1章 神への誓い
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更新が遅れてすみません。更新日は水・金・日です。
アレク目線最終です。
テロの日の夜、フュナンゼ国がセレリィブルグ王国に攻めてきた。
フュナンゼ国の先導者は第一王子。テロで王都が混乱している隙を狙ったに違いない。あらかじめ、テロが行われることを知っていたのだろう。
私はレギイラ侯爵の証拠集めをセジルに命じて、部隊を編成し、攻めてきたフュナンゼ国の鎮圧に向かった。テロで混乱はしていたが、ミアが未然に防いだおかげで、ある程度の騎士を集めることができた。
私達は、フュナンゼ国の兵士と対峙する。私は最初に大掛かりな魔法を放った。セレリィブルグ王国の王族の得意魔法は、膨大な魔力を最大限に使った攻撃魔法。この魔法で先制し、勝利を収めるのが常套手段だった。
しかし、魔法を放ってフュナンゼ国が混乱した後すぐ、フュナンゼ国の第二王子であるグレイル王子がしゃしゃり出てきて、セレリィブルグ王国側についた。つまり、グレイル王子が第一王子を裏切ったということだ。グレイル王子はあたかもセレリィブルグ王国の味方であるように振る舞った。
ライルとミアから話は聞いていたが、グレイル王子の腹は真っ黒ということだ。しかし、グレイル王子のおかげで戦はすぐに終わった。後処理は、ハイノール伯爵とオズリオに任せて、私はすぐに帰還した。
「証拠の方はどうだ?」
「順調に集まっています。これなら裁判も難しくないでしょう。…ミアさ…ミリアリア様のおかげですね。」
ミアのおかげで、レギイラ侯爵の余罪も多く見つかり、裁判までは暫く時間がかかるだろうが、斬首刑は免れないだろう。
テロから1週間、ミアはまだ生きている。
ポーションを大量に飲んだ影響で、身体は崩壊しているが、何重にも回復魔法をかけ続けているため、なんとか生きながらえている。ただ、それでも崩壊は進んでいる。医師の見立てでは、もってあと3日とのことだった。
「もう死なせてあげた方が……」
「回復は不可能では……」
いろんな声を聞いた。それでも、ミアの治療に全力で専念してくれる者も少なくなかった。それは、ミアを聖女だと崇める者が出てきたからだろう。ミアの偉業は多くの者が見ている。その者達から噂は広がり、ミアを聖女と呼んで神聖視する団体まで出来ていた。
私はセジルと証拠書類をまとめていた。
あと3日。寝る間も惜しんで業務に邁進していたが、騎士達に止められ、執務室に放り込まれた。仕方なく、執務室で出来ることを片付けている。
「殿下…少し休憩されては?このままでは殿下も身体を壊してしまいます。」
「私は大丈夫だ。寧ろ、何かをしていなければ落ち着かない。」
「しかし……」
「くどいぞ。…それよりも、ミアの治療について進展はあったか?」
ずっとミアの側にいたいが、私に回復魔法は使えない。私にはミアのような奇跡を起こすことはできないのだ。それに、金輪際、こんなことが起きないように、ミアが離れたくなくなるように、彼女が笑えるように国をまとめあげると誓った。その誓いを破るつもりはない。
「……これ以上の治療は不可能です。もう、どうすることも……」
「それ以上は言わないでくれ。…ライルは?」
「レギイラ侯爵の証拠集めと……あと、闇市をうろついているそうです。正規品ではない薬を探しているようです。」
「……藁をもすがる思いで闇市にか…」
ライルはテロの次の日に目を覚ました。
自分の姿と妹の姿を見て、全て理解したようだった。ライルはミアの回復魔法について知っていたのだろう。起きてすぐ、セジルに報告を受けて動き出した。私とは一言言葉をかわしただけだった。
「……レオの方はどうだ?」
「いえ……なんの手がかりも掴めていません。」
「くそっ………」
ミアを助けることが出来るかもしれない人物として、ミアの友人であるレオの捜索も同時にしていた。しかし、彼はもう王都にいないようで目撃証言すらなかった。八方塞がりだ。
何か、何か手がかりはないかと頭を悩ませている時、執務室の扉が大きな音を立てて急に開かれる。ノックもない。こういうときは決まって嫌な報告だ。
「休憩中、失礼します!!!殿下!!公女様が消えました!!」
「な!?消えた!?」
(ミアが消えた…消えた?どういうことだ?)
医務室への移動中に、騎士から詳細な報告を受ける。ミアの近くにいた魔法士は皆眠らされ、ミアが消えたというのだ。ミアは自力で歩けるような身体ではない。となると、誘拐されたということになるが、王宮でどうやって?
