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1章 一瞬の出来事

少し遅れましたが更新です。

2日に1話はやっぱり厳しいですね。

「明日には王都に入れそうだな。」


「そうですね。」


ライルは、レノヴァティオ公爵領の様子を確認した後、王都に戻っている最中だった。公爵領と王都の距離は、馬車で片道2日程度かかる。ライルはいつも護衛は最小限にして、公爵領の紋章がない地味な馬車を使っていた。もし、レノヴァティオ公爵家の馬車を使えば、盗賊や他国の間者等に狙われる可能性が高くなってしまう。それでも、普通の貴族なら家の紋章が入った馬車を使い、その分、護衛を充実させる。ライルも、公爵家の馬車を使わなければならない時は、護衛の数を増やすが、頻繁に公爵領に行くライルは護衛を複数雇うよりも地味な馬車を選択していた。理由は、人数が増える分、面倒事が増えてしまうからだった。


「噂では、王都にフェレスが現れたということで、盗賊どもが活動を自粛しているそうです。今回はいつもより安全に王都へ戻れそうですね。」


「フェレスの影響はすごいな。」


護衛の1人がライルに状況を説明する。ライルは身分で人を判断せず、能力で判断するため、優秀な護衛とは積極的に会話をするようにしていた。護衛もライルの態度に慣れており、気兼ねなく話しかけるようになっている。今回の護衛は2人しかいないが、2人とも一般騎士団の団長クラスの実力を持っている優秀な者だ。この2人はレノヴァティオ公爵家のお抱えの護衛だが、実質、ライルのお抱えの護衛であった。


「フェレス様々ですね。ライル様だったらフェレスの正体を知っているんじゃないですか?」


「いや…検討はついているが、辻褄が合っていないことがあってな。フェレスは国を跨いで活動するだろ?移動手段が分かってないんだわ。」


「ずっと旅をしているのだと思ってましたが、違うんですか?」


「あぁ…多分な。」


ライルは少し考える。護衛2人にはよく分からなかったが、フェレスについて考えているのだろうと思って声をかけなかった。ライルは頭がいい分、考え込む癖があった。考え込んでいるときに話しかけられると誰でも嫌な思いをするだろう。道中、こうやって会話が途切れてしまうことはよくあることだった。

そしてしばらく、馬車は道なりに問題なく進んでいった。



「おい……」

「……ああ。」


最後に会話をしてから、2時間くらい経った後、右脇の林から不穏な空気を感じ、護衛に緊張が走る。馬も落ち着かない様子だ。護衛の1人が御者に停止するように指示を出す。


「どうした?」


ライルが外の異様な空気を感じとって、馬車から顔を出す。


「ライル様は出てこないでください!何か…います!!」


「これは…かなりやばいですね。かなりの大物クラスの魔獣だと思います。」


護衛は小声で話すが、声に余裕がなくなっている。ライルは馬車の中にいることもあって、外に何が起こっているのか、分かっていなかった。しかし、優秀な護衛が醸し出す、ただ事ではない緊張感を感じとり、いつでも魔法が使えるように心構えをする。冬が始まり、寒いはずなのに嫌な汗が背中を流れる。


「先に馬車を走らせるか?」


「いや…どうせ追いつかれる。それに馬車に向かって走られたらライル様が危ない。」


「じゃあどちらか…おとりになるか?」


「それがいいかもしれないな。だが、おとりになれるかどうかも怪しい。下手したら一瞬で終わりだ。おとりの意味がなくなる…」


護衛2人は、どうするべきか相談するが良い案が浮かばない。おとりになったとしても瞬殺されれば、時間稼ぎにもならないのだ。だが、考えている時間もない。護衛の仕事を始めた時に、2人はこういうこともあるだろうと覚悟を決めていた。その時が今来たということだ。


「ライル様。…私に防御魔法をかけてください。私がおとりになりますので、その間に先へ進んでください。…話している暇はありません。」


「な!…いや、そう…だな。防御(プロテクト)。すまない。頼んだ!」


ライルには、護衛が死ぬ覚悟をしていることがすぐに分かった。抗議したいが、今、無駄に時間を使ってしまうと、護衛の命が無駄になるかもしれない。言いたいことを全て飲み込んで、ライルは魔法を使った。


ザザザザッ


ダンッ!!!


