1章 今後の計画
0時ちょうどの更新がほとんどできておらず、申し訳ございません。
水・金・日が更新日になります。
「申し訳ございません。ミアでございます。」
私は殿下とセジル様に謝罪と挨拶をした。いくらオズリオ様が庇ってくれるとしても、この部屋に隠れて侵入したのは私だ。許されることではない。
「ミ、ミア!!会いたか…った…」
(え…?)
殿下が近づいて私に手を伸ばす。周りにお兄様もオズリオ様もいるのにその目には私しか映っていない。私は逃げるために後ろに下がろうとした。しかし、お兄様とオズリオ様が間に立ちはだかる。
「まてまてまて!!ミアが嫌がっているうちは触らせないからな。」
「殿下、落ち着いてください。」
殿下はハッと我に返って、ゆっくりと手を引いた。伸ばした右手を左手でさすりながら床を見ている。気まずい雰囲気になり、あれだけ騒がしかった執務室が無音になる。そんな中、口を開いたのはセジル様だった。
「兄さん。ミア様のことを知ってたのか。」
「あ、あぁ…機会があってな。さっき街で会ったんだ。ライルに重要な報告があるということで、私がここに連れてきた。姿を隠させたのは私の発案だから、ミアに責任はない。」
「何故黙っていたと言いたいところだが、事情があるというのは何となく分かっている。この部屋に入ったことも責めるつもりはない。」
オズリオ様に返答しながらも、セジル様は最後に私の方を見て答えた。私は、咎められないと知って一安心する。それでも執務室は変わらず気まずい空気のままだ。私はお兄様にアイコンタクトをし、お兄様はゆっくり瞼を閉じて了承したと返事をくれる。「覚悟をした。」「お兄様に任せる。」「私は大丈夫。」言葉にすると難しいが、視線だけで意味は通じたようだ。お兄様はすぐに空気を変えた。
「アレク、ミアの意思は聞いているな?引き止めるのはお前の自由だが、ルールを設けさせてもらう。1つ、ミアが許可しない限りアレクから触れない。2つ、ミアと2人きりにならない。3つ、ミアが嫌だということはしない。4つ、1から3のルールを破れば、ミアを諦める。いいな?」
「触れることすらできないのか…でも、ルールがないとミアは安心して私に会うことはできないだろう。…私を信用して欲しいと言っても無駄だろうな。何たって、私も私自身も信用することができないのだから…」
「了承と捉えていいな?」
「ああ。了承した。ミア、戻ってきてくれて嬉しいよ。ありがとう。」
「い、いえ…」
「「……。」」
殿下と私は無言になる。結局、私は殿下の前から姿を消すことはせず、国を出ていくまで関わっていくことになった。それでも、もう半年もないが。私には、お兄様がいる。殿下とのことはきっと大丈夫。私は自分にそう言い聞かせた。
「それでミア。どうだった?」
「お…ライル様の予想通りです。当たってほしくない結果でした。しかし、状況は予想よりももっと悪いです。この場で報告させていただいてよろしいでしょうか。」
(今日は「お兄様」と言ってしまいそうになるわ…気をつけないと。)
「報告?何かあったのか?」
お兄様と私の会話を聞いて殿下は不思議そうに聞いてくる。私は2日前に王宮を出たばかりで、その間に他国の王子と色々あったとは考えにくい。帰ってきたお兄様からどこまで報告を聞いているのかは分からないが、先程の反応だと、まだ何の報告も受けていないと考えていいだろう。お兄様が重要な報告があると殿下達に軽く説明している間に、私は散らかった執務室を簡単に片付けて、話し合いができるように整えた。殿下はご自身の席に座り、お兄様とオズリオ様と私はお客様用のソファに座った。セジル様は殿下の後ろに立ったままだ。
「それじゃあミア。報告してくれ。あーあと、自分で話してもいいという範囲で話せ。」
「はい。ありがとうございます。ライル様。」
私には秘密があることを、ここにいる方は知っている。部下として全てを報告すべきなのだが、誰もお兄様が言ったことについて疑義を唱えることはなかった。
「結論から申しますと、キーシャス・レギイラ侯爵は反逆者です。」
私は結論から述べた後、グレイル王子のことは伏せて、情報の確認もしたということを続けて報告した。お兄様とオズリオ様の命が狙われていること。何年も前から計画されていたこと。把握していない犠牲者が大勢いる可能性があること等、伝えられる範囲で事実を淡々と述べた。報告が続くたびに殿下の顔色は悪くなっていった。殿下とレギイラ侯爵の関係はよく知らないが、悪い仲ではなかったということだろうか。
「そんな、まさか…レギイラ侯爵が…?しかし、なぜその情報が正しいと言える?ミアのことを疑っているわけではないが、偽情報をつかまされたということはないのだろうか?」
