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1章 忍び寄るフュナンゼ国3

結局、しばらく水・金・日投稿にします。

ころころ予定が変わって混乱させてしまい申し訳ございません。

お付き合いいただければと思います。

先頭をグレイル王子達が、その後ろを私たちがついて進む。グレイル王子達は私たちの進行方向を塞ぐことによって、お兄様を逃がさないようにしているのだろう。しかも、グレイル王子だけ別で馬に乗って、私たちの馬車に並走して話しかけてくる。


「今日は天気に恵まれましたね。」


「そうですね。お出かけ日和ですね。」


グレイル王子を以前、フュナンゼの王宮で見たときは、無愛想なイメージだったけれど、今はぐいぐい話しかけてくる。お兄様と私が相談できないようにしているのか、単純な興味なのか…そうして、30分ほど私たちはグレイル王子と話しながら道中を進んでいった。日も傾き始めたようだ。急がなくとも間に合うと思うが、遅くなれば街に入れず、野宿となってしまう。しかし、変化は起こった。


(…感情が緊迫したものに変わった!?…そう、この先に()()のね。)


「お兄様…あの、休憩しませんか。少し外の空気を吸いたいです。」


「ん?ああ、そうか。クイル、少し休みたいので、前に伝言を頼みます。」


「分かりました。」


私はお手洗いに行きたいと遠回しにお兄様に伝える。そして、その様子を見ていたグレイル王子は素直に伝言を受けて、先頭の仲間の下に行く。流石に、監視していると言っても、貴族女性がお手洗いに行きたいと言っているのを拒否するわけにはいかない。グレイル王子が離れた隙に私はお兄様に伝える。


「彼らの感情が緊張し始めたわ。おそらく、この道の先に仲間が構えていると思うの。私が茂みに行くふりをして、様子を見てくるわ。相手によっては、倒して戻ってくるわね。」


「そんなことができるのはお前くらいだよ。大きい方だと言っとくわ。」


「ちょっと!ひどいわ!」


この状況でもお兄様の感情は平常運転らしい。冗談を言ってくる。確かに、貴族女性が外でトイレに行く場合は時間がかかる。厳密にいうと、普段の貴族の格好ならば、トイレに行かなくてもいいような服装になっているが、今は軽装でワンピースに近いドレスだ。誰にも見られないところでこっそりトイレを済ませる必要があった。実際はトイレではないが、少し時間は稼げるだろう。しかし、流石に賊を倒して戻ってくると時間がかかるので、「トイレに時間がかかる=大きい方」と思われてしまうのは仕方がない。こういうのは察するものであってわざわざいう必要もないが。だが、ここで言い争っている時間もない。お兄様に反論をしたいが、グレイル王子が先に戻ってきてしまった。


「大丈夫です。ここで一旦休憩しましょう。」


「ええ。ありがとう。」


私は馬車を降り、オウルとミストに近づいてこそっと告げる。


「ちょっと茂みの方へ行くわ。付き添いは結構よ。…お兄様をお願い。」


「「はっ!」」


流石お兄様のお気に入りの護衛だ。反論もなくすぐに了承してくれた。私が馬車から離れる本来の理由を何となく察しているようだった。



私は1人で茂みに入って彼らの視界から消えた途端、すぐに行動を開始した。1番地味なものを選んだけれど王宮で用意されていたドレスは高価に違いないので、傷つけないように走る。汚れは魔法で落とせるが、糸のほつれは難しい。正直走りにくいが仕方ない。そして5分ほど走った先に、お目当ての集団を見つけた。


(だいたい20人というところね…皆、他国の人間。でも、一応間違えないように…)


「こんにちは。貴方達は銀髪の見目が美しい、おに…ライル様を殺すように命じられた者で間違いないかしら?」


「なんだお前は!?なぜその計画を!!」


(簡単に教えてくれるのね。…助かるわ。)


私はお兄様を襲おうとしていることを確認次第、すぐに彼らの息の根を止めにかかる。彼らの計画は20人程度でお兄様を襲って、どさくさにグレイル王子達が後ろから殺害するというところだろう。それならば、今殺してしまった方がいい。お兄様と立てた計画は数パターンあったが、これはその中で1番都合がいい展開だった。彼らに私を殺せるとも思わないし、こちらの計画に支障はない。私は、元々武器を持っていなかったが、一応血痕が服に付かないように打撃で倒すように心がける。


ドゴッ ガッ


「な!?この娘、何者なんッ…ダ」


ゴンッ


相手の話を聞かず、とにかく時間がないので殴る蹴る砕く、壊す。次々に男達が襲ってくるが全て急所に当てて倒していく。男の悲鳴が煩いので、魔力がもったいないが、防音の結界も追加で張る。ただ、やはり打撃だと時間がかかる上に今の服装だと思うように動けないので、結局、武器を奪って応戦する。


