1章 最後の日5
更新が遅れてしまい申し訳ございません。
アレク目線です。
長い長い会議に嫌気がさしてきた。
4回目の「王国法審議会」。1年で1番重要視される大事な会議だが、何時間と続くため、途中から面倒になってしまう。
私とライルが提案したものはあっさりと可決された。王都のギルドと商人組合が実験的に行った結果もあるので当然ではあるが。
「はぁ…」
隣からため息が聞こえてくる。声の正体はライルだ。ずっと集中している私に比べて、ライルは休憩の取り方が上手い。今審議されている法律は否決されると踏んで、意識を別のところへやったのだろう。
「今のところ異常はないな。」
「あぁ。まだまだ分からねぇがな。」
周りにいる貴族に不審がられないようにコソコソとライルと話す。口元をあまり動かさずに話すことにも慣れてしまっていた。
いつもならライルは宰相の隣の席だが、今日提案した法案は私とライルの共同のものなので隣に座っている。
レギイラ侯爵を見張るために、侯爵の隣に座るか、非常時に情報を共有するため、私の隣に座るか天秤にかけた結果、後者になった。
会議が終盤に差し掛かる。
レギイラ侯爵に動きは見られず、水かけ論を繰り広げていた。
ヒートアップしてきた討論を鎮静化させるには、どうすれば良いか考える。しかし、その必要は、1つの報告によってなくなった。
バンッ
「会議中失礼します!!報告いたします。現在、王都でテロが起こっています!!」
「「「!!!!!」」」
「なんだと!?」
「テロだと!?どういうことだ!」
大きな音を立てて騎士が報告にくる。
会議中の扉は閉ざされ、近衛騎士によって封鎖されているため、部外者が会議室に入ってこれた時点で非常事態ということになるが、今日がテロ実行日だったようだ。今頃、オズリオとミアが対応しているだろう。
貴族の役割は、国をより良くするために皆を先導することだ。しかし、偉そうな態度なくせに、非常時に直面すればおどおどして、先導するどころか、役に立たず、邪魔してくる貴族もいる。今のような非常事態時、周りをざっと見渡せば、使えそうな貴族と使えない貴族がよく分かる。
こうなってしまっては仕方がない。私にできることをしなければ。
私は報告にきた騎士に問うた。
「状況は!?」
「只今、冒険者を中心に制圧している模様です。死者は今のところ確認できていません。」
「冒険者?かなりの人数の騎士団を王都に配置していたはずだが、どうなっている!?」
「その…騎士団は別任務を言い渡され、王都に残っている騎士団は少数になります。」
「どういうことだ?別任務!?それは…いや、ハイノール伯爵に直接聞く。それよりテロについて報告しろ。」
「はっ!テロ組織については未確認。実行犯は複数名。魔道具を使って爆破をしようとしているとのことです。」
目の前に黒幕がいる中で報告を受けるのはおかしな気分だった。しかし、騎士の報告に違和感を覚える。
「爆破しようとしている?爆破されたわけではないのか?」
「はい。その…平民の女性が、テロリストを確保し、尋問したところ爆破について発覚しました。今のところ、爆破前にテロリストを確保する等対応ができております。しかし、テロリストの人数によっては爆破される可能性もありうるとのことです。」
平民の女性と聞いて、ミアだろうと察しがつく。爆破前に気づくことが出来るなんてミア以外には無理だろう。
その後、細かな報告を受けた後、ライルにはレギイラ侯爵から目を離さないように伝え、私は王太子としてこの場にいる貴族をまとめ、それぞれ指示をしていった。
私兵を持っている貴族には王都への補充要員を任せ、怪我人の対応や人員の確保に奔走した。
それに、テロによって影響される経済や他国の介入。今後の対策も含めて先手を打たなければ、後々大きな問題に発展してしまう。今すぐにでもやらなければならないことは山ほどあった。
「予想していたから、まだ対応できているが……これからは予想外の事態に直面することも増えるだろう。……きついな。」
「王の業務で、きつくないものはないと思います。」
「…そうだな。」
王宮の廊下をセジルと早足で歩く。
最初の報告を受けてから、かなりの時間が経っていた。定期的に報告が入ってきているが、王都にグリフォンが出たと聞いた時はかなり驚いた。出現したのは一瞬で問題になっているわけではないので、グリフォンについては後回しにした。
また、ハイノール伯爵の話を聞いた限り、オズリオは王都から遠ざけられたということが分かる。やはり、このテロはレギイラ侯爵の起こしたもので間違いないだろう。
(ライルは……大丈夫だろうか。あいつのことだから上手くやっているだろうが……)
ちょうどライルについて考えている時に、後ろから走ってきた騎士から報告を受ける。
「で、殿下……殿下!!……ライル様が……………!!」
「………!!!!」
ーライルが瀕死の状態だと。もう助かる見込みはない重症だと。
私は地面が大きく揺れるような、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。目の前が真っ暗になるというのはこういうことかと思った。セジルも言葉を失う。私は何かを発する前にレギイラ侯爵の下に急いだ。
走りながら後悔する。レギイラ侯爵がライルの命を狙っていたことは知っていたのにと。予想できたことだと。ライルが死ぬなんて考えたことがなかった。死ぬまで私の側にいると思っていた。しかし、意外にも悲しみよりも怒りが大きかった。きっとライルが死ぬなんて、報告を受けても私は信じていないのだろう。
レギイラ侯爵を見つける。ちょうど、周りには誰もいなかった。
「侯爵!!」
「アレクシル殿下?一体どうしたと……」
「とぼけても無駄だ!!全て貴殿の仕業だろう!?」
一瞬、レギイラ侯爵は眉を顰めた。しかし、すぐに表情を戻す。
「私の仕業……?おっしゃっている意味が分かりかねます。」
「この後に及んで……!!このテロも!ライルの殺害についても!!貴殿が企んだということは分かっている!!」
「は……ははっ……何故そのような結論に至ったのでしょうか。それよりも、私の愛する娘が誘拐されてそれどころではないのです。殿下もお忙しいはずだ。こんな意味のわからないことを討論している暇はないのでは?」
「…意味の分からないことだと!?」
頭に血がのぼる。額の血管がピクリと動いていることがわかる。もう怒りに任せて目の前の人間を殺してしまおうかと考えた。後ろでセジルが何か言っている気がするが、頭に入ってこない。
私は、理性を失った状態で腰にかけている剣の柄に触れる。
しかし、目の前を銀髪の女性が通り過ぎて、自我を取り戻した。
ライルにしては長すぎる銀色。
なびいた髪から漂ってきたのは、愛する女性と同じ香りだった。
(え……ミア?いやでもミアは……あ、ライルの妹だと……)
銀髪の女性は、レギイラ侯爵をバンッと思い切り壁に追いやる。
銀髪に目を奪われていたが、身体中は真っ赤に染まっていた。赤い服を着ているのかと思ったが、ミアの髪の香りの他に、むせかえるほどの血の匂い。あれは全て血の色だ。
(菫色の瞳……そして、私だから分かる。彼女は私の番だと……)
「ミ、ミア…なのか……?」
「え、あちらの女性がミア様……なのですか?……まるで………」
セジルの言葉は後に続かない。しかし、まるでライルのようだと言いたいのだろう。ライルは妹と姿がそっくりだと言っていた。しかし、髪と瞳の色でここまで似るとは。
ミアに血だらけである理由について問うが、返答はない。一体、何をしようというのだろう。
ライルについて知っているのだろうか。なんと伝えればいいのだろうか。
彼女に会いたくて仕方がない毎日だった。
でも、こんな再会を望んでいたわけではなかった。
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