1章 人身売買と麻薬取引6
更新です。
2日で1話の更新頻度で頑張ります。
「…はぁ…はぁ…はぁ…」
「はっ…はっ……ふぅ…」
私たちはコゼリ村に到着した。門が閉まる前に到着したので問題なく村に入ることができた。しかし、4時間走り続けるのは流石に疲れる。完全に息が切れてしまっていた。今の私はフェレスの格好をしており、レオも赤髪を甘栗色の髪色にしている。道すがら何人かの冒険者とすれ違ったが、私とレオが全速力で走っても、「フェレスだから」という理由で納得してもらえた…はずだ。
村に入ってすぐ、私は人の目がないところに行き、仮面を外し、ローブを裏返す。このローブは裏表、両方使える仕様になっており、麻色から茜色に早変わりする。悩んだ挙句、髪色は枯葉色のままで、瞳は黒褐色にした。これでミリアでもミアでもフェレスでもない人間になる。
「さて、それじゃあ…悪そうな人を捕まえて話を聞きましょう。」
「ああ。…そういや、あの時何を見たんだ?」
レオは、ガイルさんの記憶の中で何を見たのかと聞いているのだろう。レオは何も言わなくても手伝ってくれるので、つい説明し忘れてしまう。手伝ってもらっているのはこちらなのに、ついつい甘えてしまう。私はほんの少し反省して気持ちを切り替えた。
「アリーさんの近くに立っていた男が言っていたのよ。アリーさんは殺すのではなくて、奴隷にするって。人身売買をしている組織だから、女・子どもを無闇やたらに殺さずに、お金に代えるということでしょうね。」
「じゃあ、生きてる可能性が高いってことだな。」
「そういうこと。あとは………っと、あそこに悪そうなのがいるわね。」
目線の先、人々が行き交う大通りと路地裏との境に、煙草を吸った2人の男を見つける。深く帽子をかぶっており、顔ははっきりと見えないが、ニヤニヤと2人で談笑している。あの表情には見覚えがあった。性格が悪い貴族の表情だ。平民を下に見ており、自分は偉いのだというような、他人を馬鹿にしているような表情…。2人の男は貴族ではないが、平民を商品として見ているのではないだろうか。レオの姿を魔法で消して、早速私は2人に話しかけにいく。
「こんばんは。あの…道を教えてほしいんですが…」
男2人はお互いに顔を見合わせ、私を頭から足先まで目を滑らした後、ニヤリと笑った。
「いいよ。どこに行きたいの?連れてってあげるよ。なぁ?」
「ああ。」
簡単に釣れたようだ。私は一気に距離を詰めるために敢えて隙を見せる。
「ありがとう!私1人だったので不安で…親切な方に会えてよかった!!あの…女性に人気のとても美味しいご飯屋さんがあるって聞いたの。どこか…分かる?」
「へー!1人で…それは大変だね。大丈夫、分かるよ。付いておいで!お兄さん達が教えてあげる。」
「俺たちに声かけて正解だよ。ちょうど、この間その店に行ったばかりなんだ。」
「そうなんだー!楽しみだわ!」
男達はニコニコしながら私を路地裏の奥の方へ連れて行く。女性たちに人気のお店なら治安の悪い路地裏ではなく、治安の良い大通りにあるはずだ。この2人が犯罪組織の人間かは分からないが、きっと何かしら情報は持っているだろう。私は無知な女性を装ってそのまま2人についていった。
私は男2人と他愛もない話をしながら歩く。大通りからかなり離れ、村の人たちの声がほとんど聞こえなくなってしまった。そろそろこちらから仕掛けても問題ないだろう。
「あの…本当にこっちなの?人気のお店があるようには見えないんだけど…」
「あーなんのお店だったっけ?」
「……え?」
「ご飯屋さんだよ。ね?まぁ、ご飯屋さんなんてないけど?」
男1がとぼけ、男2が白状する。私はどうしようかと悩んだ末に、このまま無知のふりを続けることにした。例えば、今2人を倒し、尋問すれば必要な情報をすぐに得られるかもしれない。しかし、相手は2人、尋問しても共謀して嘘をつく可能性がある。記憶を見れば間違いはないが、疲労する上に魔力も時間も消費する。ならどうするか。無知のふりをして男達から情報を教えてもらうのが1番いいだろう。
「ど、どういうこと?」
「あーまだ分かんない?可哀想に。」
「俺達に騙されたんだよ!ははっ!馬鹿だなー」
「な、な…んで…?」
私は身体と声を震わせて、目に涙を溜めた。そんな私を見て男達はさらにニヤニヤする。
一方、レオは「誰だお前」と言いたげな、怪訝な表情をしている。お願いだからそんな目で見ないでほしい。
「私を…どうするつもり…なの?」
「んーそうだなー。ちょーっとお兄さん達の遊び相手をしてもらおうかな。ちょうど溜まってたんだよねぇ。」
「君、可愛いし俺らほんと運がいいな!それに高く売れそうだ!」
思った通り下衆だった。売り飛ばすだけではなく犯すなんて、きっと、今回が初めてというわけではないのだろう。今までの被害者のことを思えば、はらわたが煮えくり代える。ただ、私は1回目で当たりを引いたみたいだ。運がいいと思っているのは私も同じだった。
(もう少し聞き出せそうね。)
「高く売れるってどういうこと?」
「まだ分かんない?君みたいな可愛い子を買ってくれる人がいるんだよ。」
「遊び相手になった後、お金にもなってくれる。最高だな!!」
(まだ引っ張れるかしら?)
