだ。私たちは友好国だからな。」


「……。」



グレイの考えていることは分からない。彼の魔力はあまり反応を見せないので、嘘を言っているのかどうかを判断するのも難しい。友好的だと見せかけて、裏切るなんて彼が好きそうな戦略だ。実際、そうやって彼は王太子の地位を得た。



「ミリアこそ、こんなところで何をしている?」


「あー……そうね……本当に、何をしているの、かな?」


「あ?」



無駄だとは分かっているが、苦笑いをして誤魔化そうとする。

しかしその時、街を警護する騎士がバタバタと近くにやってきた。誰かを探している様子だった。その誰かなんて聞かなくても分かりきっている。……私だ。



「あ、ここはまずいわね。……私は行くわ。グレイ、離して。」


「ほぉ……。騎士たちはお前を探しているのか。なぜだ?理由を話せ。」



グレイは私の右腕を掴んで離さない。騎士たちはどんどん私たちの側に来る。ついには、「盲目の少女を探している」と聞こえてきた。



「グ、グレイ!……面白がっているでしょう?」


「ああ、面白い。私は友人が困っている姿を見るのが好きなんだ。」


「……悪趣味ね。…………ーーー。」


「ん?聞こえん。ちょっと周りがうるさくてな。」


「だから…!!………王宮から抜け出して…遊んでいたの。」



正確には「連れ去られて」だが、レオのことを話すわけにはいかない。それに…あながち間違いでもない。私はまた抜け出すだろうと思っていた。

グレイはたっぷり時間をおいて、呟くように言った。



「………………同情するわ。」


「え?どういうこと……って、……え!?」



グレイは私の手を引いて走り出した。騎士がいない場所に行くのは大賛成だが、義足で走るのは難しい。走ることだけを考えれば、義足無しの方が走りやすいのだが、それだと短時間しか保たない。



「わ……あっごめ!!!」

「は?……え!?」



案の定、私は途中でこけた。

盛大に正面から。そして、私の腕を掴んでいたグレイも私のせいでバランスを崩し、大きな音をたてて、こけた。近くにいた街の人のクスクスという笑い声が嫌でも耳に入る。


1国の次期王を転ばせた。元はといえば、グレイのせいであるが、流石に申し訳なさを感じる。まさか私がこけるとは思わなかったのだろう。


グレイは無言で立ち上がり、無言で私を抱きかかえて、無言で走った。そして、お店で個室を案内され、2人して息をつく。この王都をよく調べている。グレイは、どのようなお店がどこにあるのか、よく知っているようだった。



「さっきは…その、ごめんなさい。もう、分かっていると思うけれど、私は右足が義足なのよ。それで左腕もないし、目も見えない。」


「………。」


「だから、上手く走れないのよ。そ……それで、こっこけちゃっ………も、もう無理だわっ…ふっふふっ」



笑わないように必死で表情を作っていたけれど、こけた時のことを思い出して口元が緩んでしまった。これでは不敬罪だ。しかし、面白いのだから仕方がない。



「おい………真面目な顔で話始めたと思ったら……はぁ。笑いを堪えていただけか。」


「だ、だって……こけた時に、ズザザザーって盛大に音が……ふっ…あはははっ!」


「……忘れろ。」


「無理だわっ。」



グレイは私を咎めるつもりはないらしい。だって、私が笑っているのに釣られてグレイも笑い出したから。友人関係というのも悪くないかもしれないとほんの少しだけ思った。

私たちはひとしきり笑った後、水を飲みながら話し始める。



「まずは感謝を。私の事情を察して、貴方の護衛も撒いてくれたのね。」


「気付いていたか。いや、まぁ気付くか。」



グレイは一見1人で歩いているように見えたが、実際は違う。一定距離を保って何名か護衛がついていた。王太子である以上、護衛がいるのは当たり前だが、私のために、彼は自分の護衛を撒いたのだ。



「王都にグレイル王子が到着したという話はまだ聞いていないわ。…身代わりの者に謁見をさせるつもりなの?」


「謁見は明日だ。それより前には王太子に戻る。一度王宮に入ってしまえば、王都を見物するのも難しくなるからな。…今だけだ。」



オズリオ様は戦争の後処理のために国を不在にしていた。しかし、グレイの策略のおかげで、フュナンゼ国とセレリィブルグ王国が友好国になることが決まったので、グレイとオズリオ様が一緒に帰還するということは殿下から聞いていた。

そんな中、グレイが1人で街に忍んでくることは不可能だ。だから、別の者にグレイル王子の真似をさせていることは容易に想像がつく。彼の側近…確かラルフさん…は相当苦労しているのだろう。いや、もう慣れっこなのかもしれない。



「しかしまさかな。こんなところで噂の聖女様に会うとは思っていなかったな。」


「聖女様?……聖女って童話に出てくる人よね?噂ってどういうことかしら?」



グレイから聞きなれない単語が出てくる。聖女に会った?今、グレイが会っているのは私だ。それに噂というのはどういうことなのだろう。グレイが何を言っているのか全く分からない。



