1章 忍び寄るフュナンゼ国1
更新日は水・金・日としましたが、執筆が追いつかないので、土日投稿にします。
楽しみにしてくださっている方、大変申し訳ございません。
変わらず、読んでいただければ嬉しいです。
私は馬車の中でお兄様に王宮で何があったのかを詳細に報告した。
「大体は分かった。王都へ戻ったら、アレクに言い訳しておくわ。」
「…ありがとう。」
「そんな顔をするな。いつかはバレるだろうと思っていたしな。逆に今までバレなかったことが不思議だった。」
「ええ。」
お兄様は優しい。本当はお兄様も殿下と同じように私に王妃になってほしいと思っているだろう。それに、立場的にも私より殿下を優先するべきだ。それでも私の味方でいてくれる。
「で、俺の部下として誤魔化したわけだな。だから、同僚となるオウルとミストに正体をばらしたほうがいいと思ったのか。そのほうが真実味が増すからな。」
「ええ。」
「それで?番について教えてくれた者については答えられないわけだな。」
「ごめんなさい。でも、私はセレリィブルグ王国の番については知らないのよ。だから教えて欲しいの。番を伴侶にして王国にはどのような利点があるの?番でないといけない理由は何?」
私が知っているのはドラゴンについてだ。結局は王国の番については全て推測でしかない。
「…俺もよく知らないが、番を王妃に迎えることができれば、王は名君になると言われている。理由は分からない。そして、番を求めるのは王だ。セジルや俺は別に、王妃が番でないと駄目だとは考えていない。」
「なら!」
「だが、それは理論上の話だ。実際は違う。番ではない者を王妃に迎えることになれば、王と王妃の関係は仲睦まじいとはいかない。側室も増えるだろうし、派閥争いも激しくなる。」
「そうね…。」
むしろ、側室がいない王族の方が不安に思えるが、それを番の存在がカバーしているのだろう。これも予測だが、王の精神安定剤が番なら、番を王妃に迎えれば名君と呼ばれるのも納得する。
「ミリアが嫌なら嫌でいいと思うぞ。この場合、頑張るべきはアレクだ。気にするな。」
「ありがとう。ふふっ、いつも言っているけれど、そんなことを言えるのはお兄様くらいだわ。」
番について、お兄様はまだ何か知っているようだったが、聞くのをやめた。この国を出ていく私にとって無駄な知識だと判断されたのか、気を遣ってくれているかは分からないが、それよりも重要な報告が残っている。
「お兄様、フェレスとしての直近の活動について報告があります。」
「ああ。」
私は、レオのことと他人の記憶を覗けることを上手く誤魔化して、オズリオ様を尾行したことから順に報告した。そして、その後の私の見解を述べた。お兄様はかなり焦った表情を見せる。何か心あたりがあるようだ。
「ガイルにオズリオを殺すように命令した男の特徴が、以前公爵家に来た男性に似ているとミリアは言いたいんだな?」
「ええ。その…信じてもらえるかどうかは分からないけれど…15年前、私を助けた人に似ている気がするの。私が飛び降りた時の…。」
ガイルさんの記憶の中で見た男性は、私が2歳の時に図った飛び降り自殺を阻止した男性だった。当時、転生したおかげで私は今と変わらない思考ができたし、死にたかった私はその男性を憎んだので、顔を今でも覚えている。ただ、ガイルさんの記憶は曖昧でかつ、15年も経てば顔は変わるので、自信があるわけではなかった。こんな不確定要素を報告することになるなんて部下失格だ。
「ミリアを助けた男性については俺も覚えていない。だが、その話はたまにするんだよ。ミリアを助けたのは俺の上司のお付きだったからな。」
「え…。」
「つまり…現宰相、キーシャス・レギイラ侯爵だ。」
「!!!」
(まさか…レギイラ侯爵が!?でも…お付きだった人ということは、今は別の人に仕えているのかもしれないわ。…でも!!)
