1章 ギルドと商人組合2
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「ミア。フェレスが協力するのは本当か?悪いが信じることができない。今まで、どんな褒賞を用意しても彼を振り向かせることは出来なかった。彼は銀髪の関係者ということか?」
「それは違いますよクロイツさん。フェレスと関係があるのは私です。個人的に仲良くさせていただいているのですよ。だから、この制度は銀髪からではなく、私から皆さんに提案させていただいたんです。信じられないというならハーバーさんに聞いてみてください。ね?ギルドマスター?」
私はハーバーさんへ目を向ける。ついでに「勝手に調べやがって」というように笑いながら凄んでみる。立場的には彼の方が圧倒的に上なのだが、たまに、私はギルドの事務処理を手伝うことがあり仲良くなった。こっそりお兄様の力を借りて業務を効率よく改善したので、私がこんな態度をとっても大目に見てもらえる。それにしても、お兄様のことを銀髪なんていうのは抵抗があるが、ライルやレノヴァティオというよりはマシだろうと思い、クロイツさんに合わせた。
「あぁ…その…悪かった。皆の前で説明していいか?」
「はい。その方が皆さんも納得しますからね。ハーバーさん、よろしくお願いします。」
「分かった。はぁ…。以前、依頼をするために男がギルドにきた。どう依頼すべきかは、あらかじめ教わっているようで、なんとなく、こんなお節介をするのはミアだろうなと思ったんだよ。でも、依頼料は低く、誰もこんな依頼受けないだろうと、ミアが指導したには詰めが甘いと思った。しかし、依頼はその日のうちに達成されたんだ。……フェレスによって。」
「この前、フェレスが現れたあれか!!」
「フェレス…本当に…」
「そうだ。それで依頼した男を問い詰めたんだよ。そいつは、ミアに「助ける」と言われたと言った。依頼の申し込み方法を聞いたんじゃなく「助ける」と。となると、ミアがフェレスに依頼を受けるように頼んだということになる。」
「それで、ハーバーさんは、ミアちゃんがフェレスと関わりがあると気付いたわけね。となると、ミアちゃんが先ほど言ったことは、全て本当ということになるのね。」
これで私が言ったことは嘘ではなく、可能なことだと理解してもらえただろう。私はあらかじめ用意されていたお茶を飲んで喉を潤わせた。会議室は私以外の声で賑わっている。制度の採用よりも、どうフェレスを利用するのか、色々考えているようだ。フェレスの価値は私では気付けなかったが、やはり私が思っていた以上の影響力があるらしい。私は何も発言しないまま10分ほど待った後、ダメ押しをした。
「もし、制度の詳細を決め、明日から運営を開始するのであれば、フェレスには明日、ギルドへ向かうよう伝えます。」
「ミア、質問だ。なぜ、3ヶ月限定なんだ?」
「3ヶ月というのはフェレスの都合ですよ。彼は、制度を運営するしないに関わらず、3ヶ月で王都を出ていく予定です。」
私は残り数ヶ月で国を出ていくので、嘘ではない。しかし、レギイラ侯爵の件もあって、急ぎたいというのが本当の理由だった。
「何故フェレスが協力するんだ?こちらとしてはありがたいが、フェレスに利益はあるのか?」
「フェレスは私に個人的な借りがありまして、それを返してもらうだけですよ。勿論、今回のことで報酬も用意しています。お互い納得した上での3ヶ月契約になりますので、そこは心配ご無用です。」
フェレスについて1つ1つ質問に答えていく。フェレスもミアも私のことなので問題なく答えることができた。これで皆の不安要素は解消できただろうか。しかし、クロイツさんは納得していないらしい。
「フェレスを広告塔に使えば、制度を利用しようとする冒険者も商会も増えるだろう。それにフェレスの噂を聞きつけて王都に人がやってくる。人が動けば金も動く。金が動けば国が豊かになる。これは銀髪が望む結果になるだろうな。しかし、ここまで急ぐ必要はなんだ?フェレスの都合というのも嘘ではないのだろうが、何故今なんだ?」
(やっぱりクロイツさんはここで引っかかってしまうようね。お兄様も言っていた通りだわ。私の言葉で上手く伝わるかしら?)
私はレギイラ侯爵のテロの件に触れないように言葉を選びながら、ゆっくりと答える。
「…管理と情報が欲しいのです。人が増えれば犯罪も増えます。しかし、犯罪が増えれば人は減り、安全が増えればさらに人は増えて豊かになります。セレリィブルグ王国は人が増えました。そして次に起こると予想されるのが犯罪です。犯罪を止めるためにはルールを作り、管理する必要があります。もし、犯罪が起こってしまった場合は、犯人と原因を突き止めるため情報が必要となります。私はギルドと商人組合に管理と情報の担い手になってもらいたいのです。そしてそれは早ければ早いほどいいですよね。」
(遠回しになってしまったけれど、伝わるかしら…?)