殿下がもっともなことを言う。レギイラ侯爵は長いことセレリィブルグ王国に仕えてきた、周りから見れば信頼のできる宰相である。疑うのは当たり前のことだった。
「レギイラ侯爵が黒幕だという予想をしたのは俺だ。ミアにはその予想が合っているかどうかを確認してもらった。それに…」
お兄様が私の方をちらりと見る。私の能力を教えてもいいのかということだろう。ここで殿下に納得してもらわなければ話が続かない。信じたくない事実だと思うが信じてもらわなければならない。私はお兄様に向かって小さく頷いた。
「ミアは、相手の感情が分かる。表情からではなく、心を覗くことができると言ってもいい。だから、嘘か本当かの確認は無意味だ。」
「「相手の感情が分かる…?」」
殿下とセジル様が同じことを言ったので2人は顔を見合わせた。オズリオ様にも言ってなかったことのはずだが、あまり驚いていないようだ。前から気にかかることがあったのかもしれない。
「はい。人によって分かりやすい方と分かりにくい方といますが、この情報は確かに嘘ではないと確認したものです。」
「ちなみに一々驚いていたら話が進まないぞ。事実は変わらない。俺たちが話し合うべきはこの後どうするべきかだ。」
「あぁ…そうだな。気になることは後で聞くことにするよ。」
殿下は無理矢理納得してくれたようだった。まだ言いたいことはあるだろうけれど、ぐっと堪えてくれた。殿下のこういうところは本当にありがたい。セジル様は殿下の意見に沿うのだろう。何も言わなかった。
「今後どうするか。ライルが狙われたということは次は私か…若い世代が狙われるということはセジルも気をつけたほうがいいだろうな。」
「オズリオ様、実はオズリオ様の暗殺は失敗しております。だからといって今後も狙われる可能性があるのは否定できませんが、用意周到な暗殺はしばらく出来ないでしょう。」
「え…?何も仕掛けられた覚えはないが…まさか記憶を…」
「いいえ!そんなことはしないと以前に約束した通りです。説明させていただきますね。」
私はオズリオ様の言葉に被せるように否定をした。そして、レオと2人でガイルさんを止めた時のことを説明する。レオについては友人に手伝ってもらったことにし、フェレスについては顔見知りで友人のような関係だということで落ち着いた。殿下とセジル様にはそれで誤魔化せたかもしれないが、オズリオ様は私がある程度戦えることは知っているので、フェレス=私ということに気付いたかもしれない。
「ミアは…いや何でもない……」
「…?」
殿下は何か言いかけるが、言葉は続かない。感情も表情も悔しそうな、嫌悪しているような風に見てとれる。感情の矛先がいないということは…殿下自身だろうか。そんな殿下を気遣ってか、オズリオ様が代わりに発言した。
「あの時…そうだったのか。確かに妙な依頼だとは思ったんだが…上からの任務ということで納得してしまった。それにしても、私と戦ったミアの友人は…いや、後で個人的に聞くことにする。それより今後の方針だな。」
「…はい。」
(え?レオが何かしたの?後で誤魔化せるかしら…)
「ああ、そうだ。最終的な攻撃対象が王都となると…レギイラ侯爵は多くの人員を動員せざるを得ない。その人員の供給源として考えられるのは…どこだと思う?」
お兄様が私を見て問いかける。人員の供給源…レギイラ侯爵の息がかかった者となるだろうが、配下の者を動員すれば黒幕がレギイラ侯爵だとすぐにバレてしまうだろう。そして、フュナンゼ国からの人員は見込めない。
「暗殺ギルドや金で動いてくれそうな賊や冒険者といったところでしょうか。」
「ああ、そうなるだろうな。」
私の回答にお兄様が合っていると返事をくれる。兄だからだろうか。こうやって計画を練るときにお兄様は私を試すような言い方をする時があった。
「アレク。前に、ギルドの管理と商人の管理を一括して行った場合の企画書を提出したのを覚えているか?」
「あ、ああ。いつ調べたんだと思っていた。内容も覚えているよ。」
「その内容を少し変えてすぐに実行する。上手くいけば、人員の供給源を断てるかもしれない。ミアに負担がかかるだろうが、できるか?」
「はい。お任せください。」
正直、まだ何をするのかは分かっていないが、お兄様は私が出来ないと思うことを頼むことはしない。出来ると判断して仕事を任せるのだ。私は考える間も無く了承した。
お兄様が今後の計画を具体的に説明する。どうしたらこんなことを思いつくのだろうか。流石、次期宰相というところだろう。しかし、次期宰相ということはレギイラ侯爵からすれば1番殺したい相手ということを私はまだ認識していなかった。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク&評価でやる気が上がりますのでよろしくお願いします。
次話以降も読んでいただけると嬉しいです。