現場を見ても、誘拐された痕跡などなく、騎士の言うように消えたと表現するのが最もふさわしい状態だった。
急いでミアの捜索隊を編成したが、捜索の甲斐はなくミアを見つけることはできなかった。
それから半月が経過した。
しかし、ミアの痕跡すら見つけることが出来なかった。
父上はミアと魔法契約を結んでいる。父上曰く、魔法契約は破棄されてしまっているとのことだった。契約上、破棄はミアからしか行えない。ミアが自分で破棄をしたのか………ミアが死亡し、契約者がいなくなったか。
父上からの絶望的な言葉。それでも、私もライルも諦めることはなかった。
…
私は、レギイラ侯爵が捕らえられている牢屋の前に1人で立っていた。夜中にも関わらず、一睡もできない私は、気付けば、人払いをして侯爵に会いにきていた。罵りにきたのか、蔑みにきたのか、怒りをぶつけにきたのか、自分でも分からない。
人の気配で起きたのか、ずっと起きていたのかは分からないが、突っ立っている私を見て、侯爵は鼻で笑うように話しかけてきた。いつも綺麗にまとめられていた髪は痛み、頬はこけ、無惨な姿だった。
「ハッ!化け物は死んだのか?」
「…………。」
(化け物…ミアのことか。私からすれば侯爵の方が化け物だ。)
「何も言わないということはやはり死んだのか!ははははっ!!!」
侯爵は狂ったように笑う。宰相として尊敬していた方の末路がこれとは…。侯爵は精神的におかしくなっていた。
「ははははっはっ……はっ…ハハッハハハッ!!」
「…!!」
侯爵が天井に向かって笑っているのは変わらない。しかし、途中から雰囲気が変わった。何も変わらないように見えるが、なんというか目の色が変わったといえばいいのだろうか。侯爵らしくないといえば、牢屋に入ってかららしくないのだが、侯爵ではないように見えた。
私は侯爵から距離をとり、身構える。
侯爵は私の動きを見て、ぐるりと頭をこちらに向けた。そして口角を横に伸ばしてねっとりと笑う。
「ハハッ!君がアレクシルだね?一時的にキーシャスの身体を貸してもらったよ!」
「………誰だ?」
(侯爵じゃない!!どういうことだ?操られている!?)
目の前の現象に理解が追いつかない。侯爵の身体が乗っ取られたのか?侯爵が演技している可能性も否めないが、目の前の存在感がレギイラ侯爵であることを否定する。
目の前にいるだけで重圧に押し潰されそうになる。汗が滝のように流れてくる。立っているだけでやっとの状態だった。
「簡単に、分かりやすく言うと僕は『神』さ!!あの子を介して、ギラの血が入ったからすんなり来れたよ。もうキーシャスは用済みだよね?僕の力は強すぎるから、きっとキーシャスは壊れてしまうけどいいよね?」
「……『神』だと?…到底信じられないことではあるが、私の本能が肯定している。」
『神』と言われて納得してしまった。今までに感じたことのない重圧。そして、占い師は神の存在を肯定していた。ミアの呪いは神の仕業だと。それに、神ではないと否定して機嫌を損ねてしまえばどうなるか分からない。神は気まぐれな存在らしいから。
「へぇ!流石、王子は話が早くて助かるよ!!本当はこんな風に出てこないんだけどさ。アレクシル、君は私に誓ったよね?あの子のために。君のあつ〜い想いには感動したよ!」
「あの子?ミアのことか?」
「そうだよ!やっぱりあの子を君の番に選んで正解だったよ!」
「番……それはミアを不幸にするためか?なんだってミアがそんな…」
「呪いを受けなければ」と言おうとした。占い師は、ミアは神に嫌われていると表現していた。しかし、『神』は私の言葉を遮ってブンブンと首を振る。
「違うよ!違うよ!僕はあの子に幸せになってもらいたくて君の番にしたんだ!どうして不幸なんて思ったんだい?」
「幸せ?……ミアに呪いをかけたのは神だと占い師から聞いた。」
「ああ!呪いのことか!呪いをかけたのは僕じゃない。けど、呪いを払うことも出来ない。だから、色んなことをしてあの子に幸せになってもらおうとしているんだ!」
「幸せになってもらおうと……?ミアは!ミアは生きているのか!?」
『神』じゃなければ誰がミアに呪いをかけたのか。どんな呪いなのか。聞きたいことは山ほどあるが、それよりも『神』の言い方が引っかかった。私が今1番知りたいこと、それはミアの安否だ。早く、早く答えてくれ。
「あの子は生きているよ。それにしても家族ってすごいね。平気で命を放り出すんだから。それともあの子の家族が特別なのかな?」
「ミアは生きている……!生きているのか……よかった……」
「嬉しそうだね。やっぱり君の番に選んで正解だったよ!」
「それで!ミアはどこにいるんだ!?今どこに!!」
「それは教えない。まだ不安定だから。呪いの方は払えないけど、今回でなんとかできるようになると思うよ。だから、あの子が君の前に姿を現すまで待っていてほしいな。誓ったでしょ?私に。あの子が笑えるようにって。」
『神』は目を見開いて責めるように私に問う。『神』に誓うというのは軽率な行為だと思い知らされた。だが、神だろうがなんだろうが関係ない。私にはミアが必要なのだから。
「あぁ、誓う。私は、ミアが心から笑えるような国にする。絶対にだ。今までは不甲斐ない王子だった。しかし、これからは違う。私は……今までの私を許しはしない。」
「ハハッ!覚悟は十分だね!期待しているね、アレクシル。」
私の名前を最後に重圧がなくなった。『神』がいなくなったということだろう。
「………はっ…はっ……はぁ…………」
(息を止めていたのかというくらいに、呼吸がつまる。)
身体中汗でぐっしょりと濡れていた。目に汗が入ってきたので、袖で汗を拭った。
レギイラ侯爵は泡を吹いて、白目を剥いていた。死んではいないようだが、会話できるような状態でもない。壊れるというのはこういうことかと思った。私は神との会話を思い返す。
ミアが生きている。
神が言ったことだから間違いないだろう。彼女が私の前に現れるまで出来ることをやろう。今ならなんだって出来る。寝ていられない。私は震える足を殴ってから自室ではなく執務室へ向かった。
それからさらに1ヶ月後、神の言う通りミアは現れた。
……目を覆いたくなるような、痛ましい姿で。
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1章あと少しで完結です。
次話はやっとミリア目線に戻ります。




