1章 ここから新しい人生設計がはじまる2
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
更新日は水・金・日です。
ギラは、私に淡々と説明した。
私が国に残っても問題なくなったこと、私の身体のこと、何故ギラは私を生かしたのかということ。
想像以上の事実。受け入れるのに時間がかかった。丸一日、エルと2人にしてもらって、色々なことを考えた。眠ることもせずに考えた。
ギラは私に会った時から、これを計画していたのだろう。今まで気にかかっていたけれど、その疑問を口にしなかった、いくつかのことに説明がつく。
私が命をかけても、かけなくてもこの結果になっていた。
「ははっ……まさかこんなことになるとは、ね。」
『ミリア、大丈夫。1人にはならない。』
「エル……ありがとう。本当に……」
久しぶりに涙が出た。まだ、涙が出るんだと気付かされた。あぁ、私は何に対して泣いているのだろう。悩んでも仕方がないことは分かっているのに。涙を止めるため、気持ちを落ち着かせるため、私はできるだけ明るい声で愚痴を言った。
「それに、してもね……っ……嬉しい、ことを…先に言うのはない、よね!本当に……ギラは、人を上げて……落とすんだから……もう、っ……やめてほしい、よね。」
『……そうだな。』
これからは大好きな家族と一緒にいれることが嬉しいこと。そして、私の身体と生かした理由が悲しいことだった。順番なんて関係ないことは分かっている。先に悲しいことを言われても、それが悲しすぎて……どうすることもできないのだから。
「明日……私、王都に戻るね。木の枝を足にくくりつけて、魔力で補助すればなんとか歩けると思うわ。目は……魔力を広げれば大丈夫。今までも何度かやってたから。色とか細かなことは分からないけれど………魔力、もらうね。」
『私はここにいる。でも、呼べばすぐにミリアの下へ行く。……声は届くから。無理はするな。』
「ええ。頼りにしてるわ。」
魔石が埋め込まれているおかげで、私はギラとエルの魔力をもらうことができるようになった。しかし、ギラの魔力は扱うのが難しい。エルの魔力は私との繋がりが強いため、なんとか扱えるというところだった。身体を支えるための魔力はエルから供給してもらうことになりそうだ。
私の魔力は相変わらず、少ない。
そして、私の身体を修復するには3つの魔力を同時に扱う必要がある。見た目は人間だが、見た目が変わらないだけで、中身は違う。この身体は私が知っている身体ではなくなっている。人間でも魔獣でもない。
しばらくは、目や手足がないまま生活していかなければならない。
「そういえば、オズリオ様とはあれからどうなったの?」
『あの後は……』
リーナは無事なのだろうか。
エルの話ではリーナは無事に保護された。しかし、レギイラ侯爵の刑が裁判で確定次第、刑が執行されてしまう。日本の裁判は何年もかかっていたが、この国の裁判はかなり早い。日本ほど法律が複雑ではないし、侯爵なら罪の重さで斬首刑は免れないだろう。何人も貴族を殺したのだから。
刑が決まっているのなら裁判を長引かせる必要はない。
ーただのリーナとして生きていきたい。
私は、彼女に幸せになってもらいたい。
…
夜明け、私はギラと一緒に転移した。
私達は、1人暮らしの部屋に到着した。いつの間に、この部屋に魔法陣を作っていたのだろう。ギラは私を置いてさっさと帰っていったので、私の疑問の答えをもらうことは出来なかった。
鼻に入ってくる空気が埃っぽい。しばらく主人がいなかった部屋は寂しい、気がする。
私は髪色を黒に変化させた。鏡で確認はできないが、何度もやっている魔法なので、大丈夫だろう。化粧はできない。目が見えないのに眼鏡をかけるのも不自然だ。私の瞳は…綺麗な眼球ではなくなっているらしいので、目を開いて誤魔化すことも出来ない。三つ編みは…やめておこう。長い髪は、時に顔を隠すこともできる。
服装は、デザインを気にする必要がないワンピースにした。これなら変な服装で目立つことはないだろう。色が分からないというのは思っていた以上に不便だった。
エルの魔力を引き出してみる。
魔石が少し熱いが、我慢できる程度だ。魔力を霧のように広げて周囲を把握する。自分の魔力ほどではないが、なんとか扱えそうだった。しかし、修復魔法に使うにはまだまだ修練が必要だろう。