「は?知らされていないのか?……本人が?」


「本人って……まさか……その聖女って私のこと?」



まさかのまさかで、私は聖女と噂されているらしい。殿下やお兄様は、私の立ち位置や評判については一切話さなかった。意図的に隠しているのだろうと思っていたが、まさか「聖女」となっているとは、思いもしなかった。ちなみに私は、伝えるのが忍びないほど評判が悪いのだろうと考えていた。


グレイは私の反応に驚いて、少し考えた後、こけた時よりも楽しそうに笑った。



「はははっ面白い。今、ミリアがどういう状況なのか見えてきた。なるほどなぁ。アレクシルに愛されているのだろうと思ってはいたが、ここまでとは。くくくっ…思ったより楽しめそうだ。」


「はぁ…情けないのだけれど、私にはグレイが笑う理由が分からないわ。」


「そうだろうな。まぁいい、私ばかり情報を得るのも不公平だ。ここは友人として……いや、取引にしよう。私が知りたい情報を教えてくれたら、私が笑った理由を教えてやろう。つまり、情報の交換というやつだ。」


「また取引……応じるかは、グレイが知りたい情報によるわね。」



正直、聖女の噂について教えてくれるというなら取引には応じなかった。噂なんて自分で調べればいいだけだからだ。しかし、グレイは「笑った理由」と言った。それには、「アレクシル殿下が私を愛していると知っている理由」も含まれるだろう。それは、私が調べただけでは分かりっこない情報だ。



「そうか。私が知りたいのは、以前会った時、どうして私がグレイルだと気付いたのかということだ。」



以前というのは、お兄様がアーマードグリズリーに襲われた時、私がグレイと友人になった時だ。あの時は、私がフェレスであること、簡単な感情が読めること、一瞬で移動できること、エルと友達であることを知られた。今思い出せば、私は情報を漏らしすぎだと思う。ただ、ここまで知られているのなら、問題ない。



「……そういえば、言ってなかったわね。……いいわ。今の私を見ればすぐ分かってしまうことだもの。」


「即答か。これは選択を間違えたかな。それで?どうして私だと分かった?」


「答えは簡単よ。私、グレイに会ったことがあるの。だから知っていたというわけ。…もう少し詳しく言うなら、私は顔を見て人を判断していないのよ。私は今、盲目だけれど、グレイのこと気付いたでしょう?」


「……確かに簡単だったな。今日のことを踏まえて、少し考えれば気付くことだった。ただ、その回答じゃ取引に応じることはできないな。私とどこで会った?そして、ミリアは何を見て人を判断しているんだ?」


「意地悪ね。」


「言っただろう?私は友人が困っている姿を見るのが好きなんだ。」



私はため息をついて、まぁいいかと考える。



「フュナンゼの王宮に忍び込んだのよ。だから一方的に知っていたの。そして、私は人の魔力をみて判断しているわ。……これ以上は答えられない。」


「そうか、王宮に……警備を強化しなければならないな。普通なら罪に問うところだが、証拠がない。不問にしてやろう。それで、魔力か。これは次元が違いすぎて対処のしようがない。……いいだろう取引成立だ。」



グレイは、腑に落ちてなさそうに話すが、なんとか納得してくれたようだ。こんなに答えてよかったのかと思わなくもないが、答えてしまった後に考えても仕方がない。それに、答えたからといって不利になるほどの情報でもない。それよりも、私はグレイの答えが気になった。



「ミリア、お前…ライルの身体を治したらしいな。腕を生やすレベルで。それで、ミリアリア・レノヴァティオは、童話に出てくる聖女のようだと言われた。目撃者も多いから、信憑性の高い噂として貴族を中心に流れている。」


「そう…だったのね。」


「ああ。そして、ミリアが死にかけの状態で姿を消した。状況が状況なだけにもう死んだという噂も流れた。だが、そんな噂が流れているのにも関わらず、ミリアの功績を王家が肯定した。騎士が死んで2階級特進というのはよくある話だが、今までのミリアの噂まで払拭し始めた。まるで、ミリアが活動するにあたって支障がないように。」


「だから……私を見て『やっぱり生きてた』なんて言ったのね。」


「そういうことだ。はぁ…誰が主導しているのか調べれば、アレクシルだった。あーこれはアレクシルがミリアを好いているなと馬鹿でもわかる。」


「馬鹿でもって……そんなに分かりやすいほどの行動だったのね。というか、そんなことまで調べられるなんて、相当優秀な諜報員がいるようね?」



グレイはニヤリと笑う。

誰が主導して動いているのかなんて、王宮の中にスパイがいると言っているようなものだ。それか、私のように王宮に一時的に忍び込んでいるのか。


本当に油断ならない友人だ。



読んでいただきありがとうございます。


ブックマーク&評価してくださるおかげで、やる気が上がります。

なんとか執筆ペースを落とさずに更新できているのは読者の皆さんのおかげです。

ありがとうございます。

まだの方は是非、ブックマーク&評価をお願いします。


次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

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