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1章 最後の日1

更新日は水・金・日です。


もしかしたら、もう1話更新するかもしれないです。

今日は「王国法審議会」が開催される日。


空は澄み渡り、良い天気に恵まれていた。


私がミアとしてこの国にいられるのもあと僅か。

私は、思い出を沢山作るため、子どもたちと手を繋いで街を散策していた。今頃、殿下とお兄様は汗を流しながら貴族達と腹の探り合いをしているのだろう。


王都には地方から有力な貴族が集まってきている。王都の警備はいつもより数を増やして、何かあった時にすぐ対応できるようにしていた。



もし、私だったら今日のような日にテロを起こす。


しかし、慎重なレギイラ侯爵が一か八かで賭けに出るだろうか。結局、お兄様もオズリオ様も生きているのだから。グレイル王子が言っていたようなテロの事前準備は失敗したといっていい。諦めたとはいかないまでも、テロの予定を延期した可能性は高い。


だからといって、何もしないわけにはいかない。万が一にも可能性があるなら、備えるべきだ。


国政に携わっている貴族として、「王国法審議会」を欠席するわけにはいかない。殿下とお兄様は王宮で貴族を、オズリオ様と私は王都を見回るようにしていた。思い出作りに散策を選んだのも王都を見回るためだ。ギルドには、無理を言って冒険者に待機してもらうよう頼んでいた。もちろん待機の時間をもらうので、ギルドを訪れた冒険者に声をかけ、了承をもらったら、その分の報酬を渡している。



(この様子だと杞憂だったかしら?……いいえ…油断はよくないわ。)



テロを事前に予測できているなら、住民を事前に避難させておくこともできたが、如何せん情報が少ない。レギイラ侯爵を追い詰めてはいるが、決定的な証拠がない。大々的に動けば、それこそレギイラ侯爵に悟られ、足元を掬われる。私達が備えられるのは、これが限度だった。



お昼を過ぎた頃、街で焦った表情のオズリオ様を見かけた。


私はオズリオ様のもとへ走っていき、話しかけた。焦っているということは何かあったということだ。

嫌な予感がする。心臓がドクドクと早鐘を打つ。



「オズリオ様!どうされ……」


「ああ!ミア!よかった!杞憂だといいんだが……時間がないから、よく聞いてくれ。」



どうやらオズリオ様は私を探していたようだ。

彼の様子からただ事ではない。何かがあるかも知れないと構えてはいたが、いざ事態に直面すると緊張してしまう。私は子どもたちに近くの広場で遊ぶよう指示して、会話を聞かれないようにした。



「騎士団に秘密裏に任務が下った。お茶会で貴族令嬢数名が誘拐されたようだ。今、王都に出払っている者も含めて誘拐犯を捜索しなければならない。しかも、誘拐犯はもう王都を出たと情報が入った。」


「このタイミングで、ですか?…もしかして、その貴族令嬢の中にレギイラ侯爵令嬢はいらっしゃいますか?」


「ああ。お茶会自体は他の貴族令嬢が開催したものだが、参加者リストに名前が入っていた。複数名の誘拐を成功させるとなると、内に手引きしたものがいるはずだ。……今日かもしれない。」


「そう…ですね。王都から騎士団を減らすための誘導の可能性があります。しかし……」



嫌な話だが、貴族令嬢と平民であれば、貴族令嬢を優先しなければならない。誘導と分かっていてもオズリオ様は誘拐犯を追わなければならないということだ。



「やはり私は王都に……」


「いえ、そんなことをするとオズリオ様が責任を問われ、ワーナード伯爵家が危機に晒されます。王都は私が守ります。オズリオ様は早く誘拐犯を捕まえて戻ってきてくださ…………え?」


オズリオ様と私の近くを男が通り過ぎる。見た目はなんの変哲もない男だが、魔力が殺意に歪んでいた。殺気を放っているわけではないのでオズリオ様は気づいていない。


私は自分の嫌な予感を信じ、男の襟をつかみ、地面に叩きつけた。



「ミ、ミア?何を……」


「吐きなさい!!何をしようとしているのか!!」


「急に何をするんだ!!誰だお前!!」


当たり前だが、男はとぼけようとする。時間は、私が思っていたよりもないのかも知れない。


私は、男の腕を本来なら曲がらない方向へ無理矢理曲げた。


「ああああああああ!!!」


ぐしゃりと嫌な音がするが、もう慣れっこだ。通行人は私の凶行に引いており、騎士団を呼んでくる。オズリオ様は私を信じてくれるようで、集まってきていた騎士団を落ち着かせてくれていた。