意を決して、外に出る。
思ったより部屋で過ごしていたようで、もう人々の活動時間になってしまっていた。
(上手く歩けないわね…でも前に進んでいるわ。)
これなら公爵邸まで行けそうだ。
この時は、そう思っていた…
「はっ…はっ…はっ……はぁ……。」
(もう…無理ね……休憩……)
私は、道の端に寄って座り込んだ。
エルから供給される魔力はまだまだ余裕がある。しかし、1ヶ月半ぶりに起きた、今までとは違う身体を扱うには体力がなかった。
それに、魔力を使い続けるのも難しい。
これからは霧状にした魔力と身体のバランスをとる魔力を常時操作しなければならない。脳の消耗が激しい。甘いものが欲しい…
「そこのお嬢さん、大丈夫かい?」
「……。」
「ちょいと!お嬢さん?」
「え、あ…私だったのね……あの……ちょっと疲れてしまって…休憩してるんです。」
女性に前から声をかけられた。声からして若い女性だろうか。ハスキーボイスが格好いい。
それにしても、目が見えないのは本当に不便だ。休憩している間も霧状の魔力は操作し続けなければならないようだ。
誰か前方にいるとは思っていたけれど、まさか私に声をかけているとは思わなかった。
「あれ……?貴女………」
「?……なんでしょうか。」
(…見られている?……この視線、どこかで…)
「あーそういうこと……理解した。そこに美味しい菓子屋があるんだが、一緒に休憩しよう。…肩を貸すよ。」
「あ…ありがとうございます。」
悪意があるようには見えない。それに、休憩できるなら休憩したい。ここで座り込んでいるよりも、お店で休んだ方が安全なはずだ。私は女性の肩を借りて店に入った。
「助けていただきありがとうございます。正直、困っていたので助かりました。」
「目が見えないんだね。それに左手と右足も…難儀なものだ。」
「…ええ。」
彼女は私の代わりに、紅茶とケーキを頼んでくれた。食べられるかと聞かれて、私は問題ないと答えたからだ。ちょうど甘いものが食べたいと思っていたので嬉しい。
ごろごろとフルーツが乗っているケーキではなく、飾りの少ないチーズケーキ。目が見えなくても、片手でも、食べやすいケーキ。気を遣ってくれたのだろう。…美味しい。
彼女の名前を聞くと、占い師や魔女と呼ばれていると言い、好きなように呼べと言った。助けてもらった立場で占い師さんと呼ぶのも気が引けて、「ウィズ」と呼ばせてもらうことにした。私は悩んだ結果、「ミア」と名乗った。
「ウィズ、ケーキを頼んでくれてありがとう。美味しいわ。」
「目が見えなくても上手に食べれるね。声をかけてよかったよ。」
ウィズが敬語はやめてほしいと言ったので、私はお兄様と話す時と同じように話す。
「それにしても…ちょっと見ない間にこんなに変わるとはね。私の想像を超えた結果だ。…未来が見えないわけだ。」
「え?……ウィズは私のこと…知って………待って。私も、ウィズのことを知っている気がするの。思い出すから何も言わないで。」
「ん?ミアは私のことを知らないだろう?…まぁ、待ってあげるよ。」
ウィズはなんだか楽しそうだ。悪意を感じられないから私も気を抜いてしまう。ウィズは、私を観察しているように見ている気がする。妙な視線だった。
「妙な視線……あ、もしかして……前に私って男装して、た…?」
「へぇ!!やっぱり気付いてたんだね。そう、あの時見てたのは私だ。」
お兄様の護衛として、男装して王宮に入った時、妙な視線を感じると思っていたが、まさかウィズだったとは。
どこまで私のことを知っているのだろう。どこまで私のことが知れ渡ってしまったのだろう。
そして、私は1つの可能性に気付く。
「え……という、ことは………」
「あ、来たね。ミア、お迎えだ。」
王宮に出入りしていた占い師。あの時、占い師は誰といた?誰の視線と一緒に感じた?
お迎えと聞いて、思いつくのはもちろん、1人しかいない。
「ミアの王子様だ。」
読んでいただきありがとうございます。
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次回で1章が完結になります。
せっかくなので、完結と同時にタイトルを変更しようと思います。何にしようかな。