その瞬間。目の前に馬車の2倍くらいある魔獣が、林から飛び出してきた。


「アーマードグリズリー!!!」


「なんでこんなところにいる!?しかも…かなりでかい!!」


飛び出してきたのは、アーマードグリズリーという身体中、鎧のような鱗を纏った熊のような魔獣だった。大きな身体のくせに動きが機敏で、後ろ脚で立って攻撃することもできる。また、前脚の攻撃を避けても、すぐに次の攻撃がきてしまうので、こちらは防戦一方になってしまう。加えて、大きな身体に、鎧のような鱗のせいで、剣じゃ太刀打ちが出来ない。アーマードグリズリーを討伐するには、おとりになる前衛と攻撃ができる後衛魔法士、そしてサポートするその他役割の味方が必要だった。基本的にAランク冒険者グループが討伐する魔獣として知られている。


「思った以上にでかいぞ!前を塞がれた!!脇から馬車を通せるか!?」


「引き寄せれば何とか!だが、簡単に通らせてもらえるとは思えない!!」


「チッ!!どうする!?」


(こんな大きな個体で、しかもアーマードグリズリーが、道中に出るわけがない!森の奥に生息する魔獣のはずだ。しかし、今はそんなことを考えている暇はない!!)


討伐どころか、逃げることすら難しい状況だ。せめて、護衛があと2人いれば、逃げることくらいは何とかなったかもしれないが、今まともに戦えるのは2人だけだった。余裕な任務が、過酷な任務に一変する。馬が錯乱せずに耐えていることが唯一の救いだと言えた。


「グオオオオオオ!!」


アーマードグリズリーが戦闘態勢になり、叫んだ。馬が萎縮するが、まだギリギリ耐えている。


「ライル様!!私が奴を引きつけます!御者はその隙に思い切り駆け抜けろ!!」


「分かった!!」

「は、はい!!」


「後は頼ん…」



ビ、ビビビ!!!!……ズバンッ!!!



「え……」


緊迫した状況の中、死を覚悟して護衛が立ち向かおうとした瞬間、何か一筋の光のようなものが一瞬駆け抜けた。その光はちょうどアーマードグリズリーの首あたりを通過したように護衛には見えた。そして…アーマードグリズリーがピタリと動かなくなってしまった。


「な、何が……」



ドンッ!!!!



「今度は何だ!!」


「…人…か?」


護衛2人は、何が起こったか分からなかった。光が見え、アーマードグリズリーが動かなくなったと思えば、空から魔獣目掛けて人が降ってきたからだ。しかも、落ちてきた勢いでアーマードグリズリーの頭が胴体から綺麗に切断される。訳がわからなかったが、頭を失った魔獣の身体がゆっくりと倒れる姿を見て、2人はアーマードグリズリーが倒されたことを理解した。



…目の前の少女によって…



「レオの鱗は無理だったけれど、これくらいなら、この出力でも十分ね。本当に…ギラのところから武器を持ってくるのを忘れてたわ…」


少女は、よく分からないことをぶつぶつと話している。黒髪に黒褐色の瞳。とても整っている容姿だった。


「だ、誰……」


「助けて…くれたのか…?」


2人は自分の目を疑った。目の前のことが信じられない。この道中にAランクの魔獣が出たことも、その魔獣が瞬きのうちに討伐されたことも。今起こった全てのことが信じられなかった。


「何があったん……お前…ミリア!?」


ライルが馬車から顔を出して、少女に驚く。そして、急いだ様子で馬車から降りてきた。護衛2人はライルの様子から、少女が得体の知れない人間から得体が知れなくない人間、ということが分かり安心する。しかし、2人は「ミリア」という名前に聞き覚えがあった。


「お兄様!!やっと会えたわ!!」


少女がライルに向かって喜びの声をあげる。


「「え?」」



「おにい……」

「…………さま?」


護衛がミリアの言葉にフリーズしている中、ライルは急に現れた(ミリア)に驚愕する。街や王宮ならともかく、ここは公爵領と王都の間の道中だ。ミリアの「やっと会えた」という言葉から自分を探していたということは分かるが、どうやってここに辿り着いたのだろうか。ともかく、本人に聞いてみる方が早いとライルは判断した。


「ミリア!!何でこんなところ……」



ドンッ



「んな!!!!」


「嘘…だろ…。」

「もう、俺…死んで夢見てるのかも…」


空から勢いよく降りてきたグリフォンに似た大きな魔獣に、ライルは「もう驚かない」と決めていた妹の規格外っぷりに度肝を抜かれ、護衛2人はついに考えることを放棄した。

読んでいただきありがとうございます。

次話以降も読んでいただけると嬉しいです。

次話は2日後を予定していますが、3日後になる可能性もあります。

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