私は周りの様子をチラと確認した後、すぐに男に向き直る。


「もう一度聞くわ。何をしようとしているの?私はお前の命なんてどうでもいいけれど、吐くならやめてあげる。……次は足を……」


「い、言います言います!!だからやめ……」


ボキンッ


「っ!ぁあああああああ!!!」


「結論だけ早く言った方が身のためよ。」


「こ、ここここの魔道具を爆発して、人を沢山殺せって言われたんだ!!」


「「「「!!!!!!」」」」


周りの通行人や集まってきていた騎士団にも男の声が届いたようでざわざわし始める。このままだと混乱になって余計に収拾がつかなくなってしまう。私は魔力を広げて、周りにいる通行人だけを眠らせた。


「ぐっ………」


一気に魔力が抜けて、目眩がする。でも、まだ魔力は残っている、一時的なものだ。大丈夫。


「ミア!無理するな!……と言いたいがよくやった。ここの騎士団には私が指示をする。ミアはこの男への尋問を頼む!」


「分かりました!騎士団の1人をギルドに向かわせて、協力を仰いでください。この男1人のわけがありません。あと、魔道具の解析も私がします。…………オズリオ様は指示の後、すぐに誘拐犯を追ってください!」


「こんな状態で行けるわけがないだろう!!」


オズリオ様の気持ちも分かる。しかし、貴族ではなく平民を優先したとなれば、オズリオ様だけではなく、ワーナード伯爵家とそれに準ずる貴族が責任を問われてしまう。これは「ごめんなさい」で済む問題じゃないのだ。責任をとって誰かの首が飛ぶことだってあり得る。


私は、思い切り心の中で叫んだ。



ーエル!!今すぐここに!!!



「オズリオ様!誘拐犯がレギイラ侯爵との証拠を持っているかもしれません。……それに!リーナは侯爵に利用されているだけです。今頃、怖い思いをしていると思うんです。…お願いです。」


貴族を優先しなければならない。でも、貴族を蔑ろにしていいというわけではない。


「……リーナ?ミアは侯爵令嬢と関わりが……いや、しかし……王都が……」


「でも!早く戻って来てくださいね。そのためにエルを呼んだんですから。」


「エル?」


「とにかく!今は指示をお願いします。」


「あ、あぁ…」


男への尋問を再開させる。それと同時並行して私は魔道具の解析を始めた。といっても、魔道具は粗悪品ですぐに対処法が判明した。時限爆弾のように爆発する魔道具だが、解除の魔法を当てればただの石になる。

あとは何人いるかだが…この男も知らされていないようだった。ただ、人が多いところ、男が指定された場所、魔道具の効果範囲を考えると、あと30人程度、魔道具を持ったテロリストがいると考えていいだろう。


「ギルドから応援きました!!」


「ありがとうございます。魔道具の無力化には解除の魔法をかければ大丈夫です。解呪でも効くでしょう。魔法を使える者は何人いますか?また、おそらく30人程度のテロリストがいます。手分けして見つけ出しましょう。まずは……」


私は到着した冒険者に指示を出していく。王都を30ブロックに分け、それぞれ配置を決めテロリストの無力化を頼んだ。オズリオ様は騎士団をまとめて住民の避難をしてくれている。



(私がテロリストに気付けてよかった…偶然だったけれど、これで死傷者はグッと減るはず。)



しばらくして、バサバサと大きな羽が羽ばたく音が聞こえる。

エルのトップスピードは驚異的だ。もうこちらに到着した。本当はエルの姿を見られたくはなかったが仕方ない。命には変えられない。


私たちのいる足元に大きな影がさす。息を飲む者。悲鳴をあげる者。様々だが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。


「エル!!!」


「ギュエ!!」


エルが私の前に降り立ち、私に擦り寄る。いっぱい撫でてあげたいけれど、時間がない。


「エル、オズリオ様を連れてリーナを助けに行って欲しいの。できる?」


「ギュエ!!」


エルはリーナを気に入っていた。きっと大丈夫。エルはオズリオ様と初対面のはずだが、誰がオズリオ様なのか分かるようだ。私の心と繋がっているとはいえ、どこまで正確に分かっているのだろう。


「な、何を!!おい!!」


エルはオズリオ様の襟を咥えて背中に乗せる。オズリオ様は何がなんだか訳がわからないという顔をしているが、混乱しているうちに連れて行ってもらったほうが面倒が減る。


「オズリオ様!リーナをお願いします!!」


「ミア!おい!説明し……うわっ!!」


エルが空に羽ばたく。混乱していたが、オズリオ様なら何とか状況を理解してくれるだろう。


視線を空から街に戻せば、ギルドマスターのハーバーさんが私を見ていた。

エルについて説明しろと言わんばかりの剣幕だが、今度説明すると約束し、私は私のやるべきことを果たすために、一度深呼吸をして、前を向いた。

読んでいただきありがとうございます。


やっとここまできました。ここまで続けてこれたのも、読み続けてくれる皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。

早く2章に進みたいですね。


ブックマーク&評価でやる気が出るのでよろしくお願いします。


次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

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