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1章 忍び寄るフュナンゼ国6

20分程度遅刻です。


更新日は水・金・日です。

よろしくお願いします。

緊迫した空気の中、グレイル王子が発言した。


「…はっ…追い詰められたのは私たちの方だと言いたいのか。」


「どうぞ、お好きなようにご解釈ください。私が知りたいのは、キーシャス・レギイラ侯爵とどのような取引をしたのかということですわ。」


「……何のことだ?」


グレイル王子は何も知らないというように話す。彼の感情には怯えなんてものはない。王子だから殺されないと分かっているということだろうか。しかし、いくら演技が上手くても、感情を隠すのが上手くても、側近の感情までは隠せない。私がレギイラ侯爵の名前を発言した時から、アルムさんは確かに動揺している。お兄様の予想は当たっていたということだ。


「ふふっ、今の反応で分かりました。やはりレギイラ侯爵でしたか。」


「「……。」」


「…となると、レギイラ侯爵の依頼でお兄様を暗殺しようとしたということでしょうか。」


「「……。」」


グレイル王子もアルムさんも何も発言しない。しかし、発言しないということは頭の中で考えることが増える。その分、感情が分かりやすくなり、私に有利に働く。


(でも、レギイラ侯爵が依頼したというには微妙ね。)


アルムさんの感情から読み取るに、私が間違っているわけでも、合っているわけでもないようだ。私はお兄様のように多くの可能性を考慮したり、計画したりするのは苦手だ。今のところ何とか上手くいっているのは、多種多様な魔力操作で強引に結果を出しているに過ぎない。結局私にできるのは、思いつく可能性を言って、相手の反応を見ることだ。所謂、当てずっぽうというやつだ。


「違うようですね。第3者がいると言われてしまえばそれまで……ですが…これも違うようですね。」


アルムさんの感情から、すぐに別の可能性を考える。


「となると…グレイル様もレギイラ侯爵もお兄様を殺そうと考えていた……ふふっ、今度は当たりましたわ。」


(2つ目の可能性で当たるなんて、運がいいわ。)


グレイル様が表情を歪ませる。アルムさんは信じられないというような顔でこちらを見ていた。


「……はっ!戦闘は圧倒的、そして心を読む。…化け物かよ。」


「令嬢に向かって言う台詞としては、最低ですわね。」


(グレイル王子も流石に観念したようね。でも、私も情報を開示し過ぎたわ。)


とにかく、これで欲しかった最低限の情報を得ることができた。だが、もう少し詳細な情報が欲しい。


「レギイラ侯爵とはいつから懇意にしていたのでしょうか。詳細を教えてもらえますか。」


「それは言えない。さっきの様子を見るに、分かるのは嘘か本当かということくらいか。全く…キーシャスも忠告するべきだ。」


グレイル王子は、レギイラ侯爵のことをキーシャスと呼ぶ。年齢で言えばレギイラ侯爵とグレイル王子は親子ほどの差があるが、取引において立場はグレイル王子の方が圧倒的に上だということだ。


「そうですか。残念だわ。…レギイラ侯爵は私のことを知りませんもの。仕方がないですわ。」


「は?キーシャスは、懐に化け物がいることを知らないのか!?…ははっ!してやられたな。」


グレイル王子は右手で瞳を覆いまた笑う。してやられたと発言したようにまさにそのポーズだ。静かで冷静な方だと思っていたが、実は豪快な方なのだろうか。今日で彼の印象がころころと変わる。

そして、レギイラ侯爵どころか、ほとんどの人は私の存在を知らない。また、グレイル王子は、私が嘘か本当か、くらいにしか読めないと思っている。実際は、過去の記憶まで読み取ることが出来るが、勘違いしてくれるならその方が都合がいい。


「…ふむ。なら、取引をしよう。私はキーシャスとの取引を一切やめる。情報については、キーシャスについては全てを、他は私が教えてもいいと思ったものだけ教える。その代わり…今後、何があっても私を殺さないこと。また、この取引を結んだ後は友好な関係になることだ。」


アルムさんが目をギョッとさせて尋ねる。


「な!?それでいいのですか!?」


「これでいい。もう確認はいらないからな。」


「…分かりました。」


アルムさんがグレイル王子に確認する。グレイル王子が何か変更するたびに、改めてアルムさんが確かめるようにしているのだろう。独断で方針を勝手に変えられれば、後処理は部下に任せられる。アルムさんは相当苦労しているようだ。