「辻褄が合うな…。」
お兄様は私と同じことを考えていたようだ。そう。レギイラ侯爵が黒幕だと辻褄が合ってしまう。まず、オズリオ様に任務を授けることが出来るのは、近衛騎士団総括であるハイノール伯爵よりも権力がある方だ。そして、他国…地下の資料からおそらくフュナンゼ国と交流がある方。今はお父様が外交を担っているけれど、小競り合いがあるたびにレギイラ侯爵はフュナンゼ国に赴く。
「…そうね。レギイラ侯爵なら任務を授けることもできるし、フュナンゼ国との交流も経験があるわ。」
「いや…それだけじゃない。さっきのアーマードグリズリーの出現が引っかかっていた。普通はあんなところにいる魔獣なんかじゃない。くそっ!!…俺を殺すためだろうな。」
「お兄様を…殺す…?」
「俺が領地に戻る日程を、レギイラ侯爵はもちろん把握している。…上司だからな。最近、やたらレノヴァティオ公爵領について心配してくださるとは思っていたが、俺が領地に行く日程をあらかじめ探っていたんだな。」
「それじゃあ、レギイラ侯爵の計画によって、アーマードグリズリーは操られていたということなの!?そんな方法は…なくもない…。」
「ああ。」
レギイラ侯爵に1番近いのは、陛下かお兄様だ。お兄様の口ぶりからするに、黒幕はレギイラ侯爵だという確信があるのだろう。もしかしたら、陛下も何か勘づいているのかもしれない。
「それに、レギイラ侯爵の娘はアレクの第一候補妃とされている。この国を操るつもりか…?何のために…」
「目的…」
私はレギイラ侯爵の目的について考えを巡らせる。今のところ狙われたのはお兄様とオズリオ様。2人は、国の中枢を担うにはまだ若い。しかし、セレリィブルグ王国に影響力がある2人ということは…
「もし…もし、私が…セレリィブルグ王国を乗っ取るならば……国を内部から壊して、建て直すならば…お兄様の命を狙うわ。ついでにオズリオ様の命も。」
「内部から壊して建て直す?」
「ええ。これは派閥争いではないわ。オズリオ様を殺せば、騎士の士気が下がるもの…でも、オズリオ様が亡くなったとしても騎士を失うわけではないわ。ハイノール伯爵はまだ現役だから、時間はかかるけれど騎士を建て直すことはできる。」
「…。」
「そして…お兄様だけれど、身贔屓ではなく本当に、将来的にセレリィブルグ王国の宰相になると思うわ。殿下のことをよく分かっているのはレギイラ侯爵ではなくお兄様だもの。ただ、そうなると国を乗っ取るにはお兄様は邪魔だわ。セレリィブルグ王国の血を絶やさないためには殿下は必要だけど、お兄様がいれば、殿下を思うように操ることはできない。殿下は優秀だけど、娘を王妃にできれば、ある程度は融通が利く存在だと言えるわ。」
ただ、これも全て私の想像でしかない。実際のところはレギイラ侯爵に話を聞いてみないことには分からないのだ。しかし、今のところレギイラ侯爵だという証拠がない。調べようがない。
「ミリアの予想が合っているのであれば、俺はこの先も命を狙われるということだな。そして、フュナンゼも介入しているとなると厄介だ。レギイラ侯爵からもフュナンゼからも刺客がくる可能性が高い。フュナンゼにとっても俺は邪魔な存在だろうからな。」
フュナンゼ国とレギイラ侯爵がどのような取引をしたのかまでは、地下の資料から分かっていない。ただ、フュナンゼ国がセレリィブルグ王国を攻めたいと思っていることは、今までの小競り合いから明らかだった。
「…私はこの国を出ていきたい。それは変わらないわ。でも、国が危機に瀕している状態で1人だけ逃げるということはしないわ。お兄様の命がかかっているのであれば尚更よ。…だから、私が国を出ていくまでに、この問題を何とかしたいわ。」
「…そうだな。お前はそういう奴だな。」
家族の命を守るために、この国を出ていくのだ。家族を見放して国を出ていくのは本末転倒になる。大切なものは何か、間違えたりなんかしない。
その後も私たちは、それぞれの見解や今後何をすべきなのか話し合っていった。
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次回は日曜日に更新予定です。




