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1章 再会2

本日1話更新です。

私は広場の一部にいつもの机や椅子を準備する。突っ立っていられたって正直邪魔だし、本人も手持ち無沙汰なんだろう。手伝うと殿下が申し出てくれたので好意に甘えて準備を手伝ってもらった。時間が近づくにつれて、子どもたちが集まってくる。殿下も含め、みんなで商品を並べた。それにしても殿下に予定はないのだろうか。忙しい立場のはずだけれど。


「あれ?朝のにーちゃんじゃん!まだ帰ってなかったのかよ。」


「今朝はどうもありがとう。もう少しミアさんと一緒にいたくてね。お邪魔させてもらったよ。」


流石カイ。相手が貴族なのに物怖じしない。私に会う前に仲良くなっているとは思っていたけれど、まるで友達のようだ。殿下も殿下でそんなカイを気に入っているみたい。もしかすると、気を遣われない方が殿下は好きなのかもしれない。殿下とカイが話すので、貴族相手に緊張していた他の子たちの気が少し緩む。いつもは失敗ばかりのカイだが、今日は良い役割にまわっているようだ。


「先生ー!今日もたくさん売れるかなぁ?」


「そうだね。今日はアシル様がいるから、お客さんは増えるんじゃないかなぁ。みんなで頑張って計算しようね!!」


「「「「はーい」」」」


アシル様の顔はとても整っているので、それだけで目立つ宣伝になる。それに、貴族が店にいるということは、貴族に認められた商品と思う人が多いだろう。本当は早く帰ってほしいけれど、帰らないならせめて殿下を活用しないともったいない。

そんなこんなでお客さま第一号はすぐにやってきた。


「これとこれはいくらだい?」


「それぞれ700ペニーになるので合わせて1400ペニーになりまーす」


「内容も分かりやすそうだし、買おうかね。はい2ペギーでいいかな?」


「ありがとうございまーす!お釣りは600ペニーです。」


簡単な足し算引き算だけれど、お客さまの対応と言葉遣いも気を付けながら計算しなければいけない。今のところ問題なく順調そうだ。お客様と子どもたちのやりとりを見て殿下が話しかけてくる。



「これが計算か…。子どもたちは料金を計算しているのか。物の価値基準も分かるし、言葉遣いも学べる。それに、売上が出れば子どもたちにお金を渡すことができるし、稼ぎ方も学ぶことができる。お金がもらえると知れば、学びにくる子どもたちが増えるだろう。」


「そうですね。お金がもらえて、勉強もできるので、親がいない子だけでなく、家の手伝いよりも優先してこちらに子どもを預けてくれる人もいるんです。」


「それにしても…売っているのは、教材だよね?貴族が使う書物に比べれば、内容はかなり少ないが、初心者や、最低限の知識だとこの教材で十分そうだ。というより、価格も安いし、こちらの方が、庶民にはちょうど良さそうだね。」


「はい。この教材は、アシル様くらいの年齢やそれ以上の方たちが試行錯誤して作った本なんです。私が知識を教えて、皆さんがそれを復習用にまとめたもので。せっかくなら皆で内容をまとめて本にして売ろうということで始めたんです。」



売上は教材の販売に関わった人、皆で分けるから一人当たりの給料はあまり良くはない。でも、少しでもお金が貰えるならと手伝ってくれる人は多い。この商売はこの街の親切で成り立っていると言っても過言ではなかった。しかし、教材を作ることによって、販売することによって、購入することによってこの街の人の知識や能力を向上させることができる。この商売は小さなきっかけにすぎないが、長い目で見れば街を豊かにすることができる有効な手段の一つとして、お兄様と私が考えたものだ。


ちなみに、セレリィブルグ王国があるこの大陸での流通通貨は統一されている。お金の単位はペニー・ペギー・ペグー・ペリーとなっていて、日本円で表すと日本円=ペニーになる。主に流通しているのはペニーとペギー硬貨だ。


1000ペニー=1ペギー(1000円)

1000ペギー=1ペグー(100万円)

1000ペグー=1ペリー(10億円)


ペリー硬貨なんて存在するのか?と思ってしまいそうだが、日本と比べて貧富の差が激しいこの世界では、貴族が普通にペリー硬貨を持っている。

また、物の価値基準もだいたい日本と同じであるが、物によっては高値で取引されているものもある。その1つが書物だった。商売を考え始めた時は、手伝ってくれた人たちにお金を渡せるか不安だった。お兄様から太鼓判をもらっていたから、それなりに売れるだろうと思ってはいたけれど、成果は私の予想以上で、たまに商人がまとめて購入していってくれるまでになった。


…それにしても、殿下の言葉が柔らかくなって来た。こちらが本来の話し方なのか。



「それにしても、言語の教材…翻訳が特に売れるね。」


「そうですね。最近は他国との流通が盛んになって来ましたから。外から来た商人や観光客にもよく売れますし、その人たちを相手に商売をしている人にもよく売れますね。」


「この翻訳の知識は君が元なんだよね?どうやってこんなにも知識を身につけたの?知識は学ぶより、与える方が難しいはずだけど。」


「翻訳であれば、商人に教えてもらうことが多いですね。あとは、色々な本を貸してくれる親切な方がいるんです。」


(嘘は言っていないわ。けれど、全てを話しているわけでもない。)


「その人ってもしかして、さっき言っていた仲良くしている男性のことかな?」


(鋭い!そんなこと気にする必要はないはずだけれど、意味がわからないわ)


「…そうですね。」


「…ふーん。私も今度何か本を持ってこよう。最近気に入って読んでいる本があるんだ。貴女に是非読んでほしい。」


「…ありがとうございます。楽しみです。」


(え。また…来るの?)



そうして、今後が不安になりつつも、今日の予定は終わった。いつもより売れ行きもいい分、子どもたちも勉強できたから悪くない1日だったかもしれない…と思いたい。


「今日はありがとう。次はおすすめの本を持ってくるよ。」


いや、やっぱり不穏な状態で1日が終わりそうだ…

貴族相手に否定をすることはできないので、来てほしくない気持ちを込めて答える。


「こちらこそありがとうございました。…また…来てください…。」


(来なくていい…来なくていい…)


「ははっ。ありがとう。」


殿下は今日とても楽しまれたようだ。私が来て欲しくないと思っていることは確実に伝わったはずなのに、笑顔で帰っていった。


(お兄様に早く相談したい…)


読んでいただきありがとうございました。

次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

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