「それは王子としてではなく、個人としてということでしょうか。」


「そうだ。」


こういう取引は本当に苦手だ。陛下と契約した時も失敗している。ただ、これは国の代表ではなく、個人としての取引ということだ。何があっても私の責任ということで収まる…はずだ。そして、グレイル王子を今後殺さないということだが、これはセレリィブルグ王国とフュナンゼ国が戦争をしてもグレイル王子は殺さないということだ。だが、どうせ私はセレリィブルグ王国を出て行く。グレイル王子とも関係がなくなるので問題ない、はずである。


(でも、肝心なことが抜けているわ。)


「条件が足りませんわ。嘘と本当しか見分けられなくても、時間をかければ情報を得ることはできます。私と取引をしたいなら、今後お兄様を殺そうとしないことを条件に追加してください。私の殺気の原因は、お兄様の命を狙ったことにあるのですから。」


「やはりブラコンだったか。…いいだろう。その条件をのもう。」


(お兄様の命を狙わないのなら私としては願ったり叶ったりだわ。これなら取引に応じてもいいような気がするけれど、意図を確認した方がいいわね。)


「いいのですか?この取引だと、レギイラ侯爵を裏切ることになりますよ。」


「ミリアリア、キーシャスを裁くつもりだろう?俺がキーシャスの味方をしても、化け物(ミリアリア)がいる限り、負けが確定している。なら、早々に切った方がいい。というより、なんでこんなに遠回しに行動するのか分からないな。お前の力があれば、どうとでもなるだろう?」


「私の力……そうですね。ですが、私にも都合があるのです。」


グレイル王子の言う通り、ミリアリア・レノヴァティオとして行動すれば、こんな周りくどいことをしなくても済んだかもしれない。しかし、私が公爵令嬢として行動していれば、お兄様どころかお父様の命まで失っていた可能性がある。私にかけられた呪いは、おそらく()()機能している。



ーー家族を()()()()幸せにしてみせる。



私は何度想ったか分からない願いを改めて胸に刻んだ。

グレイル王子は私の様子を見て納得してくれたようで、素直に引き下がってくれた。


「よく分からないが、色々あるということか。それで?取引には応じるのか?」


「分かりました。その条件で取引いたしましょう。」


これで、ひとまずは話し合いが落ち着いた。グレイル王子はアルムさんにお茶を用意するように指示する。緊張した話し合いで私も喉が渇いていたのでちょうどよかった。


私はアルムさんが用意してくれたお茶を再度確認する。何故またこんな事をするのだろう。私はグレイル王子を睨みつけた。


「なんだ?それも気付くのか。やはり本当みたいだな。」


「何がでしょうか。」


用意されたお茶には麻薬が混ざっている。睡眠薬とはまた違った匂いだが、私には麻薬の方が分かりやすい。グレイル王子は自分だけお茶を飲んで一呼吸おいた後、意図を教えてくれた。


「ミリアがアーマードグリズリーを倒して、皆殺したことだ。不可能ではないが、証拠がない。」


(ミ、ミリア…友好な関係とは言ったけれど、もう愛称で呼ぶなんて…王になるような方は皆、遠慮がないのね。)


私はわざと無視して、アルムさんに向かって話しかけた。


「アルムさん、飲めるお茶をお願いできますでしょうか。」


「…はい、その…申し訳ございません。」


「いえ…事情は見れば分かりますわ…。」


アルムさんの第一印象は苦労人だったが、その通りだったようだ。いつもグレイル王子に振り回されているのだろう。その瞳は疲れ切っていた。ただ、アルムさんはあらかじめ用意していたようで、すぐに何も問題のないお茶を持ってきてくれた。私はようやく渇いた喉を濡らすことができた。


「グレイル様、証拠が見たいならおっしゃってください。このようなことをなさる必要はありません。」


「……。」


「グレイル様?」


「その話し方は友好な関係ではないな。改めろ。取引の条件だろう。」


「……。」


「……。」


(友好な関係?……それなら!)


「グレイ、貴方…面倒くさい性格をしてるのね。」


「はははっ!!」


私は一気に距離を詰めて、わざと失礼な言い方にしたがお気に召したようだ。グレイル王子改め、グレイは今日1番の笑顔で声に出して笑った。私は反対に、声に出してため息をついた。

読んでいただきありがとうございます。

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次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

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