「だ、誰がそんなことを!この国では人身売買は禁止されているはずじゃ…」
「この村では有名だよ?ジノイが高く買ってくれるって!」
「お、おい!喋りすぎだ!」
「どうせ、こいつ売るし関係ないだろ?」
(ジノイ…ジノ…大当たりだわ!!)
私はレオに目配せした。その瞬間、レオは姿を消したまま2人のうち1人を倒す。男1は一瞬で意識を刈り取られていた。
「え…?」
男2が困惑している。いつの間にか隣にいた男1が倒れているのだから仕方ないだろう。私は魔力を圧縮し、男2の足元の地面を滑らす。男2は転倒し、尻餅をついた。困惑している状況でさらに困惑させると人はなかなか動けない。今、男は尻餅をつき、手を地面についてこちらを見上げようとしている。その隙に、私は持っていた2本のナイフで男の両手の甲を突き刺した。
「ぎゃああああああ!!」
男2は訳が分からないまま、気付けば手を潰されていたという状況だろう。
(さて、冷静になられる前に、白状させてしまいましょう。)
私は、男2が吸っていた煙草を地面から拾い上げ、男2の眼球に火の方を近付ける。私はフェレスの声で尋問を始めた。
「知っていることを吐け。ジノイとは何者だ?」
「あ、あんた誰だ!な、ななな何を!!」
私は煙草の火を男2の眼球に擦りそうなほど近付けた。男2は目を見開いて私を見る。その後、女の私をまだ舐めているようで偉そうに叫んだ。
「女のくせに!偉そうにしやがって!!俺に手を出したらどうなっぎゃあああああああ!!!!」
私は容赦なく煙草の火を男2の目に押し付けた。目が焼かれているのだろう。男2の汚い断末魔が防音の結界の内側に響く。
「まだ、立場を理解していないようだな。次は股の間に生やしているものを切る。お前には過ぎたものだ。」
「な!?」
私はレオに頼んで、男1が持っていたナイフを炎で炙ってもらった。刃が赤くなり、見るからに熱そうだ。私はそれを男2の股に近付けて再度質問する。
「ジノイとは誰だ?」
「あ、あぁ…ど、奴隷商だ!!場所は…ここからもう少し南にあるところで…娼館の赤い看板の真下に入口がある!!」
「奴隷もそこにいるのか?」
「ああ!!そこで商品の管理と販売もしてる!!嘘じゃない!この目で見たんだ!!!」
男2は気持ち悪い油のような汗をかいて、必死に情報を話してくれる。やはり男の象徴を人質に取られれば焦るのだろう。
「そうか。信じよう。じゃあな。」
ザクッ!ジュゥゥウウ!!
「っぎゃああああああああああ!!!!」
私は赤く光ったナイフで男2の股横を刺した。情報をもらったので、象徴は無事だ。だが、今まで被害にあった女性たちのことを考えると、やはり許せないので、象徴の近くを刺した。男2は強い痛みのせいで、切られてしまったと勘違いするだろう。冷静になって無事な象徴を見ても、きっと今日のことを何度も思い出す。このまま不能になればいい。
私は男2に刺していたナイフを抜き、血を男2の服で拭った。私は尋問モードから気持ちを切り替える。
「さて、もう暗くなってきたわ!早く奴隷商のところに行きましょう。」
レオの方へ振り返り、すぐに次の行動に移すことを伝えた。レオは…自分の股に手を当て、引いた目で私を見ていた。
「俺…王太子に同情するわ…こんな番絶対嫌だ…」
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