「……急ぐ理由は、犯罪が行われると確信があるからだな。しかも遠くない未来に。」
(伝わった!!)
私は言葉では肯定せずに、クロイツさんに向けて微笑んだ。もし、レギイラ侯爵がこの制度に興味を持ってしまった場合、制度目的がレギイラ侯爵自身にあると気付かれないように、私はわざと遠回しに伝えた。この話し合いの目的は、あくまでギルドと商人組合の護衛任務についてのトラブルの解消だ。制度によって得られる効果は、この話し合いでは二の次ということになる。依頼の報酬金を釣り上げたことによって、周辺地域の盗賊が壊滅し、テロに使われる人員がいなくなってしまったり、怪しいと睨んだ商会の情報を商人組合に問い合わせたら、テロ組織の情報だったり、フェレスを囲うために関門の検査が厳しくなり、怪しい人が王都に侵入しにくくなったりするのは、あくまで棚ぼたということだ。
「では、制度の利用を拒否する者がいれば、その者達のリストも作った方がいいだろう。」
「流石、話が早いですね。クロイツさん、よろしくお願いします。」
「「「……。」」」
「…では、制度を運営するということで、話を進めてよろしいでしょうか?賛成していただける方は手をあげてください。」
私はざっと会議室を見回す。この場で手を挙げなかった者はいなかった。つまり、12名全員が賛成したということ。あとは、制度について細かくルールを定めていけばいいが、それは私よりも皆の方が意見があるだろう。私はゆっくりと息を吐いて、肩の力を抜いた。
これから忙しくなる。でもそれもあと数ヶ月。終わりは近い。
…
「今日はギルドの方へ行かなくていいのか?」
「早めに帰れたら、ちょっと顔を出すつもりだけれど、今日は大丈夫よ。お兄様こそ、仕事は大丈夫なの?」
「あぁ。ミリアが上手くやってくれてるおかげで時間がある。ありがとな。」
お兄様と私は馬車で王宮へ向かっていた。私の今の格好は髪を枯葉色に、瞳を翡翠色に変え、男装をしている。つまり、私はレノヴァティオ公爵家の護衛でオウルやミストの同僚ということになる。
「話すのも久しぶりだよな。フェレスはどうだ?」
「フェレスね。もうずっと引っ張りだこよ。しかもギルド職員や商人に呼ばれるというより、冒険者に腕試しで呼ばれるのよ。講習に参加してもらうことを条件に相手しているから、効率は悪くないんだけどね。」
「講習もフェレスがやってるのか?」
「初めの方は講習もしていたわ。でも、それはもっと適任の冒険者に任せて、私は主に上級冒険者の腕試しをしているのよ。」
「上級っていうと、SやAランクか。負けることはあるのか?」
「今王都にSランクはいないわね。負けることはないわ。私は魔獣相手より人間相手の方が得意だから、割と余裕よ。ただ、20人、30人となると魔力がなくなってくるのよ…」
「やっぱ規模が違うな…。でもお前はCランクのままなんだろ?」
「そうよ。ランクなんてどうでもいいし、寧ろ上級になれば国の依頼も増えるだろうから、絶対にランクは上げないでって言っているの。…それで、制度開始して1ヶ月になるけど成果は出てる?」
「あぁ。出てるぞ。人口が増えて治安が悪くなると思ったが、そうでもない。人口増加と冒険者が増えたことを理由に、騎士の配置も増やした。でも、思った以上に冒険者が問題を起こしてない。お前のおかげか?」
「それは分からないけれど、そうだったら嬉しいわ。」
ここ1ヶ月は怒涛の日々だった。フェレスとして朝から晩まで変装しっぱなし。ただ、フェレスは口数が多くないから、言われたことをやればそれで良かった。基本的にはギルドに入り浸り。商人組合の方は人口が増えたことで売上が好調のようだ。たまに宣伝として顔を出すくらいで済んでいる。
空いている時間はカイや街の人と交流しているので、殿下に会うのは1ヶ月ぶりになった。本当はもっと早くに会いにいく予定だったが、殿下も忙しかったようで、今まで時間が全く取れなかった。
「レギイラ侯爵に動きはないの?襲撃はあった?」
「侯爵はいつも通りだが、ちょっと焦っている感じはあるなぁ。襲撃はない。ただ、飲食物に毒が入っていることが増えたな。オズリオも同じようだ。」
公爵家に生まれた時から毒殺は日常に含まれていた。私は社交界では何の力も持っていないので、あまり毒を盛られたことはないが、お兄様の影響力は大きい。今までも、これからも、毒入りの何かを用意されるのだろう。
「もうすぐ、王宮だ。切り替えろよ。」
「勿論よ。」
今日は殿下の魔力を調整するために王宮に来た。前回のような失敗をしないように、私の心が揺れないようにと、気持ちを引き締め直した。
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