ドガッ


「ぐっ…うああああ!」


男が襲いかかる。

私は短剣を男の首を狙って裂く。

血が吹き出す音と男の悲鳴が同時に聞こえる。

私は吹き出す血が自分にかからないように魔力で防ぐ。

男がいなくなるまで何度も同じように繰り返す。


そうして何分経っただろうか。男はあと1人になった。


私は短剣を捨て、打撃に変更する。そして特に反撃されることはなく最後の1人の意識を奪うことに成功した。男達が持っていたロープを拝借し、手足を縛る。そしてもう少し先に進んだところで、目立つ木の根元に男を転がす。私は、お兄様が気付くように木に印を残した。


(お兄様が気づいてくれるといいけれど…)


私は急いで、簡単に自身の身なりを確認してから、お兄様達がいるところに戻った。乙女としては、大きい方をしていると思われるのは屈辱である。



「お待たせしました。」


「おー思ったより速かったな。」


お兄様が私を出迎えてくれる。私が離れている間にお兄様が襲われていたらどうしようかと思ったが、杞憂だったようだ。そもそも、優秀な護衛が2人もいるのに心配しすぎなのかもしれないが。


「では、先に進みましょうか。」


グレイル王子はさっさと先に進みたいようで、私が戻ってきたのを確認してすぐに出発の準備をする。さっさと()()を終わらせたいのだろう。感情が緊張している。


そうして、先ほどと同じように出発した。相変わらずグレイル王子は私達の馬車に並走して話しかけてくる。元々、なぜグレイル王子が自ら行動しているのだろうか。お兄様や私が言えることではないが、王子様は部下に行動させて報告を待つのが普通だろう。王族に普通というものがあるのか分からないけれど。


そして、賊がいたところまで何事もなく進む。グレイル王子達の感情が緊張から焦りに変わっていった。賊が襲ってくるはずが、何も動きがない。なぜ、計画が実行されないのか、不安なのだろう。


「ん?何か血の匂いがしないか?」


ミストが発言する。本当はグレイル王子達が賊の様子を確認するための方便を先に発言するだろうと待っていたが、私が短剣で賊を倒したため、血の匂いが漂ってしまったらしい。だが、これで停車する理由ができた。結果オーライというやつだ。さて、ここが勝負どころだ。


「確かに、茂みの方から血の匂いがするな。ここで止まってくれ。様子を確認した方がいい。」


お兄様が念押しのように発言する。だが、様子を確認したくてたまらないのはグレイル王子達の方だ。賊が私達を襲う手筈のはずが、一向に姿を表さず、血の匂いを漂わせているのだから。状況を把握したくて仕方ないだろう。


「茂みを確認してきます。」


「私も行きます。」


ミストとグレイル王子が一緒に茂みに近づく。


「な!?」


「これは…賊ですかね…皆殺しというやつですか。」


グレイル王子の驚いた声と、落ち着いて状況を把握するミストの声がする。ミストは私が犯人だと気付いただろう。そして、グレイル王子達の仲間である他の3人も様子を確認しに茂みに行く。


「皆、一撃で殺されてるな。」

「えげつないな…」

「まだ、殺されてそんなに経ってない。」


20人程度の男が皆殺しにされて放置されているのだ。驚くのも仕方がない。ただ、現場を作った張本人としては何とも言えない気分だ。

そして、計画通りにお兄様が発言する。


「すみません。今、便りが届きまして、急いで王都に戻らないといけなくなりました。貴族として、こんな状況を放っておくのは忍びないので、妹を置いていきます。妹がギルドへの報告・監督しますので、ご安心ください。」


お兄様はこれ見よがしに、手紙を届けてきた鳥と手紙を見せる。もちろん手紙は偽物で、鳥は私がそこらへんにいた鳥を魔力で強引に操っているだけだ。グレイル王子達は賊の死体に気を取られていたので、伝令が届いたところを見ていなくても信じてくれるだろう。


「な、えっ…と……」


アルムが引き止めようとするが、賊の死体を放っておくわけにもいかないし、お兄様に付いていく理由もない。結局、グレイル王子達は何も出来ずにお兄様の出発を見守るしかなかった。計画通り、お兄様はグレイル王子達と離れて、私は彼らの監視のために残る。急いで立てた計画だが、なんとか上手くいったようだ。念のために、エルはお兄様に付いた。これで、道中何かあってもエルがいれば、悲しい結末になることはないはずだ。それに、アーマードグリズリーに賊20名程度、もう用意された刺客はないと思われる。


「それでは、お兄様の代わりに私が事態の収拾をさせていただきますね。」


グレイル王子達の視線が私に集中する。私の身分は公爵令嬢、フュナンゼ国からすれば美味しい人質に違いない。


(さて、出来ればお兄様にお土産を持って帰りたいわ。)


私は気を引き締めた。

読んでいただきありがとうございます。

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次話も読んでいただければ嬉しいです。

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