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1章 王太子の決意2

誤字脱字報告ありがとうございます。本当に助かります!


更新が遅れてしまいすみません。

更新日は水・金・日です。


アレク目線です。

(痛い…でも、気持ちはスッキリしたかもしれない…さすが幼馴染。)


ライルは戦う必要のない役職だが、人並み以上には鍛えている。そんな彼に2回も本気で殴られれば、身体が悲鳴を挙げても仕方がない。それに、最近は寝ていなかったし、体調もよくなかった。こんなボロボロの姿は絶対にミアに見られるわけにはいかない。


「申し訳ございません。ミアでございます。」


ミアに見られたくないと考えていたのに、実際に姿を見れば、そんなことはどうでも良くなった。彼女に触れたい。抱きしめたい。そんな考えが私の頭を支配した。しかし、ライルに止められ、正気に戻る。私はミアのことになると簡単に理性を無くしてしまうことにやっと気が付いた。だから、ライルの提示した条件にも反論することなく受け入れた。


(彼女に触れられないのは苦しい。でも…会えなくなる方がもっと苦しい。)


その後、レギイラ侯爵がテロを起こそうとしていることをミアから聞いた。最初は信じることが出来なかったが、ミアの能力で確認したこと、ライルが確信していることで納得した。ミアの話を引き続き聞いていると、今まで彼女は私の知らないところで国のために働いてくれていたことが分かった。ライルとオズリオの暗殺を防くことが出来たのもミアのおかげのようだ。


「ミアは…いや何でもない……」


私は、ミアのことばかり考えていた。勿論、いつも国のことを考えて業務を遂行しているが、私の頭を悩ませているのはいつもミアだ。ミアに出会う前もずっと(つがい)のことばかり考えていた。


(惨めだ…そして、そんな自分が恥ずかしい…私は…こんなにも情けない男だったのだろうか。)


私なんかよりライルやミアの方がよっぽど国のために働いている。女性からは言い寄られ、騎士達からもそれなりに慕われ、仕事も順調にこなし…完全無欠の王太子とはいかずとも、私もそれに近い王太子だろうと思っていた時期があった。しかし、実際の私は自分勝手で好きな女性を傷付けてしまう最低な男だ。


今も、ライルとミアは真剣に国のために色々と考えて、計画を詰めている。私も表面上は意見を出して、話し合いに参加しているが、頭の中を占めているのはライルとミアのことだった。思った以上に2人は仲が良いらしい。お互い目線だけで、ある程度の意思疎通ができるようだ。それに、ミアはライルが相手だと表情が柔らかくなる。今日のミアは年相応な少女に見えた。やはり、ライルがいるからだろうか。


(こんなことばかり考える自分が嫌だ…身体も心も全部が痛い、苦しい…もう見たくない。)


私の思いが通じたのか、ライルが話し合いの終わりを告げる。


「それじゃあ、今できることはこのくらいか…あまり長いこと集まっていれば怪しまれる。特にオズリオは戻った方がいい。」


「そうだな。統括に頼まれているお遣いも終わっているし、騎士団に戻るよ。ミアはどうする?」


「私は……」


オズリオがミアに尋ねる。ミアはライルの部下だから分かるが、オズリオも…私なんかよりもミアと仲が良いように思う。せっかく落ち着いた嫉妬心がまた沸き上がってくるのを、深呼吸して抑えた。


「ミアも…もう帰れ。ずっと働きっぱなしで、ここ最近ほとんど寝ていないだろ。魔力も酷使しすぎだ。」


「それは…そう、かもしれませんが…」


ライルがミアの(ひたい)に手を当てて、体調を伺う。普段からよくしていることなのだろう。ライルもミアも抵抗がない。私は唇を噛んで叫びたい欲求を無理やり沈めた。


(もう…やめてくれ……)


「はぁ…疲れてるだろ。今日はもう帰れ。ちゃんと、家に、帰って休め。」


「…分かりました。殿下もライル様も怪我を治してもらってくださいね。これで失礼します。」


結局、オズリオとミアが退出し、執務室はいつもの3人になった。折角ミアが私を心配してくれたのに、その前の「ちゃんと家に帰れ」というライルの言葉が頭から離れない。強調の仕方から、ミアには家以外にも休む場所があり、ライルはその存在を知っているということだ。私の知らないミアをライルはたくさん知っているのだろう。


「アレク、俺を殺すような目で見るのはやめてくれ…」


「殺すような、じゃない。本当に殺したいと思ってしまった。目で会話するし、遠慮なく触るし…惨めで仕方なかったよ。」


「ははっ!!」


「何が可笑しい。」


「アレク、勘違いしているようだが…俺は本心でお前とミアが上手くいけばいいと思っている。ただ、お前が思うように、俺にとってもミアは大切な存在だ。傷付ける男は許さない。」


目の前がチカチカとする。ライルのことは恋敵ではなかったのだろうか。そういえば、私は自分のことばかり優先するだけで、ライルの立場を考えていなかった。私がライルであれば、どうしていただろうか。ライルの立場でミアのことが好きならばどうしていただろうか。私はたっぷりと時間を使って考える。


