1章 ガイナス・セレリィブルグ2
数分遅れましたが更新です。
「アレクシル、何故ミアを王宮に連れてきた?」
「それは……っ。」
殿下が言葉に詰まる。ただの友人を転移で連れてくるのはおかしい。普通に招待すればいいだけの話だ。殿下は何と答えようかと考えるが言葉が見つからないのだろう。陛下と私の先程のやりとりで、私が陛下に対して嘘をつけないということは何となく分かったはずだ。それを理解した上で陛下も聞いている。
「連れてきた本人が分からないわけないだろう。それとも、ミアを気にしているのか?」
殿下は目で「すまない」と伝えてくる。ここまで言及されれば仕方がない。先程の安心は本当に一時の安心だったようだ。それに、私が嘘をつけないせいで、殿下も嘘をつけない。特別な人だとか想い人だとか紹介されるのだろう。
「好きな女性が他の男といれば、嫉妬します。それで、強引にミアを連れてきました。」
「「「…。」」」
本当に私に対して「すまない」と思っているのだろうか。疑ってしまうくらい真っ直ぐに回答した。開き直りともいえる。
「そうか!ミアに惚れたか。ククッ…面白い!だが、それだけが理由ではないのだろう。」
陛下は容赦がない。普通ならここで納得するが、それでも言及するのが陛下だ。おそらく、魔法契約を私に破棄させるつもりなのだろう。陛下と結んだ魔法契約は私からでないと破棄ができない仕組みになっている。そして、陛下にとって、私に嘘を話させないというメリットがあるように、私にも別のメリットがある。魔法契約上の陛下と私の立場は対等だった。
「…それは、まだミアには言えません。」
「言っていないのか。だが、ミアならもう本当の理由を知っているのではないか?なぁ?ミアよ。」
(本当の理由…それは私が番だということ…でしょうね。)
嘘をつくことが出来ないから「答えられない」と答えても、それは「知っている」と同じ意味になってしまう。どの言葉が最適解なのだろう。こういうのはお兄様の得意分野で私は苦手分野だ。いつも相手の感情を確認してから答えているので、普段はそこまで苦労しないが、今の相手は陛下だ。陛下に逆らうことが出来るわけがないし、私は嘘をつけない。魔法契約に違反すると制裁がある。
(……。何とか答えても次の質問が待っているわ。陛下が満足するまで終わらない……なら!!)
私の身体は丈夫だ。今まで、色んな攻撃に耐えてきた。どうせ嘘をつけないなら、バレてしまうという結果は同じ。ずっとこのまま言及されるより、よっぽど良い。
…私は覚悟を決めて発言する。嘘を。
「私には何のことか分かりませ……ゔっ!」
バチ!
バチバチバチッ!!
「〜〜〜〜っ!!!!」
「ミアっ!!」
殿下が身体を支えてくれる。私は痛みに耐えるために前屈みに自分の身体をぎゅっと抱きしめた。
(制裁…電流というより雷のようだわ。身体中が焼けるように痛い…)
私は魔法契約に違反した。身体中に電流が走り、雷が身体に落ちた時のように、皮膚に葉脈のような模様が現れる。血管が破れてしまったところもあるようだ。また、意識を失うかもしれないと思っていたが、レオの血を飲んだおかげで、昨日よりも身体が丈夫になったらしい。何とか痛みに耐えることが出来ている。
「相変わらず無茶をする。自ら嘘をつくとは…よっぽど私のことが嫌いなようだ。だが、これで分かったな。」
「父上!今はそれどころではありません!」
私は自分の腕しか見えていないが、おそらく身体中に傷跡があるのだろう。殿下は陛下に話を止めるように進言した。後味は悪くなるが、強制的に話を中断させてもらおう。
「ミアは自ら制裁を受けた。私が気にする必要はないが…息子の番が傷つくのは見ていられないな。」
嘘を言った私に代わって、陛下が「番」と吐露する。
(レオの言う通り、やっぱり私は殿下の番だったのね。…なら、なおさら魔法契約を破棄するわけにはいかないわ。)
殿下は私を見て小さく「どうして…」と言った。私が制裁を受けた時点で、分かっていたはずだが、陛下に真実を言葉にして突きつけられて、確信したのだろう。私が殿下の番であることを知っていると。
「ミア、アレクシルが何故、番について知っているのかと不思議に思っているぞ。…ライルに聞いたか。」
(!!お兄様の名前を出すなんて!確かにこの言い方だと陛下は魔法契約に違反しないわ。徹底的に私の逃げ道を塞ぐつもりね………ふふっ!でも、陛下は勘違いをしている。これで私のやるべきことが決まったわ!)
私は息を吸って再度覚悟を決める。
「私が殿下の番であることは…ライル様に聞きま…ゔぅぅ!」
バチバチ!!!
バチバチバチバチバチバチ!!!
「!!」
(陛下は驚いているわね。それにしても制裁は2回目の方がきついわ。でも、我慢できないほどじゃない!)
「父上!!もういいでしょう!ミアが死んでしまいます!それに、今のは嘘!ライルの名前が出た理由は知りませんが、わざと嘘をつかせるなんて!」
「…誰に聞いた!!誰に聞いたと聞いている!!」
殿下の言葉を無視して、陛下は私に詰め寄る。王国の機密情報が漏れていれば焦るだろう。番の存在が他国に知られれば大きな弱点になってしまう。陛下は懐の広い方で皆に名君と言われているが、反面、とても冷酷な方だ。だがらこそ、セレリィブルグ王国は他国に負けない力強さを持ち、今の代で急発展した。私は、王に相応しい素晴らしい方だと思っているが、個人的に何度も負かされたので、陛下が焦っている姿は気味が良い。私は、制裁のせいか、王に対する礼儀を忘れてしまったようだ。
「陛下の知らない方です。ですが、ご安心を。他国に番の情報が漏れたわけではございません。」
「なら、その者は何故番の情報を知っている!?その者の名前を答えろ!!」
「答えられません。」
「その者を庇っているのか!?答えなければ、お前の大切な者を殺す。」
残酷な方だ。しかし、この反応は王として当たり前だ。この王国を守るために少数の犠牲は仕方がないと考えているのだろう。それが王の責任なのだから。
「その者を庇っているわけではございません。私が庇っているのは、陛下であり、殿下であり、そして王国です。私がその者の情報を漏らせば、王国が滅びる可能性があるので答えることができません。」
「何を訳が分からないことを…そんなことがあるわけないだろう!!」
「私が嘘をついていないということは、陛下もご存知でしょう?」
「「「!!!!」」」
嘘をつけば制裁がある。だが、私には今、何もなかった。それが明確な事実だ。レオはドラゴンでこの世界の圧倒的強者である。私が情報を漏らす敵だと判断されれば、王国など簡単に滅ぼされてしまう。
陛下は私の能力を評価してくれている。だからこそ私をこの国に繋ぎ止めるため、番という存在を殿下と私の共通認識とし、逃げ道をなくそうとしたのだろう。だが、私はこの国を必ず出て行く。この考えを変えるわけにはいかない。
「陛下、ミア様は限界のようです。とりあえず、休ませていただいてもよろしいでしょうか。」
今まで口を閉じていたセジル様がこの場を終わらせるために進言する。陛下は、私の傷を治すように指示し、部屋を出て行った。これ以上、私を言及しても王国滅亡の可能性が出てくるし、滅亡出来る者と交流がある私をこれ以上傷つければ報復の可能性もある。陛下は簡単に引き下がってくれた。
だが、殿下とセジル様がこの部屋に残っている。まだまだ、私は一息つけそうにない。
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