1章 友達3
数日、続けて更新でしたが、次回からは2.3日に1話というペースで更新します。
「番?」
「そう。ドラゴンにはそれぞれ番がいて、番としか子を成せないんだ。」
「どういうこと?番っていうのは…生物上、1組の雌雄のことよね?生涯の相手は自由に決められるものではないの?」
「違うな。番は生まれた時から既に決まっているんだ。子を成すにはまず、番を探さないといけないんだ。」
「もし、好きな人がいても、番を選ぶということ?」
「それも違う。番を好きになるんだ。この世で愛しい存在は番だけだ。」
ということは、番を見つけることが出来なければ、子孫を残すことができない。圧倒的強者で長寿、そして知能が高いドラゴンが何故、目撃数すらほとんどないほどに個体数が少ないのか…納得した。番に出会える確率は分からないが、相当低いのだろう。確率が高ければこの世界はドラゴンだらけになっているはずだ。ドラゴン種はそれなりにいるが、知能を持ったドラゴンの話は書物でしか登場しないほど希少性が高い。
「それじゃあ、どうやって番かそうでないのかを判断するの?印があったりするのかしら?」
「いや、目に見えるものは何もない。愛おしいかそうでないかで判断するんだ。」
「…それで判断できるものなの?恋愛感情って曖昧なものでしょう?」
「曖昧じゃない。本人にしか分からないが、番に出会えれば、相手のことが頭から離れなくなるんだ。ずっと一緒にいたい。ずっとそばにいて欲しい。ってな。」
「………あれ…?」
(頭から離れない?そばにいて欲しい?…聞か覚えがある言葉だわ。それも最近…)
私は少し考え込む。レオは黙ってしまった私を不思議に思って、私の顔を覗き込むようにして問いかける。
「どうした?」
「……えっと…最近同じようなことを言われたのよ…」
「は?…誰に?」
「……王太子。」
「「…。」」
「…この国の?」
「…うん。」
「先祖返り?」
「…うん。」
「「…。」」
もし、今考えていることが正しいのなら、色々と辻褄が合ってしまう。ドラゴン並みの魔力。先祖返り。殿下に言われたこと。一目惚れにしては一途過ぎること。執着のような感情…
「とりあえず…ご飯、食べてしまうか。その後、ちょっと話を整理しよう。」
「そうね。…付き合わせてごめんなさい。」
「いや、どうせ暇だからいいよ。身体に風穴を空け合った仲だしな。こちらこそご馳走様。」
「いいえ。美味しそうに食べてくれてありがとう。」
私たちは料理を食べてしまってから食堂を出た。ちなみに支払いは20ペギーを超えた。大衆食堂でお酒も飲んでいないのに20ペギーなんて初めてだ。料理人のおじさんからは嬉しそうに「また来てくれ」と言われた。レオは美味しそうに食べるし、お残しもなく、支払いもきっちりする良客ということだろう。
「ミア!美味そうなものが売ってるぞ!食べていいか?」
先に食堂の外に出ていたレオは、屋台を見ていたようだ。目をキラキラさせながら問いかけてきた。まだ食べられるのか。見た目は人間なのに、胃袋のサイズはドラゴンなのだろうか。それにしても私が今結界を張っていないことに気付いているようだ。レオは私のことをミリアではなくミアと呼んだ。
「ふふっいいよ。」
ドラゴンの情報は貴重だ。でも、レオは話せる範囲で話してくれる。対価なんて考えていないだろうけど、お礼としてご飯くらいは奢らせてもらおう。実際はペリー硬貨を用意してもいいくらいの情報なのだ。幸い、何十人前を食べられても大丈夫なくらいにはお金に余裕がある。お金がなくなれば冒険者としてまた活動すれば良いだけの話だ。
その後も私は、レオと2人で屋台を食べ歩く。
途中でカイに会い、激変したレオの姿を見てかなり驚いていた。
「…そろそろ話を戻すか。」
レオから話を切り出した。レオもそれなりに気になっているのだろう。
「…うん。」
現実逃避をしても意味がない。状況整理は必要だ。
「よし。そんじゃあ、とりあえず場所を移すか…手を握ってくれ。」
「はい。」
今、周りに人がいないことを確認してレオの手を握った。これは転移だ。ギラに他国へ連れて行ってもらう時も同じように手を握る。レオもギラと同じように、任意の場所にいくつか魔法陣を設置しているのだろう。そして対になる魔法陣はレオの中にある。そうすれば、行きたいところにいつでも行けるということだ。しかし、人間2人分運ぶとなるとかなりの魔力が必要となるはずだが、流石ドラゴンだ。気軽に転移できるほどの魔力量を持っている。
瞬きのうちに移動する。
目の前には広い海が広がっていた。セレリィブルグ王国は海に隣接していないので別の国ということは分かるが、どこの国にいるのかは分からない。ちなみに私たちがいるのは丘の上のようだ。周りには人どころか建物もない。ここなら気にせず会話をすることができる。
「素敵なところね。」
「だろ?1人で来ると少し寂しいけどな。…俺の番が教えてくれたんだ。…もういないけどな。」
食堂で、レオは番に出会った後、どのような感情を抱くのかを具体的に話していた。レオは番出会うことができたのだろうと思っていたけれど、まさかもういないなんて。
「…亡くなったの?」
「あぁ。俺の番の話は…長くなるし、話すのもしんどいから今度話すわ。」
「分かったわ。無理に話さなくても大丈夫よ。」
「いや…誰かに聞いてもらいたくなる時もあるんだ。その時にまた聞いてくれるとありがたい。」
「ええ。もちろん。」
レオは静かに話した。「寂しい」「悲しい」「愛おしい」という感情が混ざり合っているようだ。
しんみりとした雰囲気になってしまった。しかし、レオは表情を明るくして気持ちを切り替える。
「だから、番について、俺は誇張でも謙遜でもなくただ事実だけを言うぞ。ってまだ、ミリアが王太子の番と決まったわけじゃないけどな!」
「…ありがとう。そう、とりあえず状況整理からよ。」
レオは私が殿下の番と言ってしまっている。食堂で目を逸らした予測を突きつけられてしまった。ただ、まだ決まったわけではない。まず、今の王族に番というルールが残っているのかも分かっていないのだ。私はとりあえず、セレリィブルグ王国の神話について話し始めた。
「神話では、神が世界を作り、神の力を受け継いだとあるけれど、これは神がドラゴンということでいいのかしら?」
セレリィブルグ王国の王族の魔力量はレオの話を聞く限り、ドラゴンの魔力量を引き継いでいると仮定できる。となると、神話は、ドラゴンが世界を作り、ドラゴンの力を引き継いだと解釈ができる。
「んーそこも詳しくは言えないんだが…大雑把にいえば、その神話は間違っていない。だから、王太子がドラゴンの力を引き継いで、先祖返りということは間違いないと思うぞ。」
「…そう。」
ドラゴンのレオが間違いないというなら、そうなのだろう。色んな説を本で読んだが、私はレオから答えを聞いてしまった。テストの不正行為をしたような気分だ。
「で、今の王族にどこまでドラゴンの力が引き継いでいるかだな。まず魔力量は間違いない。」
「そうね。あと、身体は人間と同じよ。少し丈夫なくらいでドラゴンの特徴というほどではないわ。」
「となると、後はやっぱり、番と子孫の残し方だな。」
「ええ。今の王には、妻が王妃1人しかいないわ。人間の歴史上、権力者には妻が複数いるのが普通なの。でも、前の王には側室が複数人いたはずよ。」
「それは…おかしいな。でも、セレリィブルグ王国の歴史は古いだろ?ということは番としか子を成せない、というのは…引き継いでいないとみていいと思う。」
もし、番としか子を成せないのならば、王国の歴史は既に閉じているだろう。殿下が先祖返りとみて間違いないのならば、セレリィブルグ王国の歴史は途切れることなく、ドラゴンの力を引き継いでいるということだ。
「ということは、王族に番は存在しないということでいいのかしら?」
「いや…子孫の残し方を引き継いでいないだけで、番の存在自体は引き継いでいる可能性はある。その、ミアが会った時の王太子の様子を教えてくれるか?」
「ええ。」
私は、殿下を拾った日から今に至るまでの過程をレオに話した。
読んでいただきありがとうございました。
次話以降も読んでいただけると嬉しいです。