「……好きな女性に言い寄る男を殺すとはいかないまでも、脅していた…はずだ。私はライルに脅されたか?」


「…アレク、考えが漏れているぞ…まぁでもそういうことだ。俺はお前にそんな感情を持ってない。」


「でも、ライルはミアの味方ではないのか?」


本当に私の味方なら、最初からライルはもっと協力的だったのではないだろうか。いや、今思えば、ミアのことを教えてくれないだけで、協力的だったような…気がする。


「ミアの苦労を知っているからな。それに、ミアは国を出て行くことに命すら賭ける。これ以上、ミアに負担をかけたくないし、ミアの努力を無駄にするようなこともしたくなかった。ずっと見てきたからな…」


「ずっと…?ミアはいつからライルの部下を…いや、出会ったきっかけはなんだ?陛下とも関わりがあるのだろう?」


「あー…それは…俺の口からは言えない。ミアが知られたくないと思っていることだ。知りたいなら本人に聞け。」


ミアが知られたくないと思っているのなら、他人から聞くわけにはいかない。隠している秘密を暴かれるのは私だって嫌なことだ。それくらいは分かる。数時間前の私なら聞き出していたかもしれないが…。そういえば、いつの間にか冷静に話ができるようになっていた。顔も身体も痛いままだが、心の傷は回復してきているらしい。私は安堵して小さく笑った。今なら嫉妬せずに色々聞くことが出来るかもしれない。


「…オズリオは知っているのか?」


「オズリオは俺とミアについて、詳しくはないが知っている。知られたきっかけは…まぁ事故のようなもんだ。ミアも知られたくなかったから、オズリオの記憶を消そうとしてたくらいだしな。」


「あぁ…それでオズリオは『記憶を消したのか』と聞いていたんだな。それにしても、ミアの能力はすごいな…心を読み、記憶を消す。魔法の扱いも長けているようだし…。それに…馬も扱えるのだろう?王宮から出て2日しか経っていないのに、ライルに報告し、情報も聞き出してきた。」


「まぁ……そうだな。でも、これくらいで驚いていたらキリがないぞ。陛下がミアをこの国に引き留めたい理由は能力の高さだ。あいつは優秀すぎる。」


「まだ…私の知らない能力があるということか…」


「そうだ。俺も昨日初めて知った能力があるくらいだからな。」


何年も一緒にいるであろうライルですら、初めて知ることが多いという。ここまで優秀であれば父上がミアのことを気に掛けるのも仕方がないと思えた。こんな優秀な人間が他国の味方になれば、勿体ないどころの話ではない。


「ライルは…ミアが国を出ていく理由を知っているのか?」


「いや…残念ながら知らない。色々それらしい理由を言っていたが、本当の理由は別にあるみたいだな。聞いても教えてくれない。でも、本心では国を出ていきたくないと考えているのは確かだ。ミアには出ていかなければならない理由があるらしい。それも命をかけるほどな。」


「…前にミアに聞いたが、出ていくこと自体が目的だと言っていた。それが分かれば、どうにか出来るかもしれない。」


ライルと話していれば、今後私がどうすれば良いのかが何となく見えてきた。でも、まだまだ聞きたいことがある。しかし、それはライルも同じだったようだ。


「話は変わるが、アレク、お前はミアの友人を見たんだよな?」


「友人?オズリオの相手をしたやつか?…いや……ミアに口付けをしたやつか。」


「俺は同一人物だと考えている。ミアは秘密主義だ。それなのにオズリオの暗殺阻止を手伝わせたということは、かなり心を許した相手なんだろう。…ミアの国を出ていく理由も知っているかもしれないな。」


「そういえば、その友人はオズリオと互角に戦ったと言っていたな。オズリオはその友人について何かミアに聞こうとしていたようだった。直接対峙したオズリオからも後で話を聞いた方がいいだろう。」


「そうだな…あと、これも俺の予想だが…(つがい)についてミアに教えたのもそいつなんじゃないかと思ってる。ミアは()()()()()()()()()()(つがい)については知らないと言っていた。なんというか…(つがい)という制度について知っているという風に言っていたな。」


忘れていたが、父上とのやり取りだと、確かにミアは(つがい)について知っていたが、ライルから聞いたわけではないと言っていた。(つがい)は機密事項だ。知っている者は知っているが、ミアは誰から聞いたのだろう。


「それにしても、()()()()()()()()()()(つがい)ではない(つがい)ということか。私でも聞いたことがないな…。でも、これについて言及すれば、国が滅びる可能性があると言っていたな…。ミアが国を出ていくことに命をかけていることと何か関わるがあるのだろうか…」


「はぁ。分からないことが多すぎるな…でも、ミアを諦めるつもりはないんだろう?」


「勿論だ。」


そう。例え目の前が暗くても、何をすればいいのか分からないと絶望しても、ミアを諦めるということを私は考えたことがない。ミアを求めて国が滅ぶとしてもそれは可能性の話だ。きっと上手くいく方法が何かあるはずだ。


(大丈夫だ。私は大丈夫。)


私は、目の前の問題を見て見ぬふりせず、ミアに認められる形で立ち向かうと改めて決意した。

読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク&評価でやる気が上がるのでお願いします。


次回からミリア目線に戻